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人口は7000万人に/青森・島根・長崎などには子供がいなくなる/大阪・兵庫には高齢者が集中/水道は維持不可能に!鉄道は廃線! 学校・病院はなくなる!/韓国・中国でも同じ問題が!

2010年12月08日(水) 週刊現代

 あなたの住んでいる町に、最近少しずつ変化が現れてはいないだろうか。その変化が一時的なものかどうか、この記事を読んで考えてみてほしい。それは人口減少が始まった兆候かもしれない---。

 発行部数160万部を誇る、伝統ある経済誌『The Economist』11月20日号では、「A special report on Japan」と題した日本特集が組まれた。同誌で日本特集が組まれるのは約5年ぶりのことで、その内容は「未来の日本はどうなるか」。読めば読むほど気持ちが沈みこむシリアスな分析が並んでいるが、そこに描かれた暗い未来は、すべて日本の「人口問題に起因している」と書かれている。

 この特集の取材・執筆を担当した、同誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏が語る。

「昨年の政権交代によって、日本が今後どのように変わり、どんな問題に悩んでいくのかを描き出したいと考えていました。ところが、取材をすればするほど、これからの日本が直面する問題は、『高齢化』と『人口減少』によって生じるということがわかってきたのです。これは日本にとって極めて深刻なことです」

 来年2月に最新の国勢調査の結果が示されるが、これによって日本は2010年度から本格的な「人口減少社会」に突入したことが明らかになる。だが、これが日本を滅ぼしかねないほど深刻な問題だという認識が、国民の間で共有されているとは言いがたいのではないか。

『The Economist』誌に見られるとおり、世界は日本の危うい未来に視線を注いでいる。気づいていないのは、われわれ日本人だけかもしれないのだ---。

これから100年減り続ける!

 近い将来、日本の人口はどのくらい減るのか。総務省の統計および「国立社会保障・人口問題研究所」が作成した推計によると、人口のピークは'04年12月の1億2783万人。その後は年々減り続け、'09年現在で1億2751万人。これが2030年には1億1522万人、'50年にはついに1億人を切り、'70年代に、日本の人口は7000万人を割ると推計されている。人口問題研究所国際関係部第3室長の石井太氏が語る。

「すでに地方では人口減少が始まっていますが、'25年からすべての都道府県で減少が始まります」

 もちろん、先の数字は「現在予測される出生率で推移すれば」などの条件での推計であるから、改善される可能性はある。ただし、政府と国民がどれほど真剣に出生率向上に取り組んだとしても、劇的な効果は現れない。人口問題の専門家である上智大学教授・鬼頭宏氏はこう指摘する。

「かりに今年出生率が上がって『2』を超え、その状態が続いたとしても、人口減少が止まるのは2080年という試算が出ています。実際にはもっと時間がかかるはずで、2100年になっても減少が止まるかどうかわからないのです」

 人口減少は都道府県別に見ると、その事態の深刻さが浮き彫りになる。'05年の人口と、'35年の推定人口を並べてみよう。

 北海道は562万人から441万人、青森は143万人から105万人、奈良は142万人から110万人、和歌山は103万人から73万人といったように、数十万人単位で人口が減っていく都道府県がボロボロと出てくるのだ。

 四国4県(徳島・香川・愛媛・高知)は特に減少率が高い。'05年の4県の合計人口408万人が、'35年には314万人と推計されている。つまり、現在の四国の人口の4分の1が、'35年には消えているということになる。

 さらに日本では、人口減少と同時にもうひとつの問題が同時に発生する。高齢者人口の急速な増加である。右の図は、15~64歳の人口(生産年齢人口)と、65歳以上の人口(高齢者人口)の推移を比較したものだ。政策研究大学院大学教授の松谷明彦氏が解説する。

「この推計によるなら、2055年には国民の40・5%が高齢者になります。これは人口減少以上に深刻な問題です。生産年齢人口が減って、高齢者が激増するということは、現役世代が負担する社会保障費も大幅に増やさざるをえなくなるということであり、現在の福祉制度は成り立たなくなります」

 人口問題研究所によると、25年後、日本の4割以上の市町村で、高齢者の割合が4割を超えるという。すれ違う人の二人に一人は高齢者で、幼い子どもが歩いているのを見たら、「今日、子どもを見たよ」と話題になる。そんな町があちこちに出現するのだ。

 人口減少と高齢化---この二大危機に、同時に襲われるニッポン。近未来のこの国の姿は、いったいどんなものになるのだろうか。もう「気づかないフリ」は許されない。

水道水の需要が半減する!

 近年、自治体の首長選挙では「人口減少をどう食い止めるか」が大きな争点になり始めている。去る11月21日に投開票が行われた尼崎市長選(兵庫)、室戸市長選(高知)、長井市長選(山形)。立候補者は、いずれも「人口減少対策」を公約の柱の一つに掲げて戦った。富山県小矢部市は、テレビで市への転入を促すCMを放映するなど、市町村レベルでは、人口減少は「いま、そこにある危機」として迫っている。

 程度の差こそあれ、人口減少は、ほぼ例外なくすべての自治体を襲う。そうなったとき、われわれの生活はどうなるのか。ある研究者は「日本中で長崎県の離島のような自治体が発生する」という。

 長崎県の島々からなる、五島市・新上五島町・壱岐市・対馬市の3市1町では、この10年間で約15%、2万3000人の島民が姿を消した。これによって、長崎県・上五島では、島と本土を結ぶ上五島空港の定期便が'06年に廃止された。人口約3000人の奈留島では、来年3月に、島内に唯一あった地銀支店の閉鎖が決まっている。

 生活に欠かすことのできない交通手段や金融機関が、人口減少によって次々と消滅していく。これが、近未来の自治体の姿なのである。銀行も、交通手段もない町---たとえば、普段何の気なしに使っているインフラも、「当たり前」のものではなくなっているかもしれない。水道もそのひとつだ。

 いま、水道業界では「2040年問題」が首をもたげている。現行の水道事業が、人口減少のせいで維持できなくなる可能性があるというのだ。東京都の水道局員が説明する。

「水道配水管は40年が法定耐用年数で、それ以上使用するときには、漏水や濁水を防ぐための補修作業をしなければなりません。

 この補修も含めて、水道事業には莫大な予算がかかります。その費用は水道料金で賄ってきたのですが、全国で年々水の需要が減っており、人口減少が進んだ2040年には、需要が現在の約半分ほどになると予測されている。そうなると、水道事業収入も、現在の半分ほどになってしまいます。配水管の法定耐用年数がくれば補修をしなければならないのですが、その費用が捻出できなくなる恐れが大きいのです」

 実例を示そう。昨年4月、静岡県熱海市は、漏水事故を防ぐための維持費が捻出できなくなるとして、水道料金を9%値上げした。高齢世帯には、この数字が重くのしかかってきている。さらに人口が減って自治体の水道事業収入が減少すれば、値上げでも対応できなくなる日が来る。

「水道からは濁った水が流れはじめ、最悪の場合、水道水が利用できなくなる自治体が出現する可能性もある」と前出の局員は指摘する。

 市民の足である鉄道も、人口減少の影響をもろに受ける。「人口が減れば、満員電車がなくなるからいい」といったノンキな発想は、もう止めたほうがいい。人口減少社会においては、電車そのものがなくなってしまうかもしれないのだ。

 今年度、関西・中国・四国の鉄道会社が相次いで赤字報告を出し、鉄道関係者に衝撃を与えた。JRをのぞく中国地方の鉄道会社の'10年3月期決算報告では、10社中9社で輸送人員が前年度を下回り、7社が減収(うち4社が赤字)。さらに、関西私鉄大手の同期決算では、3社が減収減益を発表。来年3月期も運輸収入は減少の見込みだという。

「新型インフルエンザの流行や景気低迷も大きな原因ですが、人口減少という構造的な問題が影響しています。まず、通学で電車を利用する学生が減り、定期券収入が落ち込んだ。さらに、高齢者が増えるほど、移動圏が狭くなり、電車を利用しなくなる。駅員の数を減らしたり、特急の数を減らしたりと対策を講じなければなりませんが、利便性の低下は避けられないでしょう」(関西の主要電鉄会社職員)

 私鉄だけの問題ではない。JR四国では、'09年度鉄道輸送収入が前年比約10%減の360億円と、過去最大の下落率を記録した。焦りを感じた四国の鉄道関係者らは、問題を協議する懇談会を発足させたが、その初の会合では、減収の主な原因として、やはり「人口減少や高齢化が進んでいること」が挙げられた。

 また、関西の私鉄の雄である近鉄では、特急・快速本数の見直しや、無人駅の拡大などを検討中だ。沿線距離では日本一を誇る近鉄だが、利用客が少なく経営を圧迫する閑散線区が7割に達しているためである。

高齢者が増えても病院はない!

