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クリーンエネルギーで21世紀の覇権を取れ!~(2)

2010.08.30(Mon)JBプレス 一尾泰啓

エネルギーの供給源の主役は、長い年月を経て変化してきました。人間は、もともと木材をそのまま燃やして燃料としていましたが、人間社会の工業化は、人間に化石燃料を開発し利用する術を与えました。

木材から石炭、そして石油へ!

 木材から化石燃料へエネルギーの主役がシフトしてからも、今度は化石燃料の中で、石炭から石油・天然ガスへと主役交代がありました。米国を例に、1845年から2000年まで155年間のエネルギーの供給源の変遷を見てみましょう(図5)。

このエネルギーの主役交代をエネルギー革命と呼ぶことにします。では、エネルギー革命は、なぜ起きたのでしょうか?

 それは、その時々の時代背景がエネルギーの世代交代を誘引したのです。分かりやすいように、エネルギー革命の時代の変遷を概念的に図式化したのが図6です。

18世紀に英国で始まった産業革命によって、製鉄業を中心とした工業化が起こります。同時に生産規模の大型化が進み、エネルギーの需要が大幅に伸びました。

ジェームズ・ワットが引き起こした石炭革命!

 従来の木材を燃料としていたのでは需要に追い付かなくなり、英国内に豊富にあった石炭が注目され、開発が活発化しました*5。

 さらに、ジェームズ・ワットの蒸気機関によって石炭の利用が急速に拡大し、19世紀は石炭の世紀と呼ばれるようになります。つまり、石炭へのエネルギー革命は、産業革命が引き金となったのです。

 そして19世紀半ばに、米国ペンシルベニア州で近代的な石油採掘が開始され、ジョン・ロックフェラーが石油精製事業に乗り出します。

 彼はスタンダードオイルを創設して、近代石油会社の礎を築きました。余談になりますが、スタンダードオイルは、全米の約90%の石油精製事業をコントロールするまで成長しましたが、1911年に反トラスト法により、34社に分割されました。

 そのうち、スタンダードオイル・ニュージャージーとスタンダードオイル・ニューヨークは、それぞれエクソン、モービルに、(両社は1999年に合併してエクソンモービル)、スタンダードオイル・カリフォルニアはシェブロンに、オイルメジャーへと成長を遂げることになります。

その一方で、19世紀後半になると、ガソリンエンジンが発明されました*6。これによって石油の普及が加速し始めます。

ウィンストン・チャーチルが引き金引いた石油革命!

 20世紀に入ると、石油採掘技術の進歩に合わせて、石油の利用も自動車から、船舶、飛行機へと拡大し、人々の移動がより頻繁に、かつ長距離化しました。

 つまり、社会のモータリゼーション・モビリティー化が石油の利用を加速させ、20世紀は石油の世紀となったのです。

 石炭から石油への燃料の主役交代が、20世紀初頭に軍事の世界でも起きた話は有名です。それは、第1次世界大戦直前、ドイツと熾烈な海軍増強競争を展開していた英国で起きました。

 1911年に海軍大臣に就任したウィンストン・チャーチルが、自国のウェールズに良質な石炭があるにもかかわらず石油に目をつけたのです。

 熱量の高さや燃料補給のやりやすさなど、石油の利点を十分理解していたためでした。そして、新しく造船する軍艦をすべて石油燃料に切り替える英断を下したのです*7。

シェルに頼らず弱小石油会社を育てる道を選択!

 石油と国家安全保障が結びつき、石油が国家の戦略物資になった、その最初のマイルストーン的な出来事だったと言えるのではないでしょうか。

 話しが少しそれますが、軍艦の燃料を石油に切り替える決定をしたものの、一滴も国内で石油が採れなかった英国は、石油の調達・供給を、当時から巨大石油会社であったシェルか、弱小のアングロ・ペルシャ・オイル(現BP)のどちらに委ねるか思案していました。

 英国政府は、オランダ資本の入ったシェルへの敵国ドイツの影響を懸念して、最終的にはアングロ・ペルシャ・オイルの株式の51%のシェアを獲得したうえで、20年の長期石油供給契約を結んだのです*7。

 アングロ・ペルシャ・オイルは、その後1954年にブリティッシュ・ペトロリアム(英国石油)に改名します。マーガレット・サッチャー政権による国営企業を民営化する政策で1987年に英国政府が株式を放出するまで、国営石油会社だったのです。

歴史に“もしも”は禁物ですが、もしも、当時の英国政府がシェルと石油供給契約を結んでいたら、今のBPは存在していなかったかもしれません。

石油のシェアが77%を超え、天然ガスの本格普及が始まる!

 話を本題に戻しますと、石油の普及と同時に天然ガスの利用も広がりました。

 1970年代に、2度にわたる石油ショックによる原油価格の高騰によって、石油代替エネルギーの気運が高まりました。そこで注目されたのが天然ガスです。

 また、天然ガスは燃焼時に排出するCO2量が少なく、化石燃料の中では最もクリーンな特性も需要を押し上げました。

 日本でも、1973年に石油が1次エネルギー供給に占めるシェアが77%に達したピーク時から(図2参照)、天然ガスが本格的に普及し始め、石油依存度の低減に貢献してきました。

 日本は天然ガス生産地から遠く離れており、パイプライン輸送が経済的に成立しないため、天然ガスをマイナス162℃にいったん冷却することによって液体にして、特殊タンカーで運ぶLNG (Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)として、天然ガスを輸入しています。

 1969年にアラスカより最初に輸入されて以来、主に発電や都市ガスの燃料・原料として利用され、2007年には約6800万トンのLNGを輸入し、今や日本は世界最大のLNG輸入国となっています。

そして21世紀初頭の今、新しいエネルギー革命が進行中なのです。今回のエネルギー革命は、石油・天然ガスからクリーンエネルギーへの主役交代です。では、今回のエネルギー革命を促している時代背景は何なのでしょうか?

