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武器使用に関する制限の緩和と、不必要な武力行使を回避するためのROEが必要!
第6として、武器使用と武力行使の基準について述べる。自衛隊が行動するときの武器使用および武力行使についての制限や制約を緩和もしくは撤廃するべきだ。危機の未然防止・抑止の観点から、現場の状況に即した武器使用基準をつくる必要がある。
自衛隊法は防衛出動するときの武力行使について第88条2項において「(前略)武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする」と定めている。しかし、現実には「国際法および慣例の遵守」からかけ離れて大きな制約を受けている。武器を携帯することすらないまま、危険な海外派遣を強いられているのが現状である。このことは、現場の部隊指揮官および隊員の判断と任務遂行をより難しくし、場合によってはかえって毅然とした対処をためらわせて事態解決を困難に陥らせる可能性がある。武器の使用については、少なくとも国際常識のレベルに従うとするべきであろう。ともすると、これまでの武器使用に関する議論は教条主義的であり、政治的取引に使用されてきた。
このたび、パキスタンの災害救援に派遣された陸自ヘリ部隊は、武器を携行していない。パキスタンの国内情勢が極めて厳しい危険な状態にあることを考えると、あまりに「武器使用」に拘泥した措置である。政府は、ただ「ヘリを持っているから」という理由で自衛隊を派遣したのではないだろう。危険な地域での任務だから、自衛隊を選んだのである。ならば、事態によっては武器を使用することを念頭に置くべきであろう。
同時に、部隊運用基準ROE (Rule of Engagement)を確立するよう、防衛大綱に盛り込む必要がある。ROEは、軍事作戦を実行する現場部隊に対して、政府が発する簡潔な特定の指導である。国家・政府は、軍事活動において、不必要な破壊や殺傷を回避するために、国際法(特に、武力紛争法)を厳格に遵守しなければならない。国家が国際法を遵守するということは、部隊・部隊構成員が国際法を遵守しなければならないことを意味する。これを担保するための基準がROEだ。
冷戦崩壊後は「戦争以外の軍事作戦」(MOOTW:Military Operations Other Than War)が多様化し増加している。自衛隊も、国連による平和維持活動(PKO)や平和執行活動に参加する機会が増加する傾向にある。これらの活動を派遣目的の範囲内に限定し、かつ武器の使用を含めた任務遂行を円滑に行うためにもROEを確立する必要がある。
集団的自衛権の行使を認め日米安保体制の実効性を確保せよ!
第7は、日米同盟の実効性の確保、すなわち集団的自衛権の行使について述べる。
わが国の防衛において日米同盟は、見通しうる将来において最も重要な要件である。独立国として「対等な同盟」を希求するならば、集団的自衛権の行使は必然的に重要な条件となる。同盟は、相互の利益を確認するとともにリスクも共有する双務性を持って成立する。そして、自国の独力による防衛努力を超えた抑止力を構成するトータルパワーとなる。
同盟の真の信頼性は、集団的自衛権の行使を認めることによって、お互いを助け合う意思と行動を一体化できるかどうかにかかっている。基地の提供や思いやり予算という物的なものと米国青年の生命とを等価とするわが国政府の発想は、実際に日本が緊急事態に陥ったときに、同盟破綻を呼び起こすだろう。
安倍元首相が設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が2008年6月に発表した報告書は、以下の4類型について、集団的自衛権の行使を認めるなど政府解釈を変更すれば、現憲法のまま実施できると結論づけた。1)公海における米艦防護、2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃、3)国際的な平和活動における武器使用、4)PKO活動における他国への後方支援。
さらに同報告書は、基本的安全保障政策について、2つの基本方針を策定した。第1は、同盟国たる米国に協力する場合は、それが日米同盟の信頼性を維持・増進する上で必要不可欠であり、わが国の安全保障に資するものに限ること。第2は「集団的自衛権は保有すれども、行使できない」とする現在の政府解釈の変更だ。北朝鮮の長距離弾道ミサイルへの対処や海賊対策の本格化は、集団的自衛権を行使できるようにする憲法解釈変更が必要なことを示している。
集団的自衛権を「持っているが行使できない」とする奇妙な解釈に固執すれば、中国の軍事的台頭と米国の国力の相対的低下、在日米軍基地問題の混乱と不安定化などが積み重なり、いつの日か必ず日米同盟は危機に瀕するだろう。
自衛隊だけで日本は守れない、国民の参加が欠かせない!
ここからは、防衛大綱に示すべき項目の3番め、すなわち自衛隊の役割と運用指針について提案をしたい(前編を参照)。
わが国の憲法は国の防衛について一言も触れておらず、自衛隊に関する条文は全く存在しない。
自衛隊法第3条は、自衛隊の任務を「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする」と定めている。蓋然性の大小は情勢によって異なるが、自衛隊の存在意義は、わが国の主権、国土の保全、国民の安全と財産の保護であり、加えて、海洋国家日本の国益であるシーレーンの保護にある。自衛隊は、この国益を防護するため、第一線に立つ役割を負うプロの実力集団として位置づけられる。
ただし、国を防衛することは、日本国民全体の基本的責任である。ひとり、自衛隊のみの責任ではない。もし侵略を受けたならば、わずか25万人の自衛隊で国防を全うできるものではない。よって、国の防衛に直接・間接にかかわるべき義務を国民に課すための法規的根拠が必要であろう。このため、国家安全保障基本法(仮称)の制定を進めるべきであろう。
国防に命をささげる自衛隊員に名誉を!
自衛官の責任と権限を明確にするために、名誉制度と軍事裁判制度が必要である。自衛官は入隊するときに、「安全第一」ではなく「任務第一」と宣誓する。時には生死にかかわる決断を強いられる職務である。自分個人の安全よりも国家国民の安全を優先して任務を遂行することを求められているだけに、名誉と慰霊の制度について検討する必要がある。
国家の守りに命を捧げた兵士の魂を祭る靖国神社に国家の最高指導者が感謝の念も表わさない現実を国民は見ている。任務に殉じる覚悟をしている多くの隊員の名誉についても良く考えるべきである。
いっぽう、軍事裁判制度について、今後の議論が必要であると考えられる。有事において厳正な規律が保てる自衛隊の体制確保に努める必要がある。わが国の憲法は特別裁判所の設置は認めていない。憲法上無理ならば、「有事における特別な刑法」を制定してもよいだろう。
緊急事態に対処するため、自衛隊に優先権限を認めよ!
