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平成22年 第12回「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」(松江市)有機栽培・JAS認定部門で特別優秀賞を受賞。(食味90・味度83・計173点) 平成25年、第15回魚沼と第16回北京開催運動中! 無農薬魚沼産コシヒカリ生産農家・理想の稲作技術『CO2削減農法』 http://www.uonumakoshihikari.com/
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①動画 Karuizawa TV

http://www.karuizawa-tv.com/blog/2011/01/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%82%8A%E3%82%93-vol1.html


②動画 Project Human (前篇・中編・後編)

http://project-human.jp/project-human/interview_archive/entori/2010/12/15_guo_lian_zhi_yuankara_qing_jing_zeintanashonarusukuru_she_lihe.html


YouTube 第二回コモンズ社会起業家フォーラム 小林氏

http://www.youtube.com/watch?v=MH9s-1N0ALY


④こばやしりん ホームページ

http://linkobayashi.com/


⑤twitter

http://twitter.com/#!/linkobayashi


⑥軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団ホームページ

http://isak.jp/isak/top/


⑦学校・教育法人一般財団法人 軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団

http://www.bazaarjapan.com/search/det/000000001.html

パンフレット
http://www.bazaarjapan.com/uploads/files/897d90452cb3f7a7bc7bfa6c52e90622.pdf

定款


⑧C-Suite Talk Live 第36回 ~対談エッセンス~

第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん (1/4)

http://www.mercer.co.jp/case-studies/1400135


⑨日経ビジネスオンライン
サマースクールで子供たちに教えられました (第1回 目指すは“気づきの種”がある環境作り)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101102/216912/

学校って、どうやって設立するのでしょう?(第2回 理想の関係は生徒と学校が「相思相愛」)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101102/216928/

恵まれた環境に感謝、そして社会に恩返ししたい。
第3回 メキシコフィリピンで痛感した教育の重要性
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101115/217097/


学校設立は、リーダー選びから始まる。  第4回 もう一人のキーマン、谷家衛の思い《前編)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101206/217413/

自分の得意を活かせる人材を育てたい。 第5回 もう一人のキーマン、谷家衛の思い《後編》
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101206/217416/


米名門高校の校長が「教師を送りたい」と言った。 
第6回 「学校の宝は教師と生徒」という共通の思い
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110121/218063/


 

⑩インターナショナルスクール(ウィキペディア)
 
⑪幕張インターナショナルスクール(2009年4月開校)
 
⑫一条校
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池田信夫×岩瀬大輔×高橋洋一×長谷川幸洋×山崎元「雇用、選挙制度、メディアを変えよう」

2011年02月04日(金) 現代ビジネス

岩瀬: 僕の同世代の官僚は補佐くらいのクラスですが、彼らの中にはこのままではいけないと思っている人が少なからずいます。また40代くらいの政治家では、留学経験もあり、ビジネスをやっていたという感覚の人が、自民にも民主にもいる。政治の素人として見ると、自民、民主の40代くらいの若い人が組めばいいんじゃないかと思うんです。

そもそも政党が票に直結する労組や高齢者を重視するのは、毎年、選挙が多すぎるからではないですか。国政選挙だけでなく、統一地方選とか、首長選とか何かあるたびに「政権の信が問われる」なんて話になるので、選挙対策として票を持っている層に何か手をうたざるをえない。こうした仕組みにも課題があると思うんです。

長谷川: 政界再編についていえば、僕は昨年末にもてはやされた大連立の話は、ある意味いいことだと思ってます。どうしていいかというと、大再編を仕掛けようとしているのはオールド・エスタブリッシュメント、つまり老人たちが中心です。

 この流れがどんどん進めば、自民党の中でも中堅・若手で政策を考えている人たちから冗談じゃないと反乱が起きるでしょう。民主党も同じですよ。大連立の動きが出ると、岩瀬さんがさっきおっしゃった霞が関の若手・中堅からも、こんなバカなことやっていいのかという声が出る。だから大連立の話が進めば自民も民主も両方が壊れる。両党のまともな部分が結合する作用が働く。だから、大連立は逆説的にいいことだと思うんです。

高橋: 今は政治家がサラリーマンなんですよ。自民党民主党という大企業に務めているサラリーマン。下の方はわりとまともなんだけど、上がごちゃごちゃしている。こういう時は合併して、上下で分けるとすっきりする。

池田: 僕も長谷川さんと同じ意見です。大連立がけしからんとは思わない。いっぺん、どーんとやったらいい。500人の政党が成り立つわけがない。絶対割れる。自民、民主両方にいいのと悪いのが混在してるんだから、それを分ければいい。年寄り党と若者党にでも割れた方がはっきりする。

長谷川: 大連立を進めている人はだいたい増税派でしょ。そして増税派の人は、岡田克也さんもそうだけど、増税やるときは総選挙すると言っている。これはいいことだと思う。「私たちは大連立で増税です」と言って解散総選挙をやったら、政界にガラガラポンが起きますよ。