 鉄道業界では、とくに「通学者の数が減る」ことを問題視しているが、言うまでもなく、近い将来子ども(0~14歳)の数は激減する。先ほど、2055年には高齢者が人口の40・5%を占めるという数字を紹介したが、同じ時点での子どもの比率は、わずか8%である。

 子どもの数が減れば、公立の小中学校の統廃合も必然的に進む。この5年で全国で約1000の小学校が閉校した。市町村合併の影響もあるが、統廃合の主な要因が少子化であることは間違いない。

「学校のなかには、すでに『学級』として機能していないところもあります。在校生が40人未満で、『学校で球技ができない状態』の小学校もいたるところにあると聞いています。人口の少ない自治体では、学校がコミュニティ機能の維持に大きな役割を担ってきました。その学校がなくなると、町の活気が失われ、自治体の衰退に拍車がかかることになるのです」(文科省関係者)

 人口減少が深刻な青森県では、'08年に青森市が統廃合により市内の公立小中学校を4割減らす計画を立てた。計画は住民の反対により撤回されたが、ここ数年、青森県では0~14歳の人口が、毎年約5000人ずつ減り続けている。青森県の'05年の0~14歳人口は約20万人であるから、毎年5000人ずつ減っていけば、約40年後には青森県から子どもがいなくなる計算だ。

 青森県だけでない。同様の事態は他県でも進行しており、秋田県、長崎県などでも、子どもがいなくなる可能性が高まっている。子どもを通わせる学校がないどころか、子どもそのものが、市町村から姿を消してしまうかもしれない。

教育関係者が「子どもが減る」ことに頭を悩ます一方、医療関係者は「高齢者が増える」ことに不安を隠さない。「現在でも患者が多すぎるぐらいだから、人口が減ることは問題ではない。しかし、高齢者の割合が高まり、かつ彼らを診療・ケアする若い人材が不足すれば、病院はパンクしてしまう」。病院関係者からこんな危惧の念が聞かれるが、医療・看護関係の人材不足は日々深刻化している。


厚生労働省のまとめでは、来年度の看護職員の数は、必要数(約140万人)に対して、約5万人不足する見通しだ。数年後にはベテラン職員の大量退職が控えており、'25年には約20万人が不足するという試算も出されている。

 職員が減少すれば、統合を余儀なくされる病院も現れ、規模の小さな自治体からは病院がなくなってしまう可能性がある。病院のない、高齢者中心の自治体。まさに、悲劇としか言いようがない。

 さらに、人口減少は地域の治安崩壊をも引き起こす。人口が減少すると、空室・空き家が増えることになるが、空き家が増えると、ゴーストタウン化・スラム化が進み、治安が悪化する傾向がある。このことから欧米では、計画的に空き家を取り壊したり、人口減少に対応したコンパクトな街づくりを進めたりするケースが増えている。

 一方日本では、人口減少社会がそこに迫っているというのに、いまだにいたるところで---人口減少の始まっている町でさえ---高層マンションの建設が相次いで進められている。「100年は持つ高層マンション」などと謳っている物件も多いが、100年後には誰が住んでいるのか。誰も住んでいないのに、それを取り壊す費用もない、そんな薄汚れた摩天楼が聳え立つ様は、さぞかし不気味なことだろう。

シブヤは巣鴨になる!

 そんな中、人口増加が見込まれている数少ない自治体がある。東京都はその筆頭格だ。しかし、悲しいことに「だから東京は安泰だ」とはならない。人口減少よりはるかに恐ろしい、爆発的な「高齢者増加」が起こるからだ。

 前出の松谷明彦政策研究大学院大学教授が語る。

「65歳以上の高齢者は、'05年からの30年間で、全県平均34.7%増える見込みです。ところが東京では、67.5%の増加が見込まれています。つまり、東京は日本のどこよりも高齢者が増えるのです。高齢者が7割増えれば、老人ホームも7割増やさなければならなくなる。

 税金を担う主たる働き手は15.8%減少すると見られているので、彼らの税負担は大変なものになる。特に20~30代の人口は31.3%も減り、東京都の人口に占める割合も現在の3分の1程度から約2割程度にまで縮小する。繁華街のイメージも変わるかもしれません。若者相手の渋谷、新宿、六本木などの街が小さくなって、巣鴨のような町が大きくなっていくとも言えます」

 東京には、人口減の心配はない。しかし、高齢者だらけで働き手の負担ばかりが増大する"住みにくい街"に変わったとき、若者が地方に逃げ出していく可能性もある---松谷氏はそう指摘するのである。

 東京だけに限らず、大阪・兵庫・京都といった他府県の都市部でも事情は同じだ。京都府は「2030年には約10%人口が減り、65歳以上の割合が、'25年には30%を超える」との見通しを発表。これを受けて、11月18日には人口問題を考える研究会が府内で開かれた。都市部も、人口問題とは無縁でないことが、お分かりいただけるだろうか。

人口問題が深刻化すると、経済、産業も大きな影響を受けるのは間違いない。場合によっては、日本経済の壊滅もありうる。複数の経済学者は、本誌の取材に対して「労働力人口が激減するため、国内総生産(GDP)の成長率は長期的にマイナスとなる」と予測し、現在約550兆円の実質GDPは、'50年には約350兆円にまで減少するとの声もあった。

  「全体のGDPが下がるのは、人口減少社会では当然。それよりも、一人当たりのGDPを増やすことが重要」という指摘はもっともだが、しかしここ数年、日本の一人当たりGDPは低下し続けており、そう簡単に上昇に向かうものではない。

家を建てる人も激減する!

 数字上の問題だけでなく、実際の経済の現場では、いたるところに綻びが生じ始めている。

「人口問題によって特に小売業が大打撃を受けることになるでしょう」

 こう話すのは、奈良女子大学大学院教授で『人口減少時代のまちづくり』の著者である中山徹氏だ。

「卸売・小売店を対象にした、経産省の『商業統計調査』最新版によると、国内の小売店数は'82年に172万店舗でピークに達してから減少に転じ、'07年には113万店舗にまで減っています。これは不景気だけが原因ではない。すでに人口減少が進んでいる地方などで、経済活動の一部が縮小し始めているからです」

 '09年に経産省が発表した、家計の支出に関する調査データによると、'07年の家計消費支出は278兆円。これが'30年には250兆円になるという。実に10%以上も支出が減るのだ。

「小売店数の減少はこれからも続くでしょうが、特に深刻なのは商店街です。総務省の統計によると、従業員4名以下の小規模小売店数---このなかには商店街の店が多く含まれると思われます---は、'82年の144万ヵ所をピークに、'07年は75万ヵ所と半数近くまで数を減らしています。なんの対策も講じられなければ、加速度的に小規模小売店は姿を消していくことになるでしょう」(中山氏)

「シャッター商店街」は、もう珍しい風景ではなくなった。この風景が日本中に広がるだろうという予測だが、商店街の死は、町そのものの活気や生気を奪いとり、自治体の機能低下・活力低下に拍車をかける。"日本の壊死"は、足元からじわじわと進んでいる。

 家計消費の減少には、日本の製造業・販売業も戦々恐々としている。ハウスメーカーを例にとってみよう。住宅を買う層の中心は30~44歳で、現状、新築物件の約半分はこの層が買っている。しかし、この層は今後10年のうちに15%減少すると予測されている。従来どおりの営業をやっていたのでは、ジリ貧になるのは確実だ。

「関西圏を例にとると、主要顧客層がこの10年だけで70万人も減少します。一体どれだけの影響がでるのか、正直見当もつきません」(大手住宅メーカー・マーケティング担当者)

 国内に生き残りの道がないなら、日本の企業は海外に「逃げだす」ことを模索するだろう。

「体力のある企業は、労働力不足と内需の低下を見越して、国内投資ではなく海外投資を積極的に行っています。これからは、そうして海外に軸足を置く企業がどんどん増えていくはずです」というのは、信州大学の真壁昭夫教授だ。

近年、日本企業の海外への積極的な進出がみられるが、これは将来の日本の人口問題を見越したうえでのものだと真壁教授は指摘する。内閣府は毎年、製造業の海外生産比率を調査しているが、そこにもこの流れがはっきりと表れている。'90年度の海外生産比率が6.4%だったのに対し、20年後の'09年度には過去最高の17.8%を記録しているのだ。

「このままでは、やがて日本国内には地元密着型のスーパーとか、海外に進出するだけの体力がない企業・金融機関しか、残らなくなる恐れがあります。人口減少に歯止めがかからなければ、日本そのものが経済規模の小さい『貧乏な国』になってしまうでしょう」(前出・真壁氏)

 『The Economist』誌をはじめ、世界が日本の将来に注目し始めた理由が見えてきただろうか。一時は世界経済のトップを走っていた国が、いま静かに、そして着実に「死」を迎えようとしているのだ。興味が湧かないワケがない。また世界的にみても、先進国では人口減少・高齢化が進んでおり、日本は自国の将来を考える上で「いいモデルケース」となっているのだろう。

 特に、眼を見開いて日本の人口問題に注目しているのが、近い将来、同じ問題を抱えることになる中国と韓国だ。

日本がどうなるかを見てから!