 1990年代に入り、地球温暖化問題が世界的にクローズアップされてきました。1992年に環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)が開催され、その中で地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した気候変動枠組み条約が採択され、1994年に当条約として発効しました。

 そして、気候変動枠組み条約の交渉の最高意思決定機関が、お馴染みの気候変動枠組み条約締約国会議(COP: Conference of the Parties)と呼ばれるものです。

条約は発効したものの、法的拘束力のある議定書にすべきとの流れの中で、1997年に京都で開催されたCOPの3回目の会議COP3で採択されたのが、京都議定書なのです。

京都議定書の歴史的な意義とは何か!

 京都議定書は、2008年から2012年の期間中に、先進国全体でCO2を含む温室効果ガスの排出量を1990年に比べて少なくとも5%削減することを目指し、参加国ごとに、それぞれ一定量の温室効果ガスの削減目標を設定しました。

 京都議定書の発効によって、一般の人々の地球温暖化問題への認識が高まったと同時に、削減目標達成のために、CO2の排出権取引や先進国と発展途上国間で温室効果ガスを削減するスキームであるCDM(Clean Development Mechanism、クリーン開発メカニズム)などの新しい制度が立ち上がりました。

 いよいよ国際社会が、地球温暖化問題解決に向けて具体的に動き出したのです。

 地球温暖化問題が大きな社会問題になり、国際社会が問題解決へ一歩踏み出した一方で、世界のエネルギー需要は増加の一途をたどっています(図8)。

1975年から世界のエネルギー消費は倍増した!

 1975年の世界の1次エネルギー消費量は、原油換算で約57億トンでしたが、2008年には113億トンと約2倍に伸びました。

 特に、2000年以降の中国を中心とした非OECD諸国のエネルギー消費の伸びが大きく、2007年にはOECD諸国と非OECD諸国のエネルギー消費量がほぼ並びました。

 この非OECD諸国に引っ張られる世界のエネルギー消費の上昇トレンドは、今後も継続すると思われます。

 エクソンモービルも、2005年から2030年までの25年間に、エネルギー需要は年率1.5%のペースで増え続け、さらに35%上昇すると予測しています*8。 このエネルギー需要の増加を引き起こすのが、世界人口の増加です。

世界の人口は2000年には61億人でしたが、2030年には83億人、2050年には91億人に増加すると予測されています(図9)。特に人口増加が目覚ましいのは、アジアとアフリカです。

アジアとアフリカの2大陸で人口が爆発!

 それぞれ2050年まで、15億人、12億人の人口が増え、世界の人口増加分の90%は、この2大陸が寄与すると予想されています。

 先ほど紹介した、近年の非OECD諸国のエネルギー増加トレンドと符合します。人口が増えれば、そこに新たな経済圏が生まれ、消費するエネルギーも必然的に増えることになります。

地球温暖化という環境への懸念に加え、将来予想される世界人口の膨張、アジアやアフリカへの経済圏の拡張、それに伴い予測される世界的エネルギー需給の逼迫を背景に、“持続可能な低炭素社会”という、新しい社会のあるべき姿への要求が高まってきました。

 従来の20世紀型社会は、環境を犠牲にしながら、先進国中心の大量生産・大量消費を繰り返してきた社会であり、それを支えたエネルギー源が、石炭・石油・天然ガスといった化石燃料でした。

化石燃料の限界!

 ご承知の通り化石燃料は、燃やせばCO2を排出しますし、供給量の限られた有限の資源であり、さらに我々は2008年に1バレル145ドルの石油価格を既に経験済みですが、将来の価格上昇も予見されます(化石燃料の特徴については、次章で詳しく紹介します)。

 つまり化石燃料は、残念ながら環境性、持続性の両方とも持ち合わせていないのです。

 “持続可能な低炭素社会”が要求する、環境に負荷を与えないと同時に、今後も予測されるエネルギー需要の増加に持続的に対応できるエネルギー源、この条件を満たすのがクリーンエネルギーなのです。

 21世紀型社会へのパラダイムシフトが進行中である今、それに促される形で、エネルギーも化石燃料からクリーンエネルギーへのシフトが進行中なのです。これが、21世紀の新たなエネルギー革が起きている背景なのです。

 では、21世紀のエネルギーの主役であるクリーンエネルギーとは、どのようなエネルギーなのでしょうか。第2部では、その実像に迫ります。

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長岡市バイオマスタウン構想
http://www.city.nagaoka.niigata.jp/sangyou/sinkou/bio-sakutei-kousou.pdf

バイオマスタウン構想分析DB
http://www.jora.jp/biomasstown_DB/PDF/niigata/nagaoka.pdf

2010.11.5 17:18 産経ニュース

新潟県長岡市はすべての生ごみを微生物で処理してメタンガスを発生させ、電力として利用するバイオガス化処理施設を建設する。同市で年間約2万トン発生する生ごみに相当する1日55トンを処理でき、自治体が運営する施設では全国最大となる。平成23年度に着工し、25年7月の稼働を目指す。これにより、温室効果ガスのCO2(二酸化炭素)は年間2000トン、ごみ処理経費は15年間で35億円削減される見込みだ。

 バイオガス化処理施設は同市寿のごみ焼却施設「環境衛生センター」内に建設。生ごみから他のごみを除いた後、メタンガス発酵菌の入ったタンクに入れて攪拌(かくはん)すると、発酵菌が生ごみを3~4週間で分解し、メタンガスガスが発生する。

 このメタンガスの発電量は、一般家庭約1000戸分に相当する年間約410万キロワットアワーで、金額にすると約4600万円。バイオガス処理施設の全電力量と環境衛生センターの電力の半分はまかなえる見通しだ。

 また、バイオ処理後に残った残りカスは乾燥処理などを施し、全量を群馬県にある民間バイオマス発電所に1トン100円程度で売却し、燃料として活用される。

 この事業は民間の資金やノウハウなどを活用するPFI方式で事業者を募集。5グループが参加し、残りカスの全量売却などを提案し、入札価格も最安値だったJFEエンジニアリング(東京都)、越後交通工業(長岡市)など5社のグループが高い評価を得て、施設建設費、稼働後15年間の運営費などを含めて約44億8000万円で落札した。