高橋: 今やると、民主、自民以外のところ、たとえばみんなの党みたいなところが票を取るんでしょうね。でも、大政党を、なんかの形でぶっ壊さないと難しいよね。

長谷川: ぶち壊すメカニズムでもうひとつ指摘しておきたい。

 地方の反乱です。名古屋、阿久根、大阪とか、みんな根っこは同じことなんですよ。普通の住民たちが感じているフラストレーション、公的なものに対するフラストレーション、これがエネルギーとなって、いまの体制を壊したいという衝動が背景にはある。

 もうひとつは、ネットによる反乱です。小沢一郎さんがニコニコ動画に出たし、公安情報の流出、尖閣ビデオ、Wikileaks。これは全部同じ話です。既存の出来上がったメディアを個人の反乱で壊していく。こういう動きが大きい。

 それから付け加えれば官僚の反乱ですよ。高橋さんはそのはしりだけど(笑)。

高橋: 霞が関を脱出しないで、中で改革をやろうというのは大変なんです。上にかた~い岩盤があるんだから。同じ労力だったら、外に出ちゃえばできる。さっき政策立案がビジネスになってると言ったけど、これが有名になってきて、若い官僚たちに辞めてもなんとかなるんじゃないかっていう感じが広がると面白いよ。

1億3000万人をひとつの政府でまとめるのは無理がある!

岩瀬: 地方では千葉市をはじめ若い首長がたくさん生まれてますよね。これは永田町にイライラしている人の受け皿になっているんじゃないですか。

 我々の世代からすると、投票先がないというのがある。自民党民主党、どっちに入れればいいかわからない。都知事選も、誰に入れれば自分たちの意思が反映されるのか。受け皿がない感じがあります。

池田: 名古屋市長の河村たかしさんなんかがやっていること自体はかなり支離滅裂だけど、それに期待する地方のフラストレーションっていうのはすごく感じます。橋下徹さんにしても、ああいう突出した変な人があれだけ拍手喝さいを浴びるというのは、いかに国民が霞が関に頭に来ているのかってことだと思う。

 1億3000万人をひとつの政府が統治するっていうのはものすごくしんどくなっている。アメリカなんかは3億人いて、一応は連邦政府にある程度権限はあるけど、地方分権が進んでいます。日本みたいに完全に霞が関が1億3000万人を統治するっていうのは、もう限界が来ている。高橋さんの例えで言えば、大企業病です。規模が大きすぎて身動きが取れなくなってるんですよ。

長谷川: よく校舎の話を引き合いに出すんです。例えば小学校の校舎を建築するときに、北海道でも沖縄でも南向きに作らなきゃいけないってなってる。でも沖縄で南向きに校舎作ったら、暑くてしょうがない(笑)。社会福祉法人なんかの施設も、廊下の幅は1.2mか、それ以上なきゃいけないとか、この手のことはいっぱいある。霞が関が細かい規制を全部やっていくっていうのは、非合理的ですよ。

山崎: 本来は地方分権、改革も民主党の売りだったはずですよね。

池田: 地方分権とか道州制って民主党も言ってるけど、進んでないでしょう。僕もNHKにいた時にそういうテーマの番組を作ったけど、20年経っても何も進まない。袋小路ですよ。それより橋下さんが言ってるような関西独立運動とかね、地方の側から攻撃しないと変わらない。

長谷川: 愛知県も、県と名古屋市が合同でやるといってるんでしょ。実際は法改正しなきゃできないけど、普通の人から見たらわかりやすいですね。ああ、大村さんと河村さんで一緒になってやるんだなって。

池田: 関西の人から見たらね、文化の中心は関西なんだから、なんで霞が関にごちゃごちゃ言われなきゃいかんのだと思ってるわけでしょう。そのパワーでもって、独立宣言でもした方が面白いですよ。

鎖国党と開国党に分かれてもらえばいい!

長谷川: 大連立とか増税とかいろいろ言ったけど、来年必ず出てくるのはTPPですよ。TPPをきっかけに、ものすごく意見の対立が明確になり、かつ先鋭化する。これはいいことだなと楽しみにしている。

池田: 鎖国党と開国党に分かれてもらうのが一番いい。

岩瀬: 分かれますかね。

高橋: 政策論的にはTPP参加を実現するのはあまり難しくない。TPPに入ったほうがメリットがあるわけだから、そこで生まれたお金をデメリットのある側にあげるだけの話ですよ、最後はね。開国してメリットが出なければやっちゃけないけど、これはメリットがありますからね。最後の最後まで反対する人はいるだろうけど、カネをつぎ込むと納得しますよ。2~3兆円で終わる。

長谷川: そこの2~3兆円を配るという結論に至るまでの政治的なプロセスで、賛成反対がわっと出れば、この人は開国派、鎖国派ってよくわかるでしょ。これがとてもいい。

高橋: マスコミはTPP参加をずっと難しい問題のようにいっているけれど、答えは簡単です。生産者から猛烈にいろいろな陳情があるけれど、どれをどうやるか政治的な力量は問われる。そこでダメ政治家といい政治家とわかるかもしれない。

岩瀬: 地方の話で、都知事選で石原さんが出るとか蓮舫さんとか東国原さんとか出ると言われますが、一有権者として、この国の流れをどこに持って行きたいか、誰に入れれば伝わるか、考えてしまいます。