 9月10日、中国社会科学院財政貿易経済研究所は「中国の高齢化はこれから進行し、2030年には日本を抜き、世界一の高齢国家になる」と指摘した。国連の人口統計によると、中国では2040年には全人口の28%が65歳以上に達し、経済は一気に減速、社会保障問題で国家は大変な混乱に襲われることになるのだ。

 また、韓国は日本と同じく出生率の低下に苦しんでおり、2050年には韓国の人口は4234万人と現在より13%も減少すると予測されている。

「韓国では、医療費の増加水準がOECD加盟国平均の約3.5倍と圧倒的に高く、今後わが国の社会保障政策が行き詰まることになるのは間違いない」(オ・ヨンス・韓国保健社会研究院政策研究室長)

 それでも、韓国は日本ほどに人口減少・高齢社会に悲観的ではない。

「韓国が本格的な人口減少に直面するのは、10年ほど先の話でまだ余裕がある。日本の対策を参考にすることもできる」と語るのは、チョン・ホソン・サムスン経済研究所首席研究員だ。

「韓国は外国人移民の受け入れに比較的寛容であり、さらに中国をはじめとした外国人投資の誘致が進んでいるため、人口減少による経済的なマイナスはある程度カバーできる。韓国はグローバルな視点から、この問題の解決策を見出そうとしている。反面、日本は10年ほど前から政治的な混乱が続いており、ほとんど対策が進んでいないのではないか」

 情けない話だが、確かに日本の対策は、ほとんど進んでいないに等しい。

 人口問題に詳しい識者に、人口減少・高齢社会を乗り切るための方策について意見を求めた。東京財団の石川和男・上席研究員は、日本の活路について、こう話す。

「日本の高齢者の保有している資産は、数百兆円にのぼる。この資産を消費に回すことができれば、内需で日本経済を活性化させることができる。高齢者向けのビジネスはいくつも考えられるが、介護や医療といった、社会保障産業に注目したい。これを巨大な産業に成長させられれば、それは原発や水道のように、『JAPANESE KAIGO』として、そのシステムやノウハウを海外に輸出し、外需をも呼び込むことにつながります」

人口減少・高齢社会を乗り切る道は少なからず残されている。しかし、政府が来るべき将来に向けて、十分な対策をとっているかといえば、答えがNOであることは論を俟たない。

 社会保障の充実、女性の社会進出、定年の引き上げ、税制改革・・・その議論のどれもが遅々として進まず、一方で国民に負担を強いる政策だけは強硬に推進する。

 これでは韓国の研究員の言葉に反論できそうもない。

 実は、日本は過去にも同様の危機を迎えたことがあった。前出の上智大学・鬼頭宏教授によると、日本が人口減少に直面するのは、歴史上4度目のことだという。

「日本は縄文時代後半、鎌倉時代、江戸中後期に人口減少を経験しています。

 どの時代も、それまで発展を支えてきた技術や社会制度が完成し、成熟期を迎えたときだった。

 日本はいま、4度目の人口減少に襲われていますが、今回も、社会が成熟期を迎えたと考えていいのではないでしょうか」

 鬼頭教授は、今回の人口減少が「高齢化」という過去になかった特殊な要素を含んでいることに注意しつつも、「日本は過去3度の人口減少を、すべて海外から新しい制度や文化を導入することで乗り越えてきた」と説明し、この度の人口減少においても、移民受け入れを真剣に考えるべきではないかと締め括る。

 日本は過去、人口減少を迎えるたびに、それを新たな文明発展の契機としてきた。これは大変誇らしいことである。

 しかし4度目の危機を迎えているにもかかわらず、ただ手をこまねいているだけの現状をみると、これが日本が迎える「最後の人口減少」なのではないかと思えてならない---。

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電子教科書は日本を救うか 第1回

2010年12月08日(水)現代ビジネス 田原総一朗

田原:孫さんが最近、しきりにおっしゃってる「光の道」というのがあります。ただ一般の人には(どういう問題なのか)よく分からない。

 もう一つ、90年代はビル・ゲイツの時代だったといわれています。これはいわばコンピュータ、パソコンを動かすソフトが中心でウィンドウズの時代でした。

 で、今はスティーブ・ジョブスの時代だといわれる。まさに孫さんがやってらっしゃるiPhone、iPadもそうですが、これからクラウドの時代だという。

 日本でいちばんクラウドの最先端にいらっしゃるのは孫さんでしょう。今日はそのへんからまずお話をお聞きしたいと思います。

孫:クラウドの時代と最近はいわわれはじめていますね。一言でいうなら、インターネットの雲の上のようなイメージです。

 これまでは会社でいえば社内にサーバーがあって、それにパソコンが繋がっていた。自宅でいえば自宅にあるパソコンで、その中のソフトやデータを使ってそのまま仕事をするということでした。これが変わった。

 ネットワークの上に、たとえばグーグルのサーバー群がズラッとある、ヤフーのサーバー群がズラッとある、そういうネットワークの上に全部まとめてある情報の固まり、それを世界中の人々が、まるで直接、会社の中でアクセスしているように、自宅の中でアクセスしているように、一瞬でその情報を手に入れることができる。これがクラウドコンピューティングだと思うんです。

田原:クラウドとは日本語で「雲」ですね。

孫:「雲」です。

田原:コンピュータの世界ではパソコンを100台繋ぐと、スーパーコンピュータ以上の力が出ると言われてますね。

孫:ありとあらゆる情報が入る。たとえば医療でいえば、日本国民全員の健康診断の情報、いろんな検査の情報、それがすべて格納されている大きな巨大なデータベースセンターみたいなものですね。

田原:今は別の病院に行くと、また一から診察しなきゃいけない。

孫:そうなんですね。だから、一つの大きな、例えば虎ノ門病院なら虎ノ門病院の中で検査結果は全部終了してその中にデータはあるんですけども、慶応病院に行ったらまたもう一回ゼロから検査をしなくてはいけない。

田原:今はそうなっています。

孫:これが「医療クラウド」という形でできると、日本中の病院、しかも大病院だけではなくて、小さな町のクリニックで受けた検査も、共通の一つの巨大なデータセンターにすべての病院の情報が入っている。いまは、小さな町のクリニックでは、いくら腕に自信のあるお医者さんでも、優れた機械、高い何億円もする機械がないから複雑な診断ができない。

田原:わざわざ東京に来なきゃいけない。

孫:ところがこれからは、検査なら検査ばかりする巨大な高い何億円、何十億円する検査システムがあるところで人間ドックとか受けて、その結果を町のお医者さんがクラウドから引き出して、そこでホームドクターのような形で検査結果を見ながら診断できる。

 また、セカンドオピニオンで別のお医者さんに聞きたいといったら、またそっちへ行けばいい。

 医療の世界一つでも、それが言える。教育の世界でもそれが言える。あるいは企業の中でも自分の取引先とのデータだとか、業界全部の情報が入っているとか。

情報を活用する力さえあれば大資本に負けない!

田原:企業でいうとどういうことができますか、クラウドになると?

孫:個人情報については伏せなくてはいけないところはいろいろありますけども、個人情報に関わらないところで、例えば自動車業界で言えば自動車業界全部のあらゆる部品がすべて入っている。どこの整備工場でいま車検のスロットが空いてますとか、整備担当者の誰々が空いてます、なんて情報が共有できる。

 旅行に行くのでも、ゴールデンウィークの三日前なのに、まだ空いている部屋はどことどこだ。いままでなら、例えばヤフートラベルならヤフートラベルの中だけ閉じている。もし旅行業界全部の「旅行業界クラウド」というのができれば、楽天トラベルもヤフートラベルも、JTBもHISも、いろんな情報が全部「旅行業界クラウド」で調べることができる。例えば・・・。

田原:それはユーザーにとってはとってもいいですね。

孫:うん、そうですよ。

田原:でも、企業にとって見るとね、優劣がなくなっちゃうと商売にならないんじゃないですか。

孫:だからそれを上手に使いこなせる企業と、後ろからついて行く企業の差が出てくるとは思います。でも少なくとも今までは大資本で多くのお客さんを持っている企業だけが差別化できる、大企業であるが故のメリットだったのが・・・。

田原:大きいことがいいことだと。

孫:今まではですね。だけど今度は町の工場だとか町の中小企業でも、大企業と同じだけの情報武装ができる。同じように病院だって、大病院でも必ずしも力のある先生ばかりとは限らないわけですね、案外、大病院ほど若いお医者さんだったりするわけですよね。

田原:つまり情報も、ユーザー、患者に分かるわけだね。

孫:そうですね。

田原:例えばがんセンターならこの医者はいいと。

孫:そうそうそうそう。

田原:でもこの医者は大したことないよと。

孫:そうです。だからやっぱり「見える化」が始まるっていうことですよね。とにかく20世紀というのは、ものづくりでも大きな資本、大きな工場を持っているところが全部有利。これはまさに資本主義の世界ですけども。

田原:今でもまだ残ってますね。

孫:でもこれからは資本があるところが強いというより、情報を上手に活用できる人々が強い。情報の民主化みたいなものができて、従って中小企業でも、あるいは個人のお医者さんでも優れた能力さえあれば、あるいは情報を活用する力があれば、大資本と互角に戦える時代が来たということだと思いますね。

国際競争力が1位から27位まで転落!