自衛隊の役割は有事だけではない。有事に至らないテロ、パンデミック(全世界的流行病)、大規模騒擾、大規模災害、原子力発電所の事故など広域非常事態に対応するのも任務のうちである。しかし、これらに対する法制は未整備だ。いわゆる「緊急事態基本法」の早期の制定が必要である。
緊急事態基本法においては、各種出動および行動発令、または同待機命令を受けたときに自衛隊が優先的に行使できる権限について明確に示すことが重要である。即応態勢が論議されることが多いが、必要な電波の使用周波数の拡大など優先権限が伴わないと即応が不可能な場合がある。特に大規模災害などの緊急事態を予測している段階で待機命令が出た場合における自衛隊の優先権限については、整理して明確にしておく必要がある。
加えて、海上保安庁の統制についての矛盾を解決する必要がある。自衛隊法80条は「(前略)出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる」と定めている。いっぽう海上保安庁法25条は「(前略)海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と規定する。2つの条文の間には実行上の矛盾がある。
4つの理由で必要となる統合運用態勢!
首相をトップとする国家安全保障会議など、軍事に対する政治の指導指揮系統を明確にする必要があることを先に述べた。同時に、「軍令」に相当する自衛隊の指揮運用の系統を明確にするとともに、「一元化」する必要もある。
一元化は、以下の4つの理由から重要となる。第1は、陸海空の3自衛隊が総合力を発揮できるようにするため。いかなる危機事態にも即応できる任務遂行能力を高め、国家国民の安寧を確保・維持することが、自衛隊の存在意義であり目的である。そのためには、一つの目的に3つの自衛隊の戦力を集中する必要がある。
第2の理由は、「専守防衛」から脱皮して、冒頭に述べた「先守防衛」態勢を確立するためである。常設の統合部隊指揮官・統合作戦司令部(PJHQ:Permanent Joint Headquarter)において平時から危機管理・有事に対処するための計画を研究策定し、演錬し、即応できる準備を整えておくことが必要である。最近の危機事態は、突発的であり、事態の推移も速く、多岐にわたる。複合化・多様化しているために、「初期消火」――事態に即応して初期段階で鎮静化し、危害が拡散することを防止すること――が重要な意義を持つようになった。
第3の理由は、民主主義国家である日本において、政治と軍事との適切な関係を維持し、シビリアンコントロールを機能させるためである。国家の安全保障・国防の方針や戦略は、政権によってその都度変化するようであってはならない。「統合幕僚長」が政治の要求をキチンととらえて防衛任務の実務につなげるとともに、自衛隊が持つ「軍事力」の能力と限界を率直・正確に助言することで、的確な政軍関係を確立する役割を果たすべきだ。加えて「統合部隊指揮官」が、最高指揮官である首相の意思決定を速やかに受令して、指揮下にある部隊の作戦指揮につなげる役割を遂行する。
第4の理由は、日米共同作戦を効率的に遂行するためである。米軍は陸海空および海兵隊において、統合運用の実績を既に積み上げている。これに機能的にマッチする態勢を整備する必要がある。
「行政系統」と「軍令系統」が混在している現状から脱し、首相→防衛大臣→統合部隊指揮官→作戦部隊という具合に、一元的に指揮系統を整理した軍事の専門的な指揮・指導組織が必要である。
自衛隊の人材確保、国民の自衛隊理解!
ここからは、防衛大綱に盛り込むべき5点の5番め、防衛力整備の方向性について提言する(前編を参照)。この項では、人材の育成、サイバー戦対応、対潜水艦・機雷戦、策源地攻撃、宇宙、離島、研究開発、シンクタンクに触れる。
自衛隊の任務は、国の防衛を基本としながらも多種多様な方面に拡大・増加している。しかし、任務が増えるいっぽうで、予算と隊員が削減されている。「当面見通しうる将来において、大規模な侵略の蓋然性は低い」(16大綱)という前提で、隊員は与えられた任務を黙々と遂行している。しかし、そろそろヤリクリのゆがみが出てきていないだろうか。隊員は、1人2役、3役をこなしながらギリギリの状態で任務に当たっている。この現実を政治はどう見ているのだろうか?
自衛隊の職務の特殊性故に、人材の養成には、特殊なOJTと術科教育を繰り返す必要がある。したがって教育には相当の時間が必要となる。人的に余裕が無くなると、部隊の実員にシワ寄せするか、一部の隊員に過重な負担を強いるか、教育訓練を削減するか、せざるを得なくなるだろう。人的余裕を確保する施策と相応の予算の確保が必要である。また、人材を育てるためには、訓練演習に使用する燃料・弾薬・機材と訓練海域・空域、演習場の確保がさらに必要である。
国民の自衛隊に対する理解は、これまでの実績の積み上げによって、かなり向上している。高い評価を受け、存在の必要性を認知されてきた。広報の成果も大きい。しかしながら小学校から大学に至る教育の現場では、自衛隊が国民の貴重な財産であり、重要な役割を果たしていることが相変わらず浸透していない。この現実は直視するべきであろう
集めた人材を育てるためには、訓練演習に使用する燃料・弾薬・機材と訓練海域・空域、演習場の確保がさらに必要である。
新たな戦闘領域としてサイバー戦が重要になる!
以下に挙げる様々な戦闘を想定し、準備することが肝要だ。第1は、サイバー戦である。これに備えて、攻撃と防御についてITの知識を持った専門部隊の編成と活動、人材の確保・育成が必要だ。サイバー戦に平時も有事も無い。軍事のみならず政治・経済・社会全体が、日進月歩のサイバー技術を駆使している。
第2は対潜水艦戦、対機雷戦能力である。日本海・東シナ海・黄海などの浅海面、日本列島東の深海域の作戦が重要になる。これに対処するための装備と戦術の開発、人材の育成、ドクトリンの整備が重要だ。中国、ロシア、北朝鮮は、潜水艦と機雷の装備を強化しつつある。日本周辺海域は、地形と海流が複雑にからみあっている。このため潜水艦および機雷などの水中武器や装備を使って攻める側にとっては極めて有利な条件が整っている。反対に対潜水艦戦、対機雷戦をする側(守る側)は複雑な対応が必要である。このため
第3は策源地攻撃だ。敵地攻撃能力として以下を充実させる必要がある――航空機の能力向上、精密誘導兵器の装備、潜水艦発射型の巡航ミサイル(トマホークなど)、地対地ミサイル、情報偵察衛星と情報指揮システム。
第4は宇宙である。北朝鮮の核兵器開発と弾道ミサイル実験は、わが国に深刻な脅威となりつつある。中国についても、台湾海峡問題や東シナ海の海洋進出問題などおいて、日本および米国との関係が厳しくなっている。中国が持つ核弾道ミサイルの影響は将来、深刻となろう。中国は同時に、衛星破壊技術も実用化の域に達したとみられている。
北朝鮮および中国の脅威に対処するための「早期警戒衛星」の整備を充実する必要がある。時間的な余裕はない。かつ莫大な経費を必要とする。各種衛星の整備とともに、C4ISR(指揮、管制、通信、コンピュター、捜索、救難)の再構築に着手することが必要である。
第5は国境離島における戦闘だ。当面の国境離島の防衛警備の重要性にかんがみ、無人島も含めた重要な離島に自衛隊が臨時に駐留もしくは待機するための小規模な施設および所用の機材を設置する。ヘリの臨時離発着場や小船艇の係留施設などが考えられる。
知恵を結集せよ~研究開発とシンクタンクに期待!