同市は現在、生ごみを可燃ごみとして週3回収集しているが、施設の稼働時に生ごみのみの収集を週2回に、他の可燃ごみを週1回に変更。介護世帯などで大量に出る紙おむつはどちらでも受け入れ、収集回数を減らさない方針。同市によると、紙おむつを生ごみでも収集するのは全国で初めてという。

 森民夫市長は「バイオガス化処理施設は発電、残りカスの売却と、メリットが多く導入を決めた。可燃ごみの3~4割が生ごみのため、導入後は焼却灰が減り、新しい埋め立て場をつくらなくてすむのも大きい」と話している。

仙谷 由人
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%99%E8%B0%B7%E7%94%B1%E4%BA%BA



スポーツ報知 11月6日(土)8時1分配信

ユーチューブに動画を投稿した「sengoku38」。仙谷由人官房長官(64)を意識しているとみられるが、「38」の意味をめぐって永田町関係者やネットユーザーの間ではさまざまな観測を呼んでいる。

〈1〉「仙谷左派」説 学生時代に全共闘の活動家だった過去から、週刊誌などで「赤い官房長官」などと揶揄(やゆ)される仙谷氏。思想的に「左」と判断し「38」は「左派」と読む説。

〈2〉「仙谷さんパー」説 3を「さん」、8を「パー」と読み、今回の問題で中国人船長を逮捕しながら、処分保留で釈放した外交姿勢を揶揄しているという説。

〈3〉憲法“38”条説 黙秘権や拷問や脅迫などが伴う自白は証拠とすることができない、などの規定がある。責任の所在を那覇地検に押しつけ、衝突事件について「だんまり」を決め込んだという批判のある仙谷氏への当てつけ?

〈4〉中国語ワンパー説 中国語でバカ、愚か者などを意味する「忘八(ワンパー)」から転じて38(サンパー)になったとする説。

〈5〉ルーレット説 米国式ルーレットは00、0を含め1~36の38の数字にチップを賭ける。今回の投稿で「賽(さい)は投げられた」というメッセージ?

〈6〉何の意味もない説 「sengoku」がユーザー登録済みだったため、自動的に候補として出てきた「sengoku38」をそのまま選んだ、という説。

 最初の投稿は4日午後9時ごろ。「sengoku38」は5日午前7時40分にはユーザー登録を削除し、“逃亡”している。国籍は「日本」で年齢は25歳だった。投稿者のコメント欄には「尖閣松涛(しょうとう)事件の真相」とあったが、「松濤」は東京都渋谷区の高級住宅街の地名。「諸島」の変換ミスとみられる。

 ◆仙谷氏「私はユーチューブに投稿しない」
 ○…“犯人”にダシにされた形の仙谷氏本人は、この日午前の閣議後の会見で、投稿者が「sengoku38」というハンドルネームだったことをテレビの報道によって知ったと明かした。「あれっと思った。投稿者がハンドルネームというのを書き込むんだそうですね」とした上で、「私はあんまりユーチューブに投稿したりすることはしておりません」と説明した。

これで韓国、中国に勝てると言うのか!

2010.11.06(Sat)JBプレス 川嶋諭

1月4日の夜、NHKがウィキリークス(Wiki Leaks)の特集を放映していた。湾岸戦争以降、政府の手先と化した米国のメディアに代り、真実を伝えようとする姿に共感を覚えた人は多いのではなかろうか。

権力の監視役から降り始めた大手メディア!

ここまでインターネットが普及して発展を続けている現在、国家による戦争犯罪には目をつぶり、事実を明らかにするウィキリークスの創設者に責任をすべて押しつけようとするかのような米国政府の対応とそれを擁護する大手メディアの言い分には、いささか無理があった。

 企業に当てはめれば、企業犯罪は野放しにしておいて企業の企業内部告発者だけを厳しく取り締まるようなものだ。

 そうした企業が長続きするとは考えにくいし、してもらっても困る。

 さて、国家がひた隠す事実が日本でもネットに流出した。

 11月5日の未明に尖閣諸島での中国漁船による海上保安庁の巡視船への体当たり事件を撮影したビデオが、ユーチューブで白日の下にさらされてしまったのだ。

 ウィキリークスと違い、日本政府の抗議を受けユーチューブを運営するグーグルは約10時間後に同映像を削除してしまったようだが、既にあとの祭。次々と動画のコピーがネット上に出回っている。

 5日朝のテレビ番組は、ほぼこの話題で独占されていた。専門家に映像を細かく分析させて、船の軌跡やエンジンの出力の具合などから、明らかに中国船が意図を持って巡視船へぶつかってきたことを解説している番組がほとんどだった。

 しかし、面白いことに、午後になって夕刊の紙面でビデオ流出の記事を読んでみると、トーンがすっかり変わっていることに気づく。情報がどうして漏れたのか、海上保安庁と検察庁の危機管理問題に焦点がすり替えられているのだ。

 もちろん、中国船がぶつかってきたことは書いてある。しかし、紙面の多くは危機管理のずさんさに移っている。とりわけ、検察庁の不正をスクープした朝日新聞にその傾向は強く見られる。

既に第1報が流れた後で、記事に付加価値を付けたいという記者の心意気は理解できるにしても、そのために物事の本質を見誤ってしまっては本末転倒ではないか。

日本にとっての問題はビデオの流出なのか非公開なのか!