田原:この間、台湾のある経営者と話をしたら、中国はもう大マーケットになっていろいろなものが売れてるんだけど、その中でも、たとえばある機械でも何でもいいですが、中を見て『Made in Japan』という部品がいっぱい入っていると信用があるんだそうですよ。ところが大事なことは日本の部品屋さんは海外へ行けない。台湾のその経営者は、日本の部品屋を会社ごと買おうかと言っていた。こういう話がある。

孫:うん、そうですね。一つひとつを作る能力、真面目にしっかりとした壊れないものを作るのは日本の企業はいまだにすごい。ですけれども、それをもって世界に打って出るという攻めの部分がだいぶ弱まりましたね。

田原:そこなんですよ。よく言われているのは「日本は技術は高い、しかし商売がやたらにヘタだ」と。

孫:そうですね。そういう意味で今日は学校の現場の先生方もいっぱい来ていただいた(twitter呼びかけて教育関係者約150人を募集した)。

 教育に関わることなんで・・・。実は今日、田原さんにお見せしたくて、資料を用意したんです。それを先に説明させていただいて。

田原:どうぞ、お願いします。

孫:そこに『IT教育が日本の未来を変える』という、ちょっと大上段に構えたやつを用意しました。僕は一つひとつの電子教科書がどういう機能があるとかないとかそういう話よりは、なぜIT教育が必要なのかという思想の面から今日は資料準備しました。

田原:そこを是非聞きたい。

孫:まずこのページです。いまの日本のいちばんの問題は、国際競争力がほんのこの20年間で、1992年っていったらついこの間・・・。

田原:1位だった。いまは27番目になっちゃった。

孫:1位だったのが、もう先進国の中で27位ですよ。これはもうどうしようもない状況です。すでに「失われた20年」っていうのがあるわけですけども、ここからまた「失われた20年」を日本は迎えそうだと。そうすると失われた40年、50年になる。日本は二度と立ち上がれない。

田原:決定的落ちこぼれになっちゃうでしょうね。

孫:もう劣等国になる。国全体がまとめて世界から落ちこぼれてしまうという状況ですね。これがGDPですが(下図参照)、ご存じのようにいまから30年、40年したら、世界で8位になる。7位がインドネシアですから。

田原:いまは3位ですね。

東大でマルクス経済学を学ぶのはイヤだった!

孫:今年中国に抜かれて3位。つい今年の頭までは2位だったわけですから。2位という状態が何十年か続いていたわけですね、日本は。ついに何十年ぶりに日本は2位から転落したと。ここからさらに転落の度合いが早まっていって、いま日本がODAで助けてあげている国から見下ろされるようになる。

 インドネシアにも抜かれる。ロシア、メキシコ、ブラジル、みんな抜かれるという恐ろしい状況がいまやってきそうだということが、ほぼ見えている。

田原:ええ。

孫:そもそもなんでこんなになったんだということです。私が見てるのは、日本は農耕社会だったと、それが幕末、明治維新で工業社会になったと。

田原:ヨーロッパの機械が、工業が入ってきた。

孫:黒船が来て。僕は16歳からアメリカに行ったんですけど、アメリカの高校卒業検定試験というのを受けたんですね。日本では高校1年の3ヶ月しか行ってないから。

田原:脱線しますがそこを聞きたい。なんで日本で高校をまともに行かなくて・・・。普通は高校を卒業してアメリカに行くのは多いんだけども、なんで行っちゃったの?

孫:僕は結構先のことを考えるんですよ。

 高校1年生のときに、一応このまま行けば、真面目に勉強して大学受験が3年後にあるなと。3年後にどこの大学に行きたいかと、自分で自分に問うたら、一応やっぱり東大を目指そうかと。ただ、東大で何学部に行くんだと。経済学部だと。そのときは東大の経済学部で何を教えてるかというとマルクス経済です。


田原:そう、マルクスですね。

孫:「ちょっと待てよ」と。「なんでこの資本主義の日本で・・・」(笑)。

田原:しかもうまくいっている日本で。

孫:そう。「なんで共産主義のマルクス経済を勉強しなきゃいけないんだ」と。かといって、僕なりには東大に行きたいという気持ちがあって、マルクス経済が嫌だからといって他の大学に行きたいという気も当時はなかったわけ。そしたらもう日本の外に出るしか・・・。

田原:他の大学もマルクスですよ。僕は早稲田ですけど、やっぱりマルクスやってましたから。

孫:それは僕に言わせれば、当時の大学の教授を選ぶシステムが間違っている。先輩の教授たちが後輩の教授を決める。で、先輩の教授達がマルクスで習ったから自分の後輩もマルクス経済のやつを教授にしようという、なんか連綿と続いたやつがあった。これ自体がもうおかしいなと僕は思ったんです。そこである意味、マルクス経済に押し込められるのが嫌だった。

 もう一つは『龍馬が行く』を読んで坂本龍馬に憧れて、あんなふうに命懸けて日本を変えたいと思った。彼はアメリカ、ヨーロッパ、海外を見たいと思ったが、でも暗殺されて果たせなかった。じゃ、私は行ってみようかということで行ったんです。

田原:なるほど。

日本の教科書が教えない「南北戦争」

孫:ちょっと脱線しましたけども、アメリカで僕は3週間だけ高校に行って、1年生、2年生、3年生を2週間で、3カ年分飛び級したんです。

田原:アメリカはそんなことできるんですか。

孫:一応、校長先生に直談判して。最初1年生に入って1週間で2年生に変えてくださいと。3日で2年生はいいから3年生に変えてくれ。で、また3日で3年生はいいから、大学行くから卒業させてくれと。それで卒業検定試験を受けたんです。そのときの試験に出てきた内容が大事で・・・。

田原:何ですか。

孫:「シビルウォー(the Civil War)はだいたい何年頃だったか?」で、ABCと選択があって。答えは「1860年代」ですが、シビルウォーって日本ではそういう単語を聞いたことがなかったんです。

田原:ないですね。

孫:ね、日本の教科書では。考えてみたら日本の学校の教科書でいう「南北戦争」。

田原:あ、アメリカの南北戦争。

孫:南と北が戦いましたね。日本の教科書では・・・。

田原:奴隷制のある南と奴隷制に反対する北が戦った。

孫:そう。しかも日本では奴隷制度があるかないか、黒人差別をするかしないかが南北戦争だとずっと教わってきたけども、アメリカでは奴隷を解放するかしないかの戦争ではなくて、シビルウォーなんですね。

田原:どういうこと? シビルウォーって。

孫:つまり農業社会の枠組みの国家から工業社会の枠組みの国家にパラダイムシフトすると。

田原:そういうことなんですか。

孫:これがシビライゼーション、つまり文明開化。農耕社会から工業社会に切り替わるシビライゼーション、文明国家に変えると。従って国家の憲法、規制、教育、全部を切り替えると。

 農耕社会でよしとした制度で---つまり農耕社会では人手、安い労働者が必要だ。綿を摘むため、麦を植えるための安い労働力を手にするためにアフリカから連れてきて奴隷として使うという、低賃金労働者をいかに集めるかということを南部でやっていた。

 でも北部の方はそうじゃないんだ、工業化社会だと産業革命だと進んでいた。農業を中心としたところに立脚したものではなくて・・・。

田原:頭を使わない労働力はいらない。

孫:そう。頭を使って機械を使って、産業革命が起きた。電気だ、自動車だとね。そういう産業革命に向かうための枠組みが必要だった。従って手作業の労働賃金を安くするための枠組みが重要じゃない。

田原:枠が変わると。

孫:ということがシビルウォーだということを、検定試験の会場で試験の問題を見て試験の最中に僕は初めて認識した。

明治維新の本当の意味とは
田原:今日いらしている多くの方も、南北戦争って奴隷か奴隷じゃないかの戦争だと思ってますよ。

孫:そうそう、日本の学校の教科書ではその程度しか教えてない。でもことの本質は農耕社会から工業社会に変わるという決定的なこと。で、同じ1860年代に明治維新が起きた。明治維新とはなんぞやと。一言でいうとシビルウォーなんです。

田原:ペリーがやって来て、やっと工業っていうのがあると。日本は櫓で、風で船が動いていた。

孫:だから幕末の明治維新というのは最初尊皇攘夷からきて、思想の世界だっていう。しかし、本当の枠組みは農耕社会、つまり農民の上に、マネジメントとしてある意味搾取しているマネージしている武士階級があるという農業に立脚した国家から、工業に立脚した国家に変わるというパラダイムシフトなんですね。アメリカのシビルウォーつまり南北戦争も、日本の幕末の明治維新も実はまったく同じテーマ・・・。

田原:シビルウォーだと。

孫:シビルウォーであり、しかもまったく同じ1860年代に起きた。シビライゼーションをもとに蒸気汽船で世界各国に工業製品を売りに行くと、工業に立脚した船で。だから僕は、人類の20万年の歴史の中で一番大きなパラダイムシフトが、農耕社会から工業社会へのパラダイムシフトだと思っているんですね。

 今まさにわれわれが直面しているのは---一つ目の箱が農耕社会という箱、二つ目の箱が工業社会という箱、今度は三つ目の箱として情報社会がやってくる---この情報社会という新しい社会の枠組みで、ここに乗り移れるか乗り移れないか、この思想の戦いだと僕は捉えています。

情報社会とは何か?