日進月歩の武器システムや装備の研究開発のため、人材と予算を配分することが必要である。特に、潜水艦の原子力推進機関の研究開発は、ぼう大な予算と時間と人材を要することから、早期に着手することが望ましい。また、巡航ミサイル、無人偵察機UAV(Unmanned Aerial Vehicle)、無人自走潜航艇UUV(Unmanned Undersea Vehicles)、戦術ロボット、各種宇宙衛星などの研究開発には、産官学の知恵と技術を融合することが必要である。
各種の分野の総合的知見、特に社会科学分野の知恵を結集するために、シンクタンクを育成する必要がある。国際情勢が複雑化し、将来への不確実性・不透明性が増している。こうした環境における安全保障と国防は、防衛省・自衛隊のみで全うできるものではない。世界の多くの国が、産官学に加えて民間のシンクタンクの知恵を借りながら、自国の安全保障態勢の整備を進めている。安全保障・防衛も、最後は人の問題となる。優秀なシンクタンクを育成する施策を検討するとともに、その知見を吸収する仕組みを整備する必要がある。
先を見据えた大綱を望む!
安全保障分野の展開は速い。2004年12月に閣議決定された「16大綱」(注:「16」は平成16年の意)ができて以降の情勢の変化は急激だった。さらに、新大綱の策定が政権交代によって1年間伸ばされた間にも、従来にないテンポで状況は激変した。冷戦崩壊後の国際情勢は冷戦期に比べて、むしろ不安定・不確実なものとなった。冷戦崩壊時には「平和の配当」を期待して明るいニュースに喜んだが、現在、見事に裏切られている。
オバマ米大統領がプラハで行った核廃絶の演説に、世界は再び期待を持った。特にわが国の世論は、明日にも核兵器が世界から一掃されるような幻想を持った。しかし、たぶん、未来の人々は、いっそう複雑で困難な問題を抱えることになるだろう。防衛大綱は、おおむね10年先の防衛事態を想定する。「10年先」は人知の及ぶ範囲であろう。しかし、長期的な洞察力と国家目標を掲げて、遠い将来を見据えた新しい大綱を練り上げてほしいものである。
わが国を防衛する固い決意と10年先の国際情勢をにらんだ防衛の基本方針!
2010年11月2日(火)日経ビジネス 古澤 忠彦(元海将)
菅直人内閣は、年末までに新しい防衛大綱を閣議決定する予定だ。防衛大綱は、日本の中期(5~10年)の安全保障政策の指針を示す重要な文書である。本来なら昨秋、改定する予定の文書だったが、政権に就いたばかりの民主党が1年延期した。
このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家が考える防衛大綱の「私案」を紹介する。日本は、集団的自衛権の行使を今後も 禁止し続けるべきなのか? 非核三原則、武器輸出三原則などの「原則」を今後も維持し続けるべきなのか? 日米同盟はいまのままでよいのか? 米軍基地は 日本に必要なのか?
安全保障政策に関する議論は、これまでタブー視されてきた。しかし、本来はみなで議論し決めていくものである。このコラムで紹介する私案は、ビジネスパーソンが自分のこととして安全保障政策を考える際の座標軸づくりに役立つはずだ。
昨年夏、自由民主党から民主党へと政権が交代した。「わが国は歴史的な転換点を迎えた」と騒がれた。自民党政権の末期的状況に嫌気のさした国民が非自民党政権を選択。そして、民主党・鳩山政権が生まれた。彼らが提示したマニュフエストは実現性に乏しいものであったが、宣伝戦が効を奏して順風満帆の出港であった。
だが、「鳩山丸」はいきなり「安全保障」という暗礁多い海域に流されて、際どい航海を強いられた。外交、安全保障政策は、政権交代によって急激に変えるべきものではない。しかし、鳩山政権は行き先を明確にしないまま、「日米同盟」の舵を大きく切った。自ら望んで暗礁多い海域に突入してしまった。普天間基地問題に象徴されるように、鳩山政権は、哲学や戦略を持たないままに、わが国の安全保障の基軸である「日米同盟」を破綻の危機にさらしている。そして、政権自身がそれに気付いていない。このことこそが、わが国の真の危機である。
国際情勢が急激に変化し、危機的状況が多様に複雑に生起する中で「21大綱」(注:「21」は平成21年の意)の策定が期待されていた。だが、鳩山政権は、「防衛計画大綱」と「中期防」の作成を1年間延期した。政権交代の成果をことさら強調したかったのであろう。自民党政権下で準備された大綱研究を蹴った。しかし現実には、民主党政権の確たる国家戦略や安全保障政策が出ないまま、大綱策定の期限が近付きつつある。
防衛計画の大綱は、おおむね10年先をめどに防衛力の整備の方向を決めるものであり、将来のわが国の安全保障の態勢を描くものである。10年後およびその先のわが国の国民が安泰に生活を営むことができる態勢を築くため、大綱への期待を述べる。
大綱の位置づけを改めて考えよ!
「防衛計画の大綱」(以下、防衛大綱)は、本来、わが国の安全保障の最高責任者である首相が国家目標と国益を明示し、それを実現するための国家安全保障戦略を示したことを受けて、政府が防衛政策の指針として提示するものである。外交・防衛政策は他の政策に優先して重視するべきものである。大綱は、国家主権の確保、領域の保全、国民の生命・財産の安全を守るという国家と政府の覚悟と決意の表明とも言える。
防衛大綱は、アジア太平洋および世界の安全保障環境の変化を見据えた当面10年間の防衛政策の基本的枠組みを規定する、この防衛政策を実施するために必要となる防衛力の量と質、および円滑な運用の基本的方針を明示しなければならない。しかしながら、これまで防衛大綱は、防衛政策の下位に位置づけられてきた。その理由には次の3つが考えられる。
現行の大綱が抱える3つの問題点!