 何しろ、政府は誰が見ても非が中国にあるこのビデオの公開をひたすら拒否し続けてきたのである。ビデオが流出して、なぜ弱腰の外交しかできなかったかの批判が巻き起こるのは避けたい。そのために危機管理の問題に挿げ替えたいのである。

 その意図に丸乗りするような報道では、いくら記事の付加価値を高めたいとはいえ、報道機関の独立性が問われるべきだろう。

 何より、危機管理の問題に挿げ替えることで漁夫の利を得るのは中国である。だとすれば、本当の意味で危機管理が問われるのは政府自身であり、マスコミではないのか。自己弁護のために国益を損ねてどうするのか。

 しかし、そうした本質的な日本の危機管理には現政権にも大手マスコミにも全く弱いようである。将棋や囲碁の世界で言えば、プロなら1手先、2手先どころではなく、10手先、20手先を読んで当たり前なのに、1手先を読むのにも汲々としているようにしか見えない。

 国益を損ないたくないなら、言葉巧みな後講釈は要らないから、とにかく命を懸けて外交に取り組んでほしいものだ。それにしても、今回流出したビデオのような内容をなぜ頑なに公開できなかったのか。国民は完全にバカにされているとしか思えない。

40年前の亡霊が指揮を執っている日本!

 そんな政府の実態をはっきり示してくれたのが今週のこの記事「理想を失った全共闘の亡霊が日本を迷走させる」である。

 政府を引っ張る菅直人首相と仙谷由人官房長官は、いわゆる全共闘世代と呼ばれる団塊世代に属し、お2人ともご他聞に漏れず学生時代は学生運動のリーダー的な存在だった。

 しかし、ヘルメットに角棒、目の下から顔を覆い尽くすマスクは似合わなかったようである。筆者の池田信夫氏は次のように書く。

彼らは全共闘世代と言われるが、正確に言うと菅氏は全共闘ではなく、東京工業大学で全学改革推進会議という組織を設立し、穏健派の学生運動のリーダーだった。他方、仙谷氏の所属したのは東大のフロント(社会主義同盟)で、こちらも議会を通じて構造改革を進めようとする穏健派だった」

 「何万人という活動家が、逮捕歴などの前科のために就職できず、自営業・弁護士・フリーライターなどの仕事に就いた。テレビの制作プロダクションや編集プロダクションを創立したのも、元全共闘の闘士たちだった」

 「それに対して菅氏や仙谷氏のような穏健派は、社会党などの政党に入って議会によって社会を変える道を選んだ」

 多くの全共闘の闘士たちが、いわゆる「転向」によって企業戦士になったり、転向しないまでも革命の意識は持ったまま手段として全く別の道を歩み始めた中で、穏健派である彼らは学生時代の理想を追い続けられたと言うのである。

40年前とは様変わりした日本でかつての理想を追い続ける愚!

 しかし、彼が学生であった40年前と今では住む世界が全く違ってしまっている。タイムマシーンに乗って40年前の過去から突然現れて政権の座についたようにお見受けするお2人には、このギャップがよくお分かりになっていないようである。

 池田氏は次のように指摘する。

社会主義的な思考様式が如実に現れるのが情報統制だとすれば、尖閣諸島におけるビデオをあくまで非公開にしたい理由も分かろうと言うものだ。自らは改革の英雄的戦士気取りで、国民のことは鼻からバカにしているのだろう。

言葉巧みな弁護士に政治を任せていいのか!

 そして、この40年の間に様変わりしてしまった日本をどのように変えなければならないか、そのうえで外交をどのように繰り広げなければならないかという基本的な理念が全くないか、時代遅れで完全に錆びついてしまっている。

 日本にとってさらに悪いのは、改革が必要なこの日本を言葉だけは極めて巧みな弁護士に任せてしまっているという事実である。仙谷官房長官だけではない。今の日本の政治家にいかに弁護士出身者が多いことか。

 例えば、自民党の谷垣禎一総裁も団塊世代に属する弁護士であり、社民党の福島瑞穂党首は、団塊世代より若いものの、仙谷氏や谷垣氏と同じ東大法学部を卒業した弁護士である。彼らの頭の中にはどうも目の前の勝ち負けしかないようである。

 池田氏が指摘するように、彼らは雇用を守るために派遣労働を簡単に規制してしまう。消費者金融に対する規制強化もこの延長線上にある。

 消費者を守るという大義名分の下、それが日本経済にどんな影響を被るかはお構いなしである。回りまわって結局は消費者を苦しめることなど全く分かっていないにもかかわらず、誰もが反論できないよう言い回しには磨きがかかっている。

どこまで役人を敵に回せば気が済むのか、事業仕分け!

 また、民主党が繰り広げる事業仕分けで、弁護士出身の代議士などが官僚をやり込める姿は確かに見ていて溜飲が下がるが、果たしてこの方法で日本のムダ遣いは本当になくなるのだろうか。官僚との対決姿勢は法廷劇のように絵にはなっても官僚たちの反発は必至である。

 もしコスト削減の実効を上げたいなら、官僚たちに自らコスト削減を考えさせ実行させる仕組み作りが重要だろう。この後も毎回のようにこのような法廷劇を繰り広げ役人たちを敵に回し続けるつりなのだろうか。

 今の日本は、木を見て森を見るような近視眼的な政策で立ち直れるような状況にはない。そんな政策ではむしろ、奈落の底に突き落とされる危険性がある。

 詳しくはここでは紹介できないが、近々に弁護士出身の代議士たちが知らず知らずのうちに犯してしまっている大きな問題を取り上げるつもりなのでぜひお読みいただければと思う。



 「かつて反体制に生涯を捧げる決意をし、資本主義を打倒して労働者の理想社会をつくるはずだった彼らの目的は、とっくに失われた。かといって自民党のように、あからさまに資本主義を擁護する政党にはなれない。ただ集票基盤が労働組合であるため、かろうじてその既得権を守るという利害関係だけでつながっている」

 「だから菅氏の行動が定まらないのは、もう目指すべき理念がないからなのだ。他方、仙谷氏は人権派弁護士としてアジアへの戦争責任を追及した頃の行動様式が抜けない」

 「どちらも社会主義的な思考様式が残っているため、雇用を守ると称して派遣労働を規制するなど、市場経済のロジックが身についていない」


今週の2本目はこの記事を紹介したい「韓国に絶対勝てない日本、理由は教育にあり」。

「韓国に絶対勝てない」に批判続出!