田原:そこを一番聞きたい。情報社会という言葉はもう山ほどある。ところが情報社会と工業社会はどこが違うのかということ。ここを明確に言う人はいない。

孫:一言でいうと、工業社会は人間の体でいえば筋肉を延長させるものを作っていったということ。

田原:機械だからね。

孫:それは足を延長させる。速く走る車。手の筋肉を延長させるということで、ベルトコンベアとかオートメーション。目を延長させるとテレビ、耳を延長させてラジオ。つまり人間の体でいえば筋肉を延長させるのが工業革命です。

 で、人間の体で言えば頭を延長させるのが情報革命です。人間の体で何が一番大切か。やっぱり筋肉よりはね・・・。筋肉は義手とか義足が付けられます。でも頭を変えちゃったら別人になっちゃいます。

 心臓ですら、いまはペースメーカーや人工心臓も作れる。ということですから、人間の体の中でいちばん大切な、いちばん付加価値の大きい部分といったら頭でしょう。頭をサポートするのが骨であり手足だということだと思うんです。筋肉の革命が産業革命、頭脳の革命が情報革命、情報社会ということだと思いますね。

田原:農業から工業に変わったきっかけが蒸気機関だと言われてるんだけど、工業から情報に変わるきっかけは何ですか。

孫:マイクロコンピュータです。これ以外ないです。要するにマイクロコンピュータで、それが心臓部として計算をし、そして記憶を司るメモリチップに記憶させて、口とか目とか耳に相当するコミュニケーションということで通信。

 情報革命の三大キーテクノロジーといえば、マイクロコンピュータのCPUと記憶のメモリチップと伝達をする通信。この三つの要素で、これが過去30年間で百万倍になったわけです。

田原:百万倍。

孫:百万倍の進化を遂げたんです。次の30年間でもう一回百万倍の進化を遂げるんです。

田原:30年ということは、孫さんがアメリカにいらしてから今までに百万倍。

孫:そうです。僕がソフトバンクを始めてちょうど今年30周年。この30年間で百万倍になったということですね。

筋肉革命から頭脳革命へ!

田原:孫さんはなんでコンピュータに目を付けたんですか。あるいはソフトですね。前にお話ししたとき、なんか写真を見たとか。

孫:はい。

田原:指の上になんか載っていたと。

孫:マイクロコンピュータのチップの拡大写真をサイエンスマガジンで見たんですね。これなんの写真だろうと思ったんです。未来都市のような地図のような。で、次のページをめくったら、指の上のこのチップが載っていて、これがマイクロコンピュータだと生まれて初めて知ったんです。

田原:で、たぶん同じ写真を、あるいは同じものを見たであろう、ビル・ゲイツがいると、スティーブ・ジョブスがいると。

孫:そうです、そうです。サン・マイクロシステムズのスコット・マクネリであり、彼とサン・マイクロを一緒に始めたエリック・シュミット。シュミットがグーグルのいまのCEOですね。実はみんな同じ歳なんです。

田原:同じ年、ほう。

孫:全員。ビル・ゲイツも、スコット・マクネリも、スティーブ・ジョブスも、エリック・シュミットも。日本でいえばアスキーの西和彦さん。全員同じ歳なんです。で、実は僕は二つだけ若いんですけど、僕は2年早く大学に入った、飛び級で。

田原:アメリカに行ったから飛び級で。

孫:僕が大学1年生の時に、彼ら全員大学1年生。同じ大学1年生の時に、みんなマイクロコンピュータを見て衝撃を受けて。つまりわれわれの世代にとっての黒船を見た。

田原:それがつまり情報社会の第一世代なんだ。

孫:全員同じ年。つまり龍馬とか、勝海舟、高杉晋作とか、みんな黒船を見て衝撃を受けたわけですね。あの人たちが黒船を見てガーンと衝撃を受けたように、われわれはマイクロコンピュータのチップを見てガーンと衝撃を受けて、僕は涙を流した。

田原:そして情報社会に入ってきた。

孫:そうです。筋肉革命から頭脳革命つまり情報革命です。この情報化社会を迎えるに当たって、さて日本はどうするんだと。このパラダイムシフトをどう迎えるかで、日本がこれから50年100年、世界の落ちこぼれになるのか、それとももう一度競争力を取り戻せるのか、大きな分かれ目です。ところが、これは話をしても分からん人がいるわけですよ

以降 vol.2へ。


新潟中国総領事館の万代小学校跡地移転問題!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%B7%8F%E9%A0%98%E4%BA%8B%E9%A4%A8%E3%81%AE%E4%B8%87%E4%BB%A3%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E8%B7%A1%E5%9C%B0%E7%A7%BB%E8%BB%A2%E5%95%8F%E9%A1%8C

メタンハイドレート
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88



『週刊新潮』 2010年12月2日号 日本ルネッサンス 第438回 櫻井よしこ

新潟市中心部の5,000坪の土地を、中国政府に売るべきか否か。

新潟市長の篠田昭氏は、11月18日、土地売却案の凍結を発表したが、余震はおさまらない。「凍結」は時機がくれば解除され得るのに加えて、中国側の土地取得にかける意気込みの強さが窺えるからである。

問題の土地は新潟駅からわずか500メートル、市の中心部に位置する万代小学校の跡地である。ここに中国側が総領事館の建設を予定し、篠田市長らも歓迎した。新潟市は住民への十分な説明を行わないまま、中国への土地売却を前提に測量を開始したが、住民の反発で中止に追い込まれた。当欄でも11月11日号で、その一件を報じ、篠田市長が前述のように凍結を発表した。

中国の日本専門家として重きをなす人物に元外相で前国務委員の唐家璇(トウカセン)氏がいる。唐氏は、小泉純一郎氏が首相だった2001年7月24日、田中眞紀子外相と会談し、小泉首相の靖国神社参拝に関して「(参拝を)止めなさいとゲンメイ(厳命)した」ことを自ら明らかにした人物だ。

氏は現在、新日中友好21世紀委員会の中国側座長を務める。日本側座長は東京証券取引所グループ前取締役会長で東芝相談役の西室泰三氏である。日本側委員には、チャイナスクールの筆頭の一人、阿南惟茂元中国大使らに加え、キャスターの国谷裕子氏らが名を連ねている。

唐氏ら同委員会一行は10月29日から11月2日まで5日間にわたって新潟を訪れ、精力的に各地を視察した。氏は11月2日11時11分発の新幹線で東京に戻り、同日夕方5時、官邸に菅直人首相を表敬訪問した。翌3日の祭日を挟んで4日昼前、氏は仙谷由人官房長官を訪ね、30分間の会談、午後には経団連を訪れた。それにしても今回の氏の日程から、新潟が大きな比率を占めているのが見てとれる。

他国の土地を買い急ぐ!

氏は一連の会談や講演で「尖閣諸島問題は主権の問題であり、すぐに状況を変えるような行動は起こしてはならない」としたうえで、「日中関係はこれまでどおり発展させていくべきだ」と語っている。「発展」の中には、中国側が思い描いた新潟市中心部の土地の購入も、同じく市中心部における中華街建設構想も含まれていたことだろう。

中国は5年前に北朝鮮の保有する日本海側の最北の港、羅津(ラジン)を租借し、初めて日本海への直接の出入口を得た。中国にとって、羅津港を出たすぐ先に位置する新潟は地政学上、非常に重要な拠点になる。新潟の海には次世代のエネルギー源のひとつと見られる膨大な量のメタンハイドレートが眠り、山々には大量に降り積もる雪が最高級の酒を生み出す豊かで美味なる水となって眠っている。地政学的にも、資源という点でも、新潟が中国にとって非常に魅力的な県であるのが容易に見てとれる。

無論、どの国、どの地域にとっても、対中交流は経済を潤す効果がある。だからこそ、新潟は県をあげて、中国との交流を深めるべく努力してきた。自民党の新潟市議、橋田憲司氏が語った。

「私が市議会議長だったとき、総領事館誘致を中国に陳情したことがあります。県ぐるみで、田中眞紀子、直紀両議員も働きかけました。中国との交流が地元経済の活性化につながると期待してのことです」

同じく自民党の佐藤幸雄市議も語った。

「いま問題になっている万代小学校の跡地については、むしろ日本側、市長側から働きかけたと思いますよ。議会に対しても、幾度かの食事会や会合で根回しも進んでいて、売却の話はついていたと思います」

新潟に拠点を築く中国側の戦略的必要性は極めて大きいはずだが、現象的には日本側の働きかけが前面に出てくる。橋田氏は、今回は市の所有地だから売却に疑問が呈されるが、民有地ならば問題はないのではないかと語る。

民間の商行為を止めることは、法律的には勿論出来ない。経済活動はあらゆる制約を超えてグローバルに広がっていく。中国マネーが、日本のみならず諸国の鉱山や土地、山林や耕地を買収していく事例が目立つのはそのせいだ。事実、わが国の法整備が追いつかないために日本の山林も制限なしに中国資本に買われつつある。

疑問を抱かざるを得ないのは、中国政府が自国の土地を一ミリたりとも売らない一方で、他国の土地を買い急ぐ点である。一般論として、無闇に外国に国土を売ってよいわけはないが、とりわけ、自国の土地は全く外国に売らない中国に対しては慎重になるべきであろう。保守系の新潟クラブの市議、佐々木薫氏が語る。

「新潟が長年かけて総領事館を誘致したことは一定の評価が出来ます。けれど、市中心部の5,000坪を売り渡せば、そこには日本人はもはや容易に立ち入ることが出来なくなります。大使館の土地はその国の領土と同じです。市中心部の広大な空間がそれでいいのか、我々は慎重に考えなければならないと思います」


不平等関係!