一つは、「国益とは何か? どう守るのか?」を政治、学会、マスコミがキチンと議論してこなかったことによる。彼らは、先の大戦のトラウマ、周辺国への過剰な配慮、選挙の票にならない、といった理由からあえて触れることを忌避してきた。その結果、国家の存在意義や国益に対する国民の役割、自衛隊の存在意義などを真剣に本質論として論じることがほとんどなかった。
わが国の防衛政策の策定においては、「特異な軍事評論」がかかわってきた。そもそも国防・自衛隊のあり方を政治のレベルで論じるときには「自衛隊による安全確保」を主題にするべきだ。しかし日本では、「軍隊=平和に対する脅威」という視点から「自衛隊からの安全確保」を同時に論じてきた。「軍隊(=自衛隊)からの安全」は学問の世界の話題ならともかくも、実際に部隊や隊員を運用する立場の政治家が政策論として論じるべきではない。政治と軍隊(=自衛隊)の相互に熱い信頼があってこそ、軍隊は任務に邁進できるのである。政治に信頼されていない、常に警戒の目で見られていると感じた途端に、身命を賭して任務に邁進する士気は失せる。
2つ目は、自制的防衛政策が軍事的合理性を過剰に抑制したことである。「非核三原則」、「軍事大国にならない」、「専守防衛」、「攻撃兵器を保有しない」、「集団的自衛権を行使しない」――などの否定形の文言が、日本の防衛政策が自制的であることを顕著に示している。その最たるものが憲法9条の「戦力を保持しない」である。これらの政策的文言を前提にして、政府はこれまでの大綱を策定してきた。
3つ目は、大綱に添付される「別表」の存在である。これは、防衛力の整備規模を数値で表わしたもので、当面の情勢に対応するために保有するべき陸海空自の兵力が一覧表にしてある。。別表があるばかりに「理念なき防衛力整備」に走りがちである。大方の国民は、大綱の本文を読むことなく「別表」のリストのみを見て大綱を理解したつもりになり、これだけの兵力があればわが国は安泰と誤解する。戦車や護衛艦や戦闘機がわが国の防衛上なぜ必要か、どのような役割を果たすのかまで、思いを致すことがない。いわば、大綱は「買い物計画」に堕してきた。
防衛大綱を防衛政策の指針にするためには、まず国家目標および国益とは何かを明確にして国家戦略・国家安全保障戦略を確立することである。これこそ現政権が設置した国家戦略室が策定すべき重要事項である。そして、防衛省が作成する統合長期防衛戦略や中期能力見積もり等の諸検討作業を受けて、政府が大綱を作成する。その中心的役割も国家戦略室が担うべきである。そして、安全保障会議において、首相らが最終的に議決する。
次に、防衛大綱には、以下のことを示すことが重要だ。1)わが国を防衛する固い決意、2)当面10年先までの国際情勢の変化に対応できる防衛政策を策定するための基本的方針、3)自衛隊の役割と運用指針、4)自衛隊以外の組織・機関が果たすべき役割と自衛隊との協力関係、5)防衛力整備の方向性。したがって、別表は大綱から切り離すべきだ。別表に書かれてきた内容は、大綱を受けて策定する「中期防衛力整備計画」に取り入れるべきであろう。
専守防衛を主体的防衛に改めよ!
以下、上記の4つの項目として、具体的にどのような内容を盛り込むべきか、私案を述べる。まずは、先に述べた2)当面10年先までの国際情勢の変化に対応できる防衛政策を策定するための基本的方針に関して、7つの提案をする。
第1に、「専守防衛」を改め「主体的防衛」とするべきだ。「専守防衛」は、自衛隊の運用をきわめて狭く、限定的にしている。現行の大綱は「わが国は国防の基本方針の下に専守防衛に徹し、他国に脅威を与えないことを主眼に防衛力整備を進めている」(出典:16大綱)と定めている。つまり、専守防衛は、相手から攻撃を仕掛けられてから初めて対処する。保持する防衛力は、相手に被害を与えても相手に大きな打撃を与えない程度のものに限定する。作戦形態をもっぱら防勢的なものとし、攻勢的なものは取らない。軍事的合理性を無視して、武力行使、武器の使用あるいは戦術レベルの攻撃にまで過度の制約を課しているわけだ。
そもそも相手に脅威を与えない軍事力は世界に存在しないし無意味である。
専守防衛という考え方は、平和主義を強調するあまり、国家・政府が国民の犠牲を傍観することにつながる。
わが国がたびたび発言してきた「専守防衛」は、すでに周辺国に十分に伝わり、理解されているようだ。先の北朝鮮工作船の行動や尖閣諸島周辺の中国漁船群の傍若無人振りは、「(中国が)軍事的に攻撃しない限り、日本は強権を発動しない」と見透かしていると思われる。このような状態は、一方的な権利侵害を招く可能性が大きい。このことは、北方領土や竹島の不法占拠にも色濃く影を落としていると考えられる。
ミサイルなどによる攻撃からわが国を防護するのに、敵のミサイル基地などを攻撃することが自衛の範囲として認められている。1956年の衆院内閣委員会で、鳩山一郎首相(当時)が「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところではない」と答弁し(実際には船田中防衛庁長官(同)が答弁を代読した)、この考えが認められた。しかし、具体的な法律や装備を整備して国民を守ろうとする施策は実行してこなかった。「ICBM(大陸間弾道ミサイル)や爆撃機の保有はあり得ない」とする国会答弁はそのあかしだ。
中国および北朝鮮の核・弾道ミサイル、サイバー・テロを含むテロ攻撃、領域侵害などの新しい国際紛争環境に対して、米国が持つ攻撃力と抑止力に全面的に依存することはあまりにもリスクが大きい。米国は、国力および軍事力が相対的に低下する予兆があり、中東やアフガンなどに関与した場合には、西太平洋の危機に即応できるとは限らない。このような、論理的に成り立たない専守防衛に代えて、自国の防衛と国際的不正義に対処できる真の意味の「戦略守勢」を基にした「主体的防衛」戦略を打ち出す必要がある。もちろん、外征侵略戦争を行わないことは前提だ。
主体的防衛戦略は、必要な防衛力を自主的・積極的に保有し、反撃を含めた「攻勢的防衛」の態勢を準備することで、わが国の主体的抑止力を強化するものである。筆者はこの政策を、日本の生存にとって、日米同盟の深化とともに不可欠なものと信じている。
国家安全保障会議を設置すべし!