 「韓国には絶対勝てない」という表現が厳しすぎたようで、多くの読者の方々からご批判をいただいた。しかし、少なくともこの記事に書いてあるように英語とディベートで勝負できる人材を輩出するという意味では、もはや韓国に勝てなくなっているのは事実だろう。

 前にこのコラムの「日本が目指すべきは、大国かそれとも小国か」で書いたように、国内市場の小さい韓国は小国としての道をはっきりと意識している半面、日本は引き続き大国を目指すのか、それとも小国の取るべき戦略も取り入れるのかがはっきりしない。

 その戦略の差が教育現場ではっきりと現れてしまっている。日本のバブル経済が弾けるまで徹底的に日本を研究して日本的手法を取り入れてきた韓国は、日本の挫折を見せつけられ、グローバリゼーションに大きく舵を切った。

 その時に英語教育も根本から変えていった。日本と同じように自国語で英語を教えるのをやめ、米国や英国で母国語を教えるように英語を教えるように切り替えていったのだ。

 その効果はてき面だったようだ。この記事で筆者の福原正大氏は次のように書く。

英語力では、日本の大学生は韓国の中学生に勝てない!

 「韓国では幼稚園の頃から英語を学ばせ始め、中学校が終わる頃には海外大学留学時に必要なTOEFL iBT試験で、日本のほとんどの大学生が出すことができない100点超えがゾロゾロいるのである」

 もちろん、英語能力だけで学力を判断するのは間違っている。また激しすぎる教育熱は様々な問題を韓国経済の中に引き起こしている。

 この記事の中にも不幸なギロアッパ(妻子を欧米に留学させてせっせと学費を送る父親)の姿が描かれているが、この記事「国から逃げ出し始めた韓国人?」でも、超格差社会になっている韓国の悲惨な状況を指摘した。

 日本が韓国と同じような問題を抱えてもらってほしくない。しかし、だからと言って、日本の優秀な学生たちが世界の中で韓国の学生たちに全く歯が立たないようでも困る。

日本が相変わらず大国を目指すのであれば、一部の学生にはグローバリゼーションの中で徹底的に自分を磨いてもらい、韓国や中国だけでなく、欧米の優秀な学生とも互角にわたり合い、競り勝てるだけのしっかりとした教育環境を整える必要があるだろう。

 一方で、そうした学生とは別の価値観で日本の優れた文化や伝統、そして科学技術などを生かせる環境を整えたい。大国としてはそうした一流のダイバーシティーが必要なのではないだろうか。

 今週の3本目は英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙とエコノミスト誌による中国についての記事を紹介したい。

 FTの「中国経済の奇跡を脅かす人手不足と花嫁不足」は、中国の一人っ子政策が今後、中国の経済発展に深刻な影響を与えるだろうという記事である。

 またエコノミスト誌の「中国は世界経済にとって不可欠か?」は、景気低迷にあえぐ先進国を横目に「世界の工場」として、また「世界の胃袋」として急成長を遂げ、世界経済の中で重要な役割を演じ始めた中国が、本当に世界経済の救世主となれるのるかという問題提起をした面白い記事である。

中国は先進国が期待するほど恩恵をもたらしてくれない?
 まず、FTが示しているのは、中国の一人っ子政策が今後、中国経済の奇跡的発展に大きなダメージを与える可能性があるという点だ。今後は急速に少子高齢化社会を迎え、一気に高度成長の歪が吹き出す危険性があると指摘する。

 先進国が期待しているほど世界の工場にも世界の胃袋にもなれないのではないかと見るのである。それは、中国が一人っ子政策をやめたとしても同じだろうとも言う。

 急速に豊かになりつつある中国では、一人っ子政策をやめたとしても子供を1人以上作りたいと願う人が極端に減っているというのだ。例えば、一人っ子政策をずっと従順に守ってきた山西省翼城県では25年前に子供を2人持てるような制度に改めた。

 ところが、とFTは書く。

 「意外なことに、翼城県の出生率は中国のその他地域よりも若干低いのが現状だ。ある報告書によれば、実験を行った25年間の人口増加率は20.7%で、中国全体の増加率を5ポイント近く下回っている」

つまり、たとえ一人っ子政策をやめたとしても、中国の少子高齢化は全く改善できないというわけである。高度成長の裏で急速に所得格差が広がっている問題と並んで、中国の将来を危うくするのではないかと指摘するのだ。

世界の石炭消費の46%を占める中国だが・・・

 一方のエコノミスト誌は、今や深刻なデフレへの懸念が広がっている米国に代って世界経済の牽引役として期待されている中国の実力が、どれほどのものかを具体的に検証した記事である。

 結論から言えば、先進国は中国に期待しすぎているということになる。確かに中国の消費や生産を数字で見ると大きい。エコノミスト誌は次のように書く。

 「中国は2009年に世界の石炭消費量の46%を占め、亜鉛やアルミニウムでも、同程度の割合を消費したという。また、2009年の中国の粗鋼消費量は、欧州連合(EU)、米国、日本を合わせた消費量の2倍に上った」


 「昨年は中国国内の自動車販売台数が米国のそれを追い抜いた。投資銀行のチャイナ・ファースト・キャピタルによれば、今年は中国国内の携帯電話販売台数が、同国を除く全世界の販売総数を上回りそうな勢いだ」

 しかし、中国との貿易で潤っている国々にしても、実はその影響はそれほど大きくないのではないかと指摘する。例えば、国内総生産に占める中国への輸出の割合である。

中国経済への過大評価は禁物
 「輸出はGDP(国内総生産)を構成する1つの要素に過ぎない。どのような経済規模であれ、ほとんどの国にとっては、国内消費の方がはるかに重要だ。このため、GDPに占める対中輸出の割合は、オーストラリアで3.4%、日本で2.2%、南アフリカで2%、ブラジルで1.2%にとどまっている」

 そしてエコノミスト誌は、1980年代に急成長著しかった日本と比べている。

 「1990年代初頭の日本が世界のGDPに占める割合は今の中国よりも大きかったが、1990年代前半に日本の成長が5%から1%に減速しても、世界の動向にそれと分かるような影響は及ぼさなかった」

 リーマンショックから立ち直れない先進国は、ついつい中国に活路を求めようとするが、実は中国はその期待に沿えるほどの存在ではないかもしれないというのである。

 尖閣諸島の問題でも日本政府は腫れ物を触るように中国に対応しているが、それは日本経済にとって深刻な影響を考えてのことだろう。しかし、過大評価は禁物だということをFTもエコノミスト誌も示している。


16大綱のあと、国際情勢は大きく動いた!