大使館や領事館の開設は相互主義でなされる。日本が中国に開設しているのと同じ数の総領事館の開設が中国にも許される。このように数の上では平等が保たれているが、内容は必ずしもそうではない。

たとえば、日本は北京の大使館以下、上海、広州、瀋陽、重慶、青島、香港の6ヵ所に総領事館を開設しているが、どれひとつとして、土地を購入して建てたものはない。理由は前述した。中国政府は決して自国の土地を売らないからである。

他方、中国は日本では、今回の新潟のように土地を購入しようとする。日本は他国ともこのような不平等関係にあるのか。外務省に問い合わせると、「個別の案件」については答えられないという。

だが、少なくともひとつ明らかなのは、中国にある日本の公館は全て、賃貸だということだ。一方、過去に、国会で、東京の米国大使館の賃貸料についての議論があったことから、これは少なくとも米国所有ではないことが推測出来る。沖縄にある米国の総領事館も公邸も、民間所有の土地や建物の賃貸である。

それにしても、中国に万代小学校跡地を売却しようという新潟市の考えはどういう理屈で正当化されるのか。住民への説明で、新潟市側はこう繰り返している。

「中国は他のところでも自前の土地に公館を建てている。それが中国の慣例だ」

自国の土地は売らずに死守する中国は、外国においては自前の土地を入手する。この一方通行が中国の「慣例」である。そんな中国の言い分だけをきいて、それに従うという新潟市の理屈は、県益も国益もないただの従属である。それではとても県民市民は納得しないだろう。

2010.12.11(Sat)JBプレス 川嶋諭

誰もがすぐ解ける極めて簡単な詰将棋を見せられているようだった。この手を打てば、次の手は容易に想像がつく。実際その通りに運んでいるのが、今の政局だろう。

社民党に擦り寄った民主党の自爆テロ!

衆議院で再可決するために必要な6人を確保するために、社民党に再び擦り寄った民主党。

 そのためには年末に発表する予定の新防衛大綱に織り込む予定だった武器輸出三原則の見直しを引っ込めることも辞さなかった。

 ついでに民主党の岡田克也幹事長は小沢一郎氏の国会招致の実現にも動き出した。

 国会招致しなければ年明けの通常国会で野党の協力が得られないためだという。

 将棋を習い始めたばかりの子供が打つような手である。飛車や角が攻められて、その対応に大わらわ。

 自らの玉が危うくなることなど全く目に入らない。次に大手をかけられて、しまったと思っても後の祭である。

 案の定、小沢一郎氏は離党を匂わせながら政界再編へと動き出した。

 12月9日には早速、鳩山由紀夫前首相や弟の鳩山邦夫元総務省、新党改革の舛添要一代表と会合。

 大連合を唱える読売新聞社の渡辺恒雄会長までがまたぞろ動き出した。

 社民党から6人を連立政権に引き込めたとしても、民主党内が分裂の憂き目に遭ってしまえば元も子もない。民主党は残念ながら最悪手に近い手を打ってしまったようだ。

とりわけ新防衛大綱は今の日本が置かれている状況を考えると、とにかく今は全力を挙げて取り組まなければならない喫緊の案件である。

社民党との連携がトリガー、政局が一気に動き出す!

私たち日本の国民は、民主党が生き延びるかどうかには全く関心も興味もない。しかし、日本の国が襲われたり失われるようなことだけは絶対に避けなければならない。

 日本海で行われた日米共同統合演習には、ロシアが2機の哨戒機を訓練海域に飛ばして情報収集しているし、春には中国海軍のヘリコプターが訓練中の自衛隊の艦船に接近、訓練を牽制している。

 中国、ロシアとも異常なほど軍事費を急拡大させている。中国に至っては第1列島線、第2列島線を設定して太平洋の制海権を取ることを明確に意思表示している。

 こうした軍事圧力が増している中で、「米軍も軍備も要らない」と主張する政党と手を組み、国防の手を緩めるなど、見逃すわけにはいかない。危機感を持つ政治家なら動き出して当然だろう。

 時は確実に流れている。昨年9月に民主党政権が誕生した時と、今では明らかに事情が異なってきている。北朝鮮情勢もこの間に極めて緊張の度を増している。昨年9月に社民党と手を組んで政権交代に浮かれていた時とは情勢が違うのだ。

官僚のモチベーションを地に落としては、この国のリストラは進まない!

 その情勢変化を引き起こした責任は、外交、防衛に関して甘すぎる民主党政権が多分に引き受けなければならない。日本を豊かにするための処方箋は一切描けないどころか、組織も完全にばらばら。

 事業仕分けも結局は、派手なショーで一部のタレント議員の人気取りに終わっただけ。これから改革が進んでいく予感は全くない。それどころか役人のモチベーションを地に落とした責任は重い。

 企業のリストラだって、最も気をつけなければならないのは社員のモチベーションをいかに落とさずできるだけ維持するかである。事業仕分けのような公開裁判で一方的に断罪すれば、組織が動いてリストラが進むと思っているなら、民主党に「経営」のセンスはゼロだ。

 これ以上はやめよう。「アナーキー・イン・ザ・ニッポン、日本の大人たちへ」を書いた小田明志くんに「そりゃ、あんたたち大人が選んでやらせたんだろ。簡単に批判すんなよ」と食ってかかられそうだから。

とにかく、国を経営するセンスがゼロだと分かったのだから、「さらば民主党政権」である。恐らく、政局は大きく動き始めるだろう。その場合、解散総選挙の選択肢もかなりな確立であり得る。

解散総選挙もやむなし、出でよ小泉進次郎!

 総選挙には莫大なカネがかかるという問題もあるが、このように情勢が大きく変化し日本が大きく変わらなければならない状況ではそれも致し方ないのではないだろうか。新しい日本を作るための生みの苦しみである。

 そして、前にも書いたけれども、ITの劇的な進歩は選挙も変える。それは日本以上にIT化が進んだ韓国が証明してくれた「与党を惨敗に追い込んだ韓国の若者パワー」。

 若い人たちを選挙に駆り出して、新しい日本を創るための政治をつくる。ちまちました対症療法でお茶を濁す政治はもう御免こうむりたい。

 本来なら議員定数の削減や1票の格差是正など選挙制度をきちんと変えてから総選挙に臨みたいところだが、それも現政権にはできないようだから仕方がない。選挙後に、小泉進次郎など若い代議士たちに頑張ってほしいものである。

 さて、お気づきになった方もいると思うが、JBpressでは12月に入ってから、ほぼ毎日1本ずつ「国防」の記事をお届けしてきた。通常は週に2本程度のペースで記事をお送りしているので、頻度を2倍以上に高めたことになる。

国防の記事を増やした理由!

尖閣諸島における中国漁船の衝突事件のあと、北朝鮮情勢が緊迫化しており、私たちは国を守ることについてもっと真剣に考えなければならないと思ったからである。何しろ、総理大臣が自衛隊のトップであることを知らなかった国なのだ。

 自衛隊OBの方の記事が多いので、記事に偏りがあるのではないかとのご批判も頂戴しているが、現実問題として、国を守ることの歴史的考察、守るための技術などについて、最も情報が多いのが彼ら自衛隊OBの方々である。

 もちろん、自衛隊OBの方々以外にも執筆していただきたいと思っているが、自衛隊OBの方々だからと言って、一部のコメントにあるような第2次世界大戦に導いたかつての大日本帝国軍と重ねて見るのはいかがなものか。

 当時とは事情がまるで違うし、情報公開も進んでいる。今の日本に軍の暴走を言うのは論点が飛躍過ぎていないか。むしろ問題なのは、私たち日本の国民が東アジアを取り巻く軍事情勢に疎すぎる方だろう。


そうした軍事情勢や中国、ロシアの軍事力の詳細も知らずして、何かの一つ覚えのようにシビル・コントロールを叫ぶのは、どこかの国の官房長官が自衛隊のことを実は何も知らないのに、「暴力装置」と国会で発言するのと同じではないだろうか。

何時までもあると思うな、平和と米国の傘!