第2として、最高意思決定基盤の在り方について提案する。当面10年先までの防衛政策を策定するため、新防衛大綱は国家安全保障会議の設置を提唱するべきだ。先に述べたように、国家戦略室が策定した安全保障の基本戦略に基づいて防衛戦略すなわち防衛大綱の指針を練る組織である。安倍晋三元首相が「国家安全保障会議」すなわち日本版NSC(National Security Council)の創設を提唱し、関連法案を国会に提出したのは極めて意義のあることであった。同元首相は、官邸主導で能動的に外交・安保戦略を立案することや、首相官邸の情報収集・評価機能を強化すること、を図っていた。安全保障の基本戦略(グランドストラテジー)がまずあり、それを遂行するための下部戦略として外交・防衛戦略があるべきである※1。だが、国家安全保障会議の実現を目指した法案は2007年の国会で廃案となった。
その法案は9人の閣僚を中心とする現在の「安全保障会議」の機能は残すものの、この中から首相のほか外務、防衛、財務、官房の4閣僚を中心とする会議を設けて、ここで「国家安全保障に関する外交、防衛政策の基本方針や重要事項」などを審議するとした。加えて、この会議を補佐するものとして、「専門会議」と「事務局」を設ける案であった。
私が考える国家安全保障会議の役割は、わが国の安全保障に関して実行性のある実質的な議論をすること、それをふまえて長中期の防衛戦略を作成すること、関係各省庁・機関に対して基本的事項を指導すること、最高責任者であり指導者である首相の意思決定を補佐することなどだ。また、情報部門(例:防衛省情報本部)と密接に連携することにより、国家緊急事態に対処するため、刻々変化する情勢をフオローして状況に応じた決断をする。
これらの機能を実行性あるものにするためには、情報部門と政策企画担当部門(各省庁および政党の政策担当者など)の関係を緊密にするとともに、柔軟かつ機動性ある組織を構成する必要がある。加えて、首相に対して専門的かつ実務的な助言をする者として、国家安全保障担当補佐官および制服自衛官の補佐官を設けることも必要である。
島嶼および領域は、すなわち本土防衛である!
第3として島嶼および領域の防衛について述べる。
日本の政治経済の中枢に対して直接侵略が及ぶ蓋然性は低い。しかし、東アジアの海洋覇権をねらう中国、日本固有の領土である北方四島と竹島を不法占拠しているロシアおよび韓国の行動は、わが国の島嶼とその周辺の権益を侵害している。
わが国は戦後65年間、国境と領域の警備を実質的に軽視してきた。警備監視体制は即応性を持たず、極めて脆弱である。その結果、拉致、漁船拿捕・銃撃被害、竹島・北方領土の不法占領、尖閣諸島の紛争化、EEZ(排他的経済水域)海洋資源の争奪、領域侵犯を招いてきた。わが国は四面環海で、多くの島嶼に囲まれている。いっぽう縦深性に乏しく、バッフアの無い国土構成は、防衛上、脆弱な側面をさらけ出している。ちなみにバッファとは、第2次世界大戦時の英国にとってのフランスのような存在を指す。
特に、東シナ海・日本海に所在する離島は「国境の島」として、直接脅威にさらされている。竹島や北方四島のようにいったん侵略された島嶼は、外交的な話し合いで奪還することはほとんど不可能である。さらに、軍事的な奪還作戦は、多量の出血を覚悟する必要がある。国境離島は、国土防衛の「防波堤」ではない。いかなる島嶼もわが国を形成する「本土」である。その観点に立って領域警備防衛の態勢充実を図らなければならない。
その際に重視しなければならないのは、主体的に自力で領域警備に当たることである。日米同盟は日本の安全保障の基本の一つであるが、基本原則は、あくまでもわが国の国土の確保と国民の安全の確保を日本自身が全うすることである。「米国がいつでも即応して来てくれる」という期待と依存では、日本の安全を全うすることはできない。日米安保体制を機軸とするあまり、「自ら守る意識の希薄化」という負の部分を招いた。これを払拭することに、わが国独自で取り組まなければならない。
領域防衛は離島の防衛と密接不可分である。離島・領域の安全確保は、緊密な島嶼間ネットワークを構築する情報通信、海路空路の島嶼間シーレーン、人の流れと高い関心に大きく依存する。
離島に必要な防衛は、専守防衛でなく「先守防衛」である。わが国の国境に多数散在する島嶼とその周辺の領域の防衛警備は、部隊配備の制約と効率性の面から脆弱にならざるを得ない。したがって、予測される事態に先行して所用の部隊を配備する即応機動性が重要である。
わが国の地政学的特性を考えると、敵の侵攻を水際までに阻止できるよう陸海空自衛隊の機能を整備する必要がある。主な戦力は、島嶼防衛の場合、海兵隊化した陸上自衛隊となる。島嶼自身の自給自足、電気、燃料、医療、教育などの文化的な生活維持の機能が乏しいので、防衛警備の機能のほかに高速機動輸送、航空支援、後方支援、住民保護、医療支援など各種機能を複合的に持った任務部隊の編成が必要であろう。
EEZを含む領域の防衛警備は、海上・航空自衛隊を機動的に運用すべき分野能であろう。日本領域内のあらゆる地域に即応できる態勢を維持するために、高速機動支援能力を統合部隊として運用する。不慮に侵攻を受けやすい重要離島、無人島については常時監視、警備する態勢を維持するか、即応できるための施設と装備を準備する。
「先守防衛」を実現するためには、脅威が顕在化する前に防衛の態勢を強化充実する「防人」の態勢が必要である。そのためには関係省庁・機関が安全保障に総合的・積極的にかかわり、体制および態勢として役割分担を整理する必要がある。同時に、自衛隊や警察、海上保安庁その他の危機管理にかかわる「危機対処力」の統合運用・指揮・通信態勢の整備が必要である。そしてそれらの根拠法規として「国境警備法」を制定する必要がある。
シーレーンの安全確保は日本の死活問題!