 現在の16大綱(注:「16」は平成16年の意)、すなわち「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」は、2001年9月11日の「米国同時多発テロ事件」以降の急変した国際情勢を背景に政府が閣議決定した。国際テロ組織などの非国家主体が、世界の安全保障態勢に対する重大な脅威となった。アフガニスンやイラクにおいては、宗教や民族などの要素も密接に絡んだ、解決の糸口がみつからない紛争が多発している。

 また弾道ミサイルや大量破壊兵器の拡散、北朝鮮の核実験など、新たな課題への対応が求められるようになった。加えて、環境破壊による地球温暖化現象・異常気象や大規模災害・地震多発、東南アジアや中東地域における海賊の跋扈(ばっこ)、新型インフルエンザをはじめとするパンデミック(全世界的流行病)など、より身近に脅威や不安定要素を実感するようになった。

 中国の急激な経済成長は、同時並行的に軍事力の増大・近代化を促進した。その結果、海洋権益に対する積極的な挑戦が近隣諸国に不安を与えている。

 さらに、一極支配を維持してきた米国はイラクやアフガン紛争に足を取られ、世界への影響力を相対的に減衰させている。財政事情の悪化がそれに拍車をかけている。

 ロシア、インド、ブラジルなどの経済的・軍事的な国力増大は世界を多極化に向かって進展させている。

 このように最近の東アジア・西太平洋情勢は複雑さと先行きの不透明さがいっそう加速している。特に中国の覇権拡大はこの地域の安全保障に大きく影響し、当面この傾向は継続するであろう。


富国強軍を推し進める中国軍!

 中国の軍事力の脅威について、日本・東京よりも地球の反対側に位置する米国・ワシントンの方がはるかに強い危機感を持ってとらえている。軍事情報の多くを米国に依存せざるを得ない日本が、“二番煎じ”に甘んじなければならない現実の結果であろう。日本国民には、台湾海峡、南シナ海、東シナ海、インド洋など、わが国にかかわる地域海域の軍事情勢が「遠い所」の問題としてしか映っていない。

 中国軍の増強近代化は、改革開放政策による経済成長に伴って急速に進んでいる。最近では、経済の伸びよりもはるかに高い軍事費の伸び率を示していると言われている(平成22年防衛白書)。特に、宇宙、空軍、海軍、ミサイル、サイバー戦などの能力は、2005年以降に急速に充実してきた。中国は、「富国強軍」の国家目標を堅持しており、2007年10月の中国共産党大会で胡錦濤主席が改めて確認した。


第2列島線から米海軍を締め出す戦略を遂行!

 中国は「軍事力の及ぶ範囲まで防衛する」という軍事ドクトリンを持っていると言われている。21世紀に入って「近海防衛戦略から外洋積極防衛戦略」に転換した。既に、いわゆる第1列島線(日本列島・沖縄・台湾・フイリピンを結ぶ線)以内の黄海・東シナ海・台湾周辺海域・南シナ海の防衛区域を固めている。これに続けて、第2列島線(小笠原列島・マリアナ諸島・南太平洋を結ぶ線)までの西太平洋において米空母機動部隊などの近接を阻止するとともに、同海域の海上優勢および航空優勢を確保する戦略を立て、態勢を確立しようとしている。

 海軍を例に取ると、中国の第2世代の戦略原子力潜水艦である「晋」級は、2010年以降5年間に5隻が就役する見込みである。晋級は弾道ミサイルの発射装置を持つ。「商」級の原子力潜水艦も2006年以降戦列に就く予定だ。「元」級、「宋」級、および「キロ」級の在来型潜水艦に対しても静粛性などの戦術能力の近代化を進めており、2004年以降、就役艦数が急速に増えている。

 最新の「旅州」級ミサイル駆逐艦は2006年に1番艦「瀋陽」が就役した。「旅洋」級イージスミサイル駆逐艦と「ソブレメンヌイ」級ミサイル駆逐艦は、2004年以降、近代化システムを追加するとともに、数を増やしている。

 また、「江凱」型フリゲイト艦は新装(外観は旧型と同じであるがコンピューターや電子機器などを新しくしている)なって2008年に4隻が就役した。

 このように2000年以降、90年代までの旧式装備を整理。かつロシア技術から電子技術をはじめとする西欧技術に転換することで、新装備の艦船を集中豪雨的に増やしている。

南シナ海の権益確保を武力で確保!

 南シナ海は海上運輸のチョークポイントである。わが国にとってのみならず、中国、韓国、台湾、フイリピンのほか米国などの太平洋諸国にとって重要なシーレーンが通る。周辺には、中国、台湾、フイリピン、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、ベトナムなどの国が島嶼と領域においてせめぎ合っている。1970年代にアジア極東経済委員会(ECAFE)が海底調査を実施して、豊富な石油埋蔵の可能性を発表して以来、これらの国々がこの海域の島嶼の領有を主張し競っている。

 1992年に米軍がフイリピンから撤退した直後から、南シナ海の混乱が表面化した。特に中国は、南シナ海の全域を囲い込む領域を軍事力を持って領有することを1992年の領海法(注:これは中国の国内法)で明記。最近は、南シナ海を「核心的利益」として、台湾、チベット新彊ウイグル地区と同等に位置づけ、強硬な姿勢を示している。

 ベトナム、マレーシア、インドネシアは、それぞれの領域での不法操業を理由に中国漁船を拿捕した。しかし、中国が軍艦を派遣し恫喝したために、釈放せざるを得なかった。中国は現在、海軍艦艇を南シナ海の哨戒に当てて、中国漁船に独占的に操業させている。


プーチンの大統領就任で復活したロシアの軍事力!