私たちは戦後65年間、米国の傘の下にいて安全を謳歌させてもらった。しかし、国防の記事の多くが指摘しているように、米国の力は相対的に低下している。それと好対照をなすように中国の力が大変な勢いで伸びている。

 東アジアの勢力バランスが大きく崩れようとしている時に、戦後65年間の延長線上で考えて行動するのは、あまりに危険ではないだろうか。「何時までもあると思うな、米国と安全」である。

 軍事的なインバランスは外交にも直接跳ね返ってくる。中国が強硬な姿勢を続けるのは、もちろん軍事力に絶大な自信があってのことだ。日本の外交を議論するにも、軍事力の分析は決して欠かせない。

 さて、12月1日から10日までの国防の記事を並べてみよう。

日本の事情を良く知るがゆえに国を憂う自衛隊OBの人たち!

1日(水):日本人よ下山する勇気を持て
2日(木):中国四千年は改竄史、真の歴史は日本にあり
3日(金):国民は国に頼るのではなく貢献するものだ

6日(月):中国海軍恐るるに足らず、太平洋進出を阻止せよ
7日(火):明日開戦してもおかしくない、朝鮮有事に備えよ

8日(水):主権・国威を毀傷する政治を憂う
10日(金):民主党政権の一日も早い退陣を求む

 この中で、8日の「主権・国威を毀傷する政治を憂う」を書かれたのは横地光明さん。昭和2(1927)年生まれだから今年83歳になられた。旧陸軍士官学校のご出身だ。

 私の父は昭和3年の1月1日生まれでまもなく83歳。今でも専門の土木工学の本を執筆中で日本のためにまだ何かしたいという気力は衰えていないが、横地さんは父のさらにその1年先輩に当たる。


記事では日中関係の歴史を紐解き、したたかな中国の戦略に対し、日本の政治家がいかに手玉に取られてきたかを明快なタッチで描いている。

日本が誇る次世代哨戒機「P1」、読者から注目集める!

 国の行く末を50年、100年単位で考えている中国の政治家と、目先の政局を何よりも優先してきた政治家の違いが浮き彫りになっている。

 日本の政局優先は、時代が降りるごとに顕著になっており、民主党政権になり、ことここに極まれリという状況がよく分かる。こうした歴史はぜひ知っておきたい。

 さて、国防の記事で最近、特に読まれたのはこの記事だった。

 「中国海軍を震撼させる、日本の秘密兵器」。11月に公開した全記事の中で、読者に最も読まれた。この記事をどれだけの読者が読んだかを示すページビューは、第2位の記事「900兆円を超えた国の借金、それでも日本は大丈夫という話は本当か」の約2倍。ダントツの1位だった。

 記事の中身は海上自衛隊が現在の哨戒機「P3C」の後継機として導入する「P1」について書いたもの。P1は完全な日本独自の哨戒機。日本の技術の粋を集めて開発されている。

7月に最も読まれた魚雷の記事!


 さすが電子技術やセンサー技術で世界最先端の日本である。P3Cの後継機は米国をはじめ様々な国で開発されているが、P1はそのトップグループにいると言っていい。日本の技術力は捨てたものではないどころか世界最先端だ。

 この記事が非常に読まれたことについて、複数の自衛隊幹部OBに伝えたら、「えぇ、そうなんですか」と驚きの声が上がった。元自衛官としては珍しい内容ではないのでそんなに読まれるとは思っていなかったようだ。

 同じようなケースが実は少し前にもあった。

 「正確無比で性能も世界一、魚雷は日本のお家芸」は、魚雷という兵器の歴史と日本の技術力がいかに高いかを書いたものだが、この記事も今年7月に公開した中では、2倍までとは言わないまでも2位を大きく引き離すページビューでトップの記事だった。

兵器とはその国の技術力を如実に表す。読者の皆さんの関心が高いのも、日本を愛しているからこそだろう。

国を守る兵器は世界一でなければ意味がない!

 そして、この世界は世界で1番であることが何より大切であり、民主党が大好きな事業仕分けとは一線を画す。兵器の巧拙は兵隊の命を大きく左右する。それはノモハン事件や日露戦争の旅順攻略戦を引き合いに出すまでもないだろう。

 こうした日本の高い技術力が、いま、崩壊の危機にある。防衛予算の縮減は真っ先にこうした技術を持った中小企業との取引中止に現れるからだ。それはこの記事に詳しい「自力で兵器をつくれない国になる日本」。

 政権交代後、失敗を重ねてきた民主党だが、最大の大失敗は事業仕分けで「1番でなければなぜダメなんですか」という考え方だろう。ただの失言として笑い飛ばすのは簡単だ。

 しかし、いくら何でも主婦の節約感覚で日本の未来や国防を考えてもらっては困る。コンピューターやITの世界は国防に直結するのだ。仕分け人の人選も含めて民主党の危機意識のなさが明らかになった瞬間だった。

 「何時までもあると思うな安全と米国」。もし、米国という傘をなくしたとしたら、日本はどのような状況にあるのかを想像してみたことが与党の政治家にはあるのだろうか。社民党と組んで普天間基地の問題はどう解決するつもりなのか。

米国で巻き起こる日本の憲法改正論!

 そんな日本の事情を踏まえてなのか、米国では日本の憲法改正を論議する機会が増えているという。この記事「日本は憲法改正せよが米国議会で多数派に」は米国で、日本が自分のことは自分で守れる憲法を作るべきだという声が高まっていることを伝えている。

 ジョージ・W・ブッシュ前大統領がアフガニスタンに侵攻して以来、第2のベトナム戦争とも呼べる状況に追い込まれた米国は、自らの圧倒的なパワーで世界を抑えることはできなくなってしまった。

 その間、中国は軍事費の2ケタ増を続け、今や米国に次ぐ世界第2位。そのうえA2/AD(Anti-Access/Area Denial=米軍の行動を一定期間拒否できる接近阻止・領域拒否能力)を高め、日本海や黄海、そして西太平洋から米軍の支配を追い出す戦略を描いてきた。

 軍事的には欧州が安定している中で、米軍にとって最も脅威が増しているのが中国である。米国のバラク・オバマ大統領は、就任直後にG2なる考え方を打ち出し、米国と中国で世界を安定化させる構想を描いた。

しかし、韓国における哨戒艦撃沈事件、尖閣諸島事件などを経て、また経済的には世界第2位の経済大国になろうとしているにもかかわらず自国のエゴを押し通す姿勢に協調を期待できないと判断、それまでの対中戦略をほぼ180度転換した(中国はガラパゴスで、日本がイースター島)。

弱り目に祟り目のウィキリークス!

 その際、相対的に力の落ちた米軍にとって西太平洋の安全を守るには日本の協力が不可欠なのだ。これは普天間問題で完全に冷え切った日米関係を再構築するために絶好の機会である。このチャンスをどう生かすかが、政策担当者の手腕というものだろう。

 米国にとって新たな“敵”も登場した。ウィキリークスである。米国の外交公電が次々と明らかになっている。

 民主主義国家にとって、権力者にとっては忌々しい存在でもジャーナリズムは大切だ。権力に対するチェック機能が働かなければ民主主義は絵に描いた餅に終わってしまう。中国との差はまさにここに象徴されると言っていい。

 ブッシュの戦争によってジャーナリズムが十分に機能しにくくなった中で、登場したのがウィキリークスだった。もし、米国のジャーナリズムがしっかりしていたら、ウィキリークスが登場する必然性はなかったかもしれない。

 ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサンジ氏は米国の堕落したジャーナリズムに代わる存在として自らを位置づけている。ITという強力な武器で武装しているだけに米政府にとっては腹立たしい存在だろう。

しかしウィキリークスは中国の実態も白日の下にさらす!

 秘密を次々と暴露される米国にとっては弱り目に祟り目で、中国など情報統制を続けている国に利することになると言えるだろう。

 もし、この地球が民主主義対非民主主義の対立が今後も大々的に続いていくとすれば、その意味ではウィキリークスは民主主義国家の内なる敵と呼べるかもしれない。

 しかし、実際にはウィキリークスは中国にとっても迷惑な存在だろう。そのことを示す記事を宮家邦彦さんが2回続けて書いている。

「ウィキリークスが暴露した中国の真実」
「米大使館が報告した中国株式会社の実態」

中国が目指す理想の国家であるシンガポールの建国の父、リー・クアンユー顧問相が明らかにした中国の実態は説得力があった。

既得権の綱引きに終始し改革が進まない中国の実態!