第4として、シーレーンに触れる。わが国のシーレーンは世界に広がっており、「海のあるところすべてが日本の国益に関係している」といっても過言ではない。新大綱において、シーレーン防衛の重要性をうたうべきだ。
具体的には、米国を中心とした自由主義経済圏の関係国による海洋安全保障の有志同盟に積極的に関与し、地域の主導的立場を確保する必要がある。海洋の自由に対する米国の執念は絶大だ。世界の海を自由に利用するために払う政治的・軍事的・経済的な熱意と努力は、国益の防護と同等に頑なである。その恩恵に世界の海洋国家が依存している。日本が、世界第2の経済大国の源泉である海洋の自由な利用を維持するためには、米国との同盟関係を基軸にした海洋安全保障への積極的なかかわりが求められる。
特に、わが国にとって西太平洋とインド洋のシーレーンの確保は、死活的に重要だ。この海域における海洋情報・データの収集とプレゼンスを継続的に維持するとともに、沿岸国との関係醸成と友好関係の確立が必要である。
西太平洋における中国海軍のプレゼンス拡大は、見逃せない背景の一つだ。中国の空母戦力は、既に建造中の攻撃空母が2015年に就役する予定だ。逐次増勢し、戦力となっていくだろう。潜水艦勢力の拡充も急速である。沖縄・台湾・フィリピンを結ぶ第1列島線内の軍事的占有、および小笠原・グアム・パプアニューギニアを結ぶ第2列島線以西の西太平洋において、米軍に対するアクセス拒否・海域使用拒否の戦略を具体化させている。米国のQDR2010(注:QDRはQuadrennial Defense Reviewの略。4年ごとの国防計画の見直し)を読むと、近い将来に西太平洋における米軍の抑止力および打撃力に間隙が生じる可能性も否定できない。わが国としては、米軍来援と作戦遂行を円滑にするために、ハワイおよびグアムから日本列島までの軍事的なシーレーンを確保することが重要である。TGTトライアングル(東京・グアム・台湾を結ぶ西太平洋の三角海域)海域のシーレーンを掌握できるか否かは日米同盟の深化の要であり、わが国の生存に大きく影響するだろう。
加えて、東シナ海や台湾海峡、南シナ海のシーレーンは、太平洋とインド洋を結ぶシーレーンのチョークポイントであり、わが国のみならず世界の要衝である。この海域の制海権を中国が握り、海洋の自由を押さえることになれば、その影響は甚大だ。それを阻止するためには、キーストーンである台湾の独立または現状維持と、南シナ海と東シナ海の自由航行を確保・維持する必要がある。台湾については、台湾が自由民主主義の維持と確立、および中国からの干渉を排除する意味で独立を指向する意思があるときには積極的にこれを支援するべきであり、台湾が中国に統一されないように台湾を支援することが、シーレーンから見たわが国の国益である。
海洋の自由と海洋権益を確保するためには、海運と海洋戦力を同時に確保することが重要である。これらの海洋力が、日米同盟および有志連合の海洋安全保障を共有する基盤となるからだ。危機的状況にまで落ち込んだわが国の海運界の再興は焦眉の急であり、人材の確保と育成、港湾の整備、造船・運航システムなどの近代化と整備・充実が重要である。同時に、海運界と海上自衛隊との密接な連携と情報の共有が必要である。
インテリジェンスに携わる人材の育成と秘密保護法の制定が急務!
第5は情報機能の強化だ。人材育成と「秘密保護法」の制定を急ぐべきである。
国家安全保障にかかわる情報の収集・分析において、情報部門の組織的かつ機能的活動が重要であることは論をまたない。そして、情報収集・分析に携わる人材の養成には、経費と時間と経験が必要だ。わが国の取り組みは、まだまだの感が拭えない。「情報の軽視が情勢判断を誤らせた」というわが国の貴重な過去の経験を反芻して、情報に関する人材の育成・強化を図る必要がある。
加えて、秘密保護法の制定を急ぐべきである。わが国は、国家機密から企業情報、個人情報に至るまで情報を保全する努力を行っていない。国家・組織の機密情報が簡単に流失するばかりでなく、多くの工作員が隣人として暗躍していると言われている。
情報保全の不法行為に対しては、国家公務員の守秘義務とか外国人登録法とか出入国管理法など他の法律を適用している。政治家の守秘義務はほとんど無きに等しく、重要な国家情報が政治家を通じて不用意にマスコミに流出している現状にも歯止めをかける必要がある。
個別法による対応は限界に来ている。1985年6月、政府は「国家秘密に係わるスパイ行為等の防止に関する法律案」を国会に提出したが、けっきょく、陽の目を見なかった。これに再度、挑戦する必要がある。
http://news020.blog13.fc2.com/blog-entry-1024.html
尖閣の衝突画像、ネット流出=海保が確認、国会提出分以外も
沖縄県・尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船と中国漁船が衝突した事件で、状況を記録したビデオ映像 がインターネット上に流出したことが5日、分かった。
海保が画像を確認した。海保によると、国会 に提出したもの以外の映像も含まれているという。 流出した画像は6本に分けられ、計約44分ある。漁船が巡視船に衝突した瞬間の映像も含まれて いた。海保職員とみられる男性の声で、「挑発的な動きを見せています」「本船に当てました。今の 位置を確認」などと話す音も入っている。
尖閣諸島中国漁船衝突事件 流出ビデオ 1/6
http://www.youtube.com/watch?v=7t1Z7CuFWxI
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%88%A6%E7%95%A5%E7%9A%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E9%80%A3%E6%90%BA%E5%8D%94%E5%AE%9A
GDPの0.9%、就業者数の3.8%の極小産業 !
2010年11月4日 DIAMOND online 原英次郎 [ジャーナリスト]
「北京のスーパーでは、日本の農産物がすごく人気がありますよ」
ある中国人ジャーナリストが、その様子をこう語ってくれた。「日本のリンゴを初めて見ると、これは腐っているんじゃなかいかと思う。芯のところに蜜があるでしょ。でも、食べてみてその甘さにびっくり。お米も人気がある」。北京の富裕層にとっては、安心・安全、おしいしい日本ブランドを買うのに、価格の高さは気にならないらしい。
11月7日から、横浜で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を前に、菅政権が9日にもTPP(環太平洋パートナシップ協定)交渉への参加を、閣議決定すると伝えられている。TPP加盟への最大の障害は、農業である。菅総理が、10月1日所信表明演説で、TPPへの参加の意向を表明してから、農業団体はもちろんのこと、与党民主党内部からも反対の声が上がっている。
TPPとは、自由貿易協定の一種。関税がなくなれば、国際競争力のない産業は不利益をこうむる。だから、日本の場合は農業団体や関係議員から声が上がる。日本は民主主義国家だから、少数意見を切り捨てるわけにはいかない。だからといって、声の大きい人々の主張ばかりが通れば、これもまた理不尽だ。
保護政策にもかかわらず日本の農業は衰退の一途!