 ソ連崩壊後のロシア極東の軍事力はプーチンが大統領に就任するまで、財政難で兵士の給料が十分に支払われず、また装備の更新も修理もままならない状況だった。ウラジオストック港内で朽ち果てた原子力潜水艦の映像がテレビで放映されるなど、その活動そのものが休眠状態であった。

 しかしプーチンによる国家財政の立て直し、とりわけ石油・天然ガスの開発と価格高騰に助けられて経済が回復すると、ロシアの軍事力は復活した。中露国境の安定が定着すると、近代化された軍事力を行使して、周辺への影響力を積極的に顕在化させている。グルジア紛争やチェチェン紛争はその一例だ。最近では、日本周辺海空域における偵察行動も活発化させている。また、戦術核戦争を想定した大規模な軍事演習も極東で行っている。今年8月には北方領土を含む千島列島・オホーツク海・樺太でも演習を実施し、領土返還を求めるわが国に対して示威行為を強めている。


核とミサイルで大国を翻弄する北朝鮮!

 金正日の北朝鮮は、国民の生活をないがしろにしてまで軍事優先の政策を取ってきた。特に、核開発および弾道ミサイルを開発することにより、政治的には米中露韓および日本の5カ国を振り回している状態である。軍事を後ろ盾にした独裁国家の存在は、「不気味で何をしでかすか分からない」という脅威感を周辺国に与えている。

 大量破壊兵器の開発・生産と輸出によって、大国である米国を翻弄。韓国をはじめとする周辺国から経済的支援を獲得する外交手腕はしたたかで「暴発と混乱」を武器にしているとも言える。韓国海軍の哨戒艦「天安」撃沈事件は、国際的に大きな批難を浴びたものの結局は「不問」の形で収まりつつある。

 北朝鮮は、金正日主席の後継者に息子の金正恩を据えて注目が集まっている。後継問題は、朝鮮半島の将来に不安と混乱をもたらす。いずれ来るだろう体制崩壊によって大きな影響と負担を強いられるのは、韓国、中国および日本であることは間違いないであろう。


米国の軍事力は相対的に低下しつつある!

 米国は、依然として世界の大国であり、政治力、経済力、軍事力において絶大な影響力を持っている。中国の国力の成長が現在のペースで続いても、見通しできる将来において米国を越すことはできないだろう。

 しかし、冷戦構造が崩壊し、ソ連に勝利して一極支配を確立したのも束の間、多くの新興国の台頭、民族や宗教の対立を原因とする紛争要件が重なって、米国は新たな課題を突きつけられている。自由と民主主義を国是とする米国が世界に関与することは、次第に反発や抵抗を生んだ。それにいちいち対応してきた米国は、経済的にも軍事的にも疲労が蓄積している。

 9.11同時多発テロ事件以降の米国はその傾向が顕著だ。中国やインドをはじめとする「発展途上国」の追い上げと経済的・軍事的圧迫により、相対的に国力を低下させた。イラク戦争以来の紛争に関与・介入してきたため、その負担は米国の財政を大きく圧迫している。


世界中に軍隊を展開・配備しつつ、米国本土の防衛にも大きな力を割かなければならない状況は、米国にとって建国以来初めての経験である。今や米国は、同盟国の支援・協力を強く期待するまでになった。

 米国にとって、世界の安定、とりわけ中東および東アジアの安定と安全は重要である。米国としては台頭してきた中国経済への依存度を深めながらも、東アジア・西太平洋における覇権を求める中国の軍事力に対しては、断固とした対応を維持しなければならない。特に、自由と民主主義を共通の価値観とする同盟国の安全保障と立国条件である海洋の自由を確保するために、これからも強力な軍事力と海外基地の確保に固執するだろう。


中国がもたらすグローバルコモンズへの脅威!

 これまで、日本の周辺国が16大綱以降どのように動いてきたいか概観した。これからは、こうした動きが日本の安全保障にどのように影響するか、みていく。

 海洋、航空、宇宙、サイバー空間は、人類にとって共有の財産である。これらの公共財(グローバルコモンズ)に対して強い影響力を持とうと目論む脅威が現実化している。先に述べたように、西太平洋への関与来援に対して中国は、非対称な軍事戦略を持って第2列島線以西の軍事的優勢を確保しようとしている。日米同盟の下、共同作戦によって侵略を排除することを基本としているわが国にとって、これは大きな脅威である。国際的ルールが確立、または確立しようとしているグローバルコモンズの自由な利用と利益の共有が、例えば国連海洋法条約のEEZの権益を拡大解釈する中国のルールの下に置かれることになれば、わが国をはじめ多くの国が不利益を被ることになろう。

 既に南シナ海において、軍事力によって海域を一方的に占有している。同様の動きが、尖閣諸島に対する領有権の主張など、東シナ海にも及びつつある。

 宇宙においては、衛星破壊兵器の開発を進め、宇宙における軍事的優勢の獲得に手を伸ばしている。さらにサイバー戦の分野においては世界で主導的な能力を持ち、実際にわが国や米国に対してサイバー攻撃を実施したとされている。中国における米企業Googleに対するサイバー攻撃は、その実力の程を顕在化させたと言える。


南シナ海で成功した手法を東シナ海で展開!