 また、2回目の中国共産党の中枢部にいる人間による中国の自己分析も極めて面白い。宮家さんは次のように紹介している。

●最高レベルに「江沢民・上海派」と「胡錦濤・温家宝派」の確執はあるが、いずれのグループも優勢ではなく、主要意思決定にはコンセンサスが必要である。

●共産党は様々な利益集団の集合体であり、そこには改革派はいない。彼らは競って中国経済のパイを奪い合うため、中国の政治システムは硬直化している。

●意思決定の原動力が既得権を巡る争いであるために、必要な改革は一向に進まない。

●李鵬元首相の電力利権、周永康常務委員の石油利権、故陳雲元第1副首相一族の銀行利権、賈慶林常務委員の北京不動産利権、胡錦濤女婿のIT利権、温家宝妻の宝石利権などは特に有名である。

●彼らと結んだ地方・企業の幹部は利権ネットワークを形成し、短期間で元が取れる高度成長を志向するため、意思決定過程では常に経済改革、情報の透明性に反対する声が優勢となる。

 日本の政治家や外交官にとっても非常に重要な情報と言えるのではないだろうか。恐らく、ウィキリークスは中国の民主化を促すための民主主義国家にとっての「武器」にもなると思われる。

毎日新聞 2010年12月10日 東京朝刊

 農林水産省は9日、中国の国有企業「中国農業発展集団」との間で、日本から中国への農産物輸出の拡大などを柱とした覚書を交わした。訪中している筒井信隆副農相は同日、記者団に、中国へのコメ輸出を早期に年20万トンに拡大したい考えを示した。

 覚書は、同集団が「コメを含む日本からの農産物、食品の輸入拡大に積極的に努める」と明記。また、同集団が中国の食品安全基準を作成する際、農水省が支援、協力することも盛り込んだ。

 農水省が中国へのコメ輸出拡大を図るのは、貿易自由化論議で守勢が目立つ農政の「反転攻勢」を印象づけることが狙いだ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加などで農産物関税が相互に撤廃されれば「品質や安全性の高い国産農産物にとって、むしろ輸出拡大の好機」との見方は農業界の一部にもある。

 しかし、農水省の統計によると、国産米の価格は中国産の4~5倍で、中国市場にどこまで浸透するかは未知数。急速な経済成長で富裕層の需要が増えているとはいえ、09年に中国へ輸出されたコメは30トンに過ぎない。ピークの08年も輸出された90トンのうち3分の1程度が売れ残ったとの報道がある。

 鹿野道彦農相は「攻撃型農政」を打ち出し、09年で4454億円の農産物輸出額を17年に1兆円水準とする目標を掲げている。そのためにも、国内農業の体質強化に取り組み、足元を固める必要がありそうだ。
【行友弥】


*農産物輸出は日本農業再生の切札となるか?

山下 一仁 RIETI上席研究員

農産物輸出促進の動き!

国産農産物輸出促進の旗がさかんに振られている。昨年5月、鳥取県知事の音頭により輸出促進都道府県協議会が発足した。ジェトロも、昨年7月「日本食品等海外市場開拓委員会」を設立し、東アジア市場を中心に、市場調査、国際見本市への参加等を行っている。農林水産省は輸出支援の予算を今年度、4700万円から8億400万円に増額し、外国の貿易制度の調査、海外市場開拓ミッションの派遣、日本米の輸出可能性調査、販売促進活動への支援等を行う。

東アジア地域の経済発展による食品需要の拡大、農産物輸出成功事例の出現等も背景にあるが、この輸出促進の動きは、行政主導による上からの取組みである。ウルグァイ・ラウンド交渉の最中だった1989年頃にもこのような動きがあった。今回もWTOドーハ・ラウンド交渉で、更なる農業保護の削減が議論されており、また、ほとんどの産品について関税撤廃を要求される自由貿易協定の締結交渉でも、農業界は譲歩を迫られている。前回と同様、暗く沈みがちな農業界に対し、輸出という明るい話題を提供しようという狙いが感じられる。

WTO農業協定により、日本にはダンピング輸出ができる輸出補助金の交付は禁止されており、政府は海外市場調査等により、民間事業者の輸出を側面からアシストすることしかできない。したがって、輸出できるかどうかは国産農産物自体に、海外市場で売れる実力が本来備わっているかどうかにかかっている。
なぜ輸出を促進するのか

その疑問に答える前に、関係者には冷や水をかけるようだが、国等が支援する公的な理由が、明らかにされる必要があろう。

貿易の利益は輸入・消費の利益であって輸出・生産の利益ではない。国際経済学者P・クルーグマンから引用すると「輸出ではなく輸入が貿易の目的であることを教えるべきである。国が貿易によって得るのは、求めるものを輸入する能力である。輸出はそれ自体が目的ではない。輸出の必要は国にとって負担である。」(『良い経済学、悪い経済学』日本経済新聞社147頁参照)とある。輸出促進は輸出しようとする産業にとっては利益であるが、国全体としては必ずしもそうではない。民間の輸出を国が支援することに対しては、食料安全保障、多面的機能等の理由により国内の農業を輸出という方法を採ってまでも振興する必要性についての説明が必要だろう。

輸出は促進できるのか!

輸出が行われる場合には2つのものがある。

まず、同じ産品について輸出国がより安いコストで生産できる場合である。伝統的な国際経済学の理論によると「ある国は、その国に相対的に豊富に存在する生産要素を多用して生産される(集約的に用いる)財に比較優位を持ち、そうでない財に比較劣位を持つ。」―すなわち、各国における生産要素存在量の比率の違いが、比較優位の要因とされる。2003年のわが国の農産物輸入額は4兆4000億円、輸出はわずか2000億円となっており、世界最大の農産物純輸入国である。その大きな要因は、農業にとって重要な生産要素である土地の存在量が、労働力や資本など、他の生産要素の存在量に比べて相対的に少ないためである。わが国は土地利用・集約型産業である農業には比較優位をもちにくいのである。

しかしこの理論は、農産物と工業製品という産業間貿易の発生理由についてはうまく説明できるが、日本がトヨタを輸出しつつベンツを輸入するという、産業内貿易の場合を説明できない。このため考えられたのが、消費者は同じ商品をたくさん消費することだけではなく多くの種類の商品(トヨタとベンツは異なる)を消費することをも好むことに、貿易の原因を求める理論である。この理論によればわが国農産物でも高品質化等により製品の差別化(例えばすし用の日本米とピラフ用のタイ米は異なる)に成功すれば、輸出の可能性はないとはいえない。また、嗜好の差も貿易の原因となる。あるリンゴ生産者がイギリスに、日本では評価の高い大玉を輸出しても評価されず、苦し紛れに日本ではジュース用にしか安く取引されない小玉を送ったところ、やればできるではないかといわれたという話がある。

しかし、食品の場合、製品の差別化は主として味の差別化であるが、野菜、小麦、大豆、牛乳、卵等では味に差は出にくい。それが可能なものは果物、和牛肉、一部の米等に限られてしまう。市場調査により、イギリスのリンゴのような事例を発掘できたとしても、あくまで例外的なものだろう。

また、日本の米については、中国、台湾でもおいしいという評価があるが、いくら品質がよくても価格(コスト)差をカバーするには限度がある。国際経済学の新しい理論でも、製品差別化による産業内貿易には、コストや1人当たり国民所得の差が著しくない場合が想定されている。いかにベンツの評価が高くても、1台1000万円を要求すれば、日本の消費者は500万円の国産車を買うだろう。新潟魚沼産のコシヒカリがいくら美味といっても、1キロ100万円の値がつけば、日本国内でも買う人はいない。米を輸出しているのは、米生産コストや所得が日本と近く、価格差がそれほどかけ離れていない台湾であり、大幅な価格差がある中国などには輸出できない。台湾市場でもアメリカ産と輸入価格に10倍の差があるため台湾の米輸入にしめる日本のシェアは量で0.2%、金額で1.5%にすぎず、7割のシェアを持つアメリカに太刀打ちできない。本気で輸出しようとすれば、本格的な農業改革を行い米、果物、肉用牛等土地利用型農業の規模を拡大しコスト、価格を大きく下げる必要がある。それを行わない行政主導型輸出振興は、以前と同じあだ花に終わる可能性が高い。経済産業研究所のシンポジウム『21世紀の農政改革-WTO・FTA交渉を生き抜く農業戦略』でケン・アッシュOECD農業局次長は「国内市場で輸入品と競争できないものは海外市場でも競争できない、国内市場を守りながら輸出市場を開拓することは不可能である」と述べた。日本プロ野球の最下位球団が、メジャー・リーグに行っても勝てるはずがない。

また、海外市場を重要な市場と捉える意識改革も必要である。生産を完全にコントロールできる工業と違い、農産物には天候等により豊凶変動があるという特殊性がある。リンゴの輸出が伸びている台湾についても、国内で売った余りがあれば大玉を輸出し、なくなれば見た目も悪い中玉を輸出するという例がある。

このようなハードルをクリアーすれば輸出も有望である。しかし、土地という生産要素が少なく、農産物貿易については、基本的には伝統的な国際経済理論が妥当すると思われるわが国において、現在でも国内農業生産額の4%を占めるに過ぎない輸出が農業の再生を図れるほど切り札になるとは考えられない。むしろ農業も自由貿易協定(経済連携協定)に積極的に対応し、外国人労働者の受け入れにより、農業生産コストを下げていくほうが得ではないかと考えられる。特に自由貿易協定で、関税引下げ・撤廃等が迫られている豚肉、鶏肉等土地利用型ではない農業については、労働コストの低減が、競争力向上の唯一の対応ではないだろうか。

2004年11月号『産業新潮』に掲載

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