そこでまず、農業が日本経済のなかで、どのような地位を占めているかを、きちんと押さえることから、始めてみよう。
TPPはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドが参加し、2006年5月に発効した。この当初の参加国に、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わり、現在計9ヵ国で交渉が行われている。アメリカは来年11月のAPEC首脳会議までに、交渉妥結を目指している。
本来、世界貿易の自由化はWTOにおいて、多国間の交渉で進められていた。しかし、この交渉がなかなか進まないために、2000年代に入って2国間で協定を結ぶFTA(自由貿易協定)が主流となり、それが重層的に世界に広がっている。FTAはモノの関税や、サービス貿易の障害を削減・撤廃するのが主眼であるのに対して、TPPはこれを発展させて、ヒト・モノ・カネの移動の自由化まで対象にする。関税も例外品目なく撤廃されなくてはならない。さらに、2国間ではなく多国間の枠組みであるところに特徴がある。
日本が貿易自由化交渉を進める上で、長年にわたって農業は障害となってきた。では、日本の経済において、農業はどのような位置を占めているのだろうか。
Q1 どのくらいの人が農業に従事しているか?
1980年で農業就業者数は506万人で、総就業者数に占めるシェアは9.1%。それが2008年には245万人、3.8%と、この30年で就業者数は半分以下になった。ちなみに08年の総就業者数は6385万人だ。
Q2 GDP(国内総生産)に占めるウエイトはどのくらいか?
1980年における農業総生産は6兆2870億円で、GDPに占めるシェアは2.5%。それが2007年には4兆4430億円、0.9%と、GDPに占めるシェアは半分以下になってしまった。ちなみに08年の国内総生産は515兆円である。
Q3 食料自給率はどれくらいか?
供給熱量ベースで、1965年には73%だったものが、2008年には41%にまで低下した。
Q4 耕作放棄地は増えているか?
1980年の12万3000ha(ヘクタール)が、2005年には38万6000haへと3倍になった(なぜか農業白書統計には、2006年以降の数字がない)。
まず分かるのは、日本経済にとって、農業が非常に小さな存在であることだ。少数者の声は、マスコミや国家議員を通して大きく伝わってくるが、圧倒的多数を占めるその他産業で働く人々の声は、伝わってこない。もちろん、弱小産業だから農業を切り捨ててもよいと言っているわけではない。ここで認識すべきは、長年にわたる農業への保護政策が、このような惨状を招いたということである。
発想を転換すれば違った世界が見える!
TPPに参加した場合に、日本経済にどれくらいの影響があるか。政府が公表した試算は、バラバラで大きな話題を呼んだ。農林水産省の試算では、農業および関連産業への影響で、GDPは7兆9000億円程度減り、就業機会の減少は340万人規模に達するという。単純に比較すれば、日本から農業は消滅し、農民はいなくなるという計算になるから、これはすさまじい。
一方、経済産業省はTPPに参加しない場合、自動車、電気電子など日本が強い産業が打撃を受けることによって、GDPは10兆5000億円減り、81万人の雇用が減ると試算している。内閣府は複数のケースで試算しているが、TPPに加盟して貿易を100%自由化した場合、GDPは2.4兆円~3.2兆円増えると分析している。
どれが最も現実的な予想なのかは分からない。言えることは、前提の置き方次第で、かくも大幅に結果が違うということだけだ。そして、いくら試算しても、予測はかなりの幅になるだろう。なぜなら経済活動は生き物であり、こちらが動けば、相手もそれに負けないように戦略を発動し、それがこちらに跳ね返ってくるからだ。だから数字の妥当性をあれやこれやと深く追求しても、あまり実りはない。
一番の問題は、バブル崩壊後の失われた20年を経て、政府・与党をはじめ日本全体が、すっかり「後ろ向き思考」「縮み思考」に陥っていることだ。世界経済の構造は、いま大きく変わりつつある。その動きに合わせて経済の枠組み・仕組みを変えようとすると、ネガティブな影響ばかりが言い立てられる。
国を開くと言えば、わくわくするような「夢」や、「トライ」とか「挑戦」という言葉が浮かんでできてもよいはずだ。その意味で、この国は本当に憶病になり、そして老いたのだろうか。
本来なら、国を開く、貿易の仕組みを変えるということは、ピンチである一方、大きなチャンスでもある。日本の農産物輸出が、そのことを示している。日本の農産物輸出は、03年の1960億円を底に反転し、09年は2630億円と、着実に増えてきている。人口減少が始まったいま、国内で食糧に対する需要が増えて行く見込みはない。貿易の自由化は、国の外に市場を拡大するチャンスでもある。
製品や商品の競争力は、価格とコストばかりではない。いかに価格を下げて海外の農産物と競争するかと考えるから、お先真っ暗になる。どうすれば高い価格でも買ってもらえるか、と発想を転換すれば、道は開ける。
そのためには、政府は農家の規模拡大を促進し、質の高い農業にトライする農家を支援し、ブランド確立や流通コストの削減にこそ、資金が投入されるべきだ。もうそのことは、過去から何回も指摘されている。そして誇り高い農業従事者も、お情け頂戴の保護や補助金などは望んでいない。
民主党政権になって、米などの販売価格と生産コストの差額を補てんする、戸別所得補償制度が始まった。関税は廃止して所得補償で農家の生活は守る一方、農産物市場は自由化するための第1歩だとすれば、それなりの評価はできる。だが、現在の所得補償は、ほぼ無差別に配られていて、その目的がはっきりしない。
やはり農家の強い反対があった韓国はどう対処したか!
すでにお隣の韓国は、米国、EUともFTAを締結し、貿易の自由化では、日本の先を走っている。FTAを進めるにあたっては、韓国でも農家の強い反対があった。これに対して、韓国政府は、農家に対して短期的な所得補償を行うと同時に、強い農家を育成するために専業農家の育成、営農規模な拡大などを促進しようとしている。04年~13年の間に119兆ウォン(約8兆3000億円)、08年~17年にかけてさらに20.4兆ウォン(約1兆4000億円)が投じられる計画だ。FTAを国策として、実に戦略的に事を進めている。いまや、我々はお隣の国から学ぶべき点が多い。
戦後の日本は、世界の平和と自由貿易体制の恩恵を最も享受してきた。経済規模が大きくなった結果、日本の輸出依存度は17%で、ドイツの48%、韓国の55%と比べると格段に低いため、貿易はさほど重要ではないという見方もある。だが、これは間違いだ。
これから国内市場が拡大しないことを考えれば、輸出の役割は再び大きくなる。輸出を増やし、輸入も増やして世界経済に貢献することが、歴史的にみても日本の責務である。それはまた日本経済を活性化する道でもある。
農業関係者には、関税にしろ、所得補償にしろ、それは農業以外の産業で働く人たちの直接、間接の負担で行われていることを認識して欲しい。鶏が衰弱すれば、農業と農家を守る金の卵も産めなくなってしまうからである。
そして菅首相に問われるのは、「意志」と「決断」と「ビジョン」である。首相はTPPを「黒船」に例えたが、江戸幕府は国を開くことに対するビジョンがなく右往左往するばかりで、滅亡の端緒を開いてしまった。にもかかわらず、今回もまた首相から、国を開くことに対する強い決意と熱い思い、そしてビジョンが伝わってこないと感じられるのは、なぜだろうか。
(ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
2010.10.26 SEIYUインフォメーション
世界で唯一の西友オリジナル・ボジョレー・ヌーヴォーを圧倒的な低価格で提供!