 海洋における覇権を確立しようとする中国の目論見は、南シナ海で着実に成果を上げている。その手法を、東シナ海においても適用しつつある。すなわち、まず、1)多数の民間漁船によって不法操業を繰り返す。相手国が拿捕や取り締まりを実施すると、「漁業保護」を目的に軍艦を派遣する。2)島嶼の不法占拠。3)島嶼の領有宣言、4)漁業拠点のインフラ整備、5)軍事占領。こうしたステップを踏んで実効支配の実績を内外に示す。同時に、海洋資源・海底資源の調査・探査・採掘を行う。

 もともと日中間には領土問題は存在しなかった。だが、1969年に年アジア極東経済委員会(ECAFE)が東シナ海の石油、ガス埋蔵の可能性を発表すると、中国は尖閣諸島の領有を主張した。ちなみに台湾もこの時期に尖閣諸島の領有を主張し始めた。1978年10月?小平副主席副主席(当時)が訪日したときに提案した「尖閣問題棚上げ論」を、日本政府が明確に拒否できなかったことが今日の係争につながっている。

加えて今年の5月に鳩山由紀夫首相(当時)が「尖閣諸島の領有について未解決」という不用意な発言をしたことによって、中国を勢い付かせている。

 今日、尖閣諸島海域において160~250隻の中国漁船が不法操業していると報道されている。不法操業した中国漁船を海上保安庁が拿捕し、船長の身柄を拘束したことに対して中国政府の反発が激しいのは、中国共産党への不満や反発に沸く国内世論をかわす狙いもある。したがって、恫喝外交の性格を持っていると言えよう。そしてその恫喝に屈した形で船長を釈放した日本政府の外交に、国内はもとより日本に期待する東南アジア各国に落胆と不安を与えてしまった。同時に中国は、強圧に弱い日本を見下し、さらなる覇権を加速追求することになろう。

分岐点にある中国:責任あるステークホルダーか? 国際ルールの破壊者か?

 中国の資源およびエネルギー獲得のための世界戦略はしたたかさを増している。アフリカ、中東、中南米、オセアニアなどの資源・石油産出国との外交関係を緊密化させ開発支援を行っている。これらの資源の輸送を海運に全面的に頼らなければならない中国にとっても、シーレーンにおいて自由と安全と安定を確保することが望ましい。しかし現実は、シーレーンの通る沿岸国やホルムズ海峡、マラッカ海峡などの沿岸国の政情不安や治安悪化によって常に脅かされる脆弱性を持っている。

 このため中国は、自国のシーレーンを確固たるものにするために、インド洋沿岸国との関係醸成に努めており、「真珠の首飾り」と呼ばれる施策を進めている。パキスタン・スリランカ・バングラデイッシュ・ビルマ・南シナ海に資本を投下し、港湾を整備・確保する取り組みだ。このような広範囲の拠点は、中国がシーレーンの安全を安定的に確保するのに大きく寄与するだろう。これらの港湾拠点は、経済的支援からやがて中国軍艦などが進出する拠点になる。各国と政治的・軍事的な結びつきを強めることで、中国は米国と競合することになろう。

 中国はいま、分岐点にあると言われている。日米ともに期待する「責任あるステークホルダー」として国際ルールに順応して穏やかな競争社会を形成する一国になるのか? それとも、“中華帝国”を復興し中華モデルの強い影響力を行使する国家になるのか?

 後者の道を選択した中国は、わが国および欧米が中心となって発展させてきた国際的なルールとの対立を激しいものにしていくだろう。特に、台湾の統一に武力を行使する事態になった場合には、わが国の南西諸島およびその周辺海域が大きな影響を受けることは確実だ。日米同盟において日米両国間のへだたりが大きくなった場合には、尖閣諸島のみならず宮古島、石垣島などの先島諸島も中国による軍事的影響にさらされることが予想される。


北朝鮮はもちろん、韓国とロシアにも油断はできない!

 北朝鮮の軍事力増強は、何をするか意図が不明で、かつ同国が突発する性向であることが大きな脅威である。わが国は、日本海側の諸施設に対する拉致、テロやゲリコマなど工作活動や弾道ミサイル発射事案を既に経験している。核兵器の使用を含む恫喝外交は、65年間戦争の経験が無く繁栄を享受してきたわが国にとって、少なからぬ不安と混乱を与えている。

 韓国およびロシアとは、総じて緩やかな緊張状態のまま、今後も関係を継続するだろう。しかし、北方領土と竹島が不法占拠されたままの状態は、正常な関係とは言い難い。特に竹島は、何かにつけて韓国ナショナリズムの高揚につながり、対日意識が先鋭化する際の主たる材料になっている。

 北方領土についても、危険な事態が内在していると考えられる。今年9月2日に、ロシアが「対日戦勝記念日」の式典を開いた。これに伴い同国民の間では国防意識が高揚した。一部には、「日本軍が北進して北方領土を取り戻しに来る」と危機感を煽る動きもあった。


新しい脅威:テロ、パンデミック、海賊、大規模災害!

 国と国との間にある経済格差の拡大、民族・宗教の対立、地球温暖化、グローバル化などの影響は、テロやパンデミック(全世界的流行病)、大規模災害などの姿なき脅威が容易に国境を越える機会を多くしている。海賊の活動も、ソマリア沖アデン湾、ペルシャ湾、マラッカ海峡、南シナ海、と広域において多発している。その手段は蛮刀から高性能武器、情報ネットワークなどの高機能手段まで多様であり、その実態の把握もままならない。

 以上、国際情勢における今後10年間の概観を予測しきた。しかし、わが国の将来についての不安感・不透明感を拭うことはできない。かつて、中国の李鵬首相が「40年後には日本は無くなっているかもしれない」と発言したことが報じられた。中国をはじめとする周辺国が、軍事力を背景に厳しい国際情勢を生き残り、発展していこうとするパワーポリテイックスの世界にあることを考えると、新しい防衛計画の大綱は、単なる政治的ジャスチャーで終わらないでほしいものである。

参考資料
1 平成22年度防衛白書 (防衛省)
2 2009、2010海上保安レポート (海上保安庁)
3 新「防衛計画大綱」への期待 「軍事研究」2010年9月号
4 「中国の外洋艦隊!活発化する海外作戦の狙い」 「軍事研究」2010年8月号
5 「日の丸原潜を考える」 「世界の艦船」2010年2月号
6 「安全保障と防衛力に関する懇談会報告書」2009年8月
7 「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想」2010年8月


古澤 忠彦(ふるさわ・ただひこ)
ユーラシア21研究所研究員。1964年防衛大学校を卒業後、海上自衛隊入隊。護衛艦艦長・隊司令、統合幕僚会議事務局長、舞鶴地方総監、横須賀地方総監を歴任、海将。1998年に退官。


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