合同会社西友では、ウォルマート・ストアーズ・インク・グループの英国ASDA(アズダ)のマスター・オブ・ワインである、フィリッパ・カールがブレンドしたボジョレー・ヌーヴォーを直輸入し、全国367店で販売いたします。同ボジョレー・ヌーヴォーは、今年、全世界で西友でのみご購入いただけるものです。
11月18日(木)に解禁されるフランス産赤ワインの新酒ボジョレー・ヌーヴォーの発売にあたり、西友では、今年、フランス有数のワイン会社であるグランシェド・フランス社製のものを直輸入します。発売するのは、昨年同様、瓶とペットボトルで提供するボジョレー・ヌーヴォー、ボジョレー地区の中でも、より限定されたエリアで生産されたボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー、最近話題のロゼワインで楽しめるボジョレー・ヌーヴォー ロゼの4種類で、マスター・オブ・ワインのフィリッパ・カールが自ら産地に出向き、いずれのワインも西友のためだけにブレンドしたもので、低価格で高いクオリティを実現しました。
フィリッパ・カールは「春の開花期には地域ごとの気候に大きな差がありましたが、ぶどうを完熟させる9月と収穫期には、十分な陽光を得ることができ、結果的に出来上がったワインは、とてもフルーティで、親しみやすい味となりました。2009年は、1950年代半ば以来、最高のヴィンテージと言われましたが、2010年もヌーヴォーにとってすばらしい年となりました。西友オリジナルのヌーヴォーをブレンドするというプロジェクトに携われたことをとても誇らしく思います。」と述べています。
西友では、これまでも、フィリッパ・カールが開発した「アズダ エクストラ・スペシャル」ワインシリーズが大変好評を博しており、同シリーズが牽引する形で、西友のワイン全体の売上は昨年比二桁増の伸びを示しています。
西友が昨年販売したボジョレー・ヌーヴォーは、その圧倒的な低価格が大きな反響を呼びました。今回、フィリッパ・カールがブレンドしたボジョレー・ヌーヴォーを発売することで、昨年比60%以上の販売数量を達成することを目標としています。
マスター・オブ・ワインの資格保有者は世界に289名しかおらず、この資格試験はワイン醸造、ブドウ栽培、ワイン取引などの幅広い知識が求められ、ブラインドテストも含まれる非常に難しい試験とされています。アズダでは、フィリッパ・カールがワインチームの責任者を務めており、アズダの英国におけるワインの売上高は10%を越えております。
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2010年ボジョレー・ヌーヴォーの商品概要
商品名 フランソワ・フッシェ
ボジョレー・ヌーヴォー(瓶)
規格・価格(税込) 750ml 990円
商品特徴 カシスやブラックベリーを思わせる味わいがしっかりと感じられるワイン。今年のボジョレー・ヌーヴォーを代表するようなワイン
商品名 フランソワ・フッシェ
ボジョレー・ヌーヴォー(PET)
規格・価格(税込) 750ml (価格は11月発表予定)
商品特徴 ラズベリー、イチゴなどの果物をミックスしたフルーティでフレッシュな、のど越しもさわやかなワイン
*西友、新酒「フランソワ・フッシェ ボジョレーヌーヴォー PET」(750ml)を890円で発売
2009年11月18日
西友は、今月19日に解禁されるフランス産赤ワインの新酒「ボジョレーヌーヴォー」のうち、フランス有数のワイン会社である「グランシェド・フランス」社製の「フランソワ・フッシェ ボジョレーヌーヴォー PET」(750ml)を、890円という圧倒的な低価格で発売する。容器にペットボトルが用いられていることから、軽量化による配送コストの削減が可能になったことに加え、西友による直輸入一括大量購入による、ボジョレーヌーヴォーとしては圧倒的な低価格を実現した。
今年のボジョレーヌーヴォーは、現地フランスでは「50年に一度の最高の作柄」といわれているという。「フランソワ・フッシェ ボジョレーヌーヴォー PET」の他にも、「フランソワ・フッシェ ボジョレーヌーヴォー 瓶」(750ml)や、ボジョレー地区北部の特定地域のぶどうだけを使った「フランソワ・フッシェ ボジョレーヴィラージュヌーヴォー」(750ml)など、西友独自のボジョレーヌーヴォーの品揃えを昨年の2品目から6品目に拡大し、それぞれ圧倒的な低価格で販売するという。
西友が昨年11月に販売した「フランソワ・フッシェ ボジョレーヌーヴォー 瓶 2008」(750ml)は、従来にない低価格で大きな話題を呼んだという。これによって、西友の昨年のボジョレーヌーヴォー全体の販売数量は、前年対比40%増を記録したとのこと。西友は、こうした流れを受け、今年、ボジョレーヌーヴォーのさらなる低価格化に踏み切ったという。
西友では、従来から、輸入ワインの品揃え拡大と低価格化に積極的に取り組んでいるとのこと。今年9月には、ウォルマート・グループである英国ASDA(アズダ)のプライベートブランド「Extra Special(エクストラスペシャル)」のワインシリーズを新たに9品目追加し、全18品目に品揃えを拡充。同シリーズが牽引する形で、ワイン全体の売上高も昨年比の約30%増で推移しているという。西友は、引続き、独自の直輸入ルートや親会社ウォルマートのグローバル調達網を活用しながら、低価格で高品質な直輸入商品の取り扱いを積極的に拡大していく計画だとしている。
「フランソワ・フッシェ ボジョレーヌーヴォー PET」は、フルーティーな香りで、やわらかな口当たりのワインとなっている。持ち運びに便利なペットボトルタイプ。ガラス瓶入りのヌーヴォーに比べ約400g軽く(同社比)し、輸送コストを削減することで手頃な価格を実現している。栓には開けやすいスクリューキャップを採用しているとのこと。
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http://www.uonumakoshihikari.com/
魚沼コシヒカリ理想の稲作技術『CO2削減農法研究会』(勉強会)の設立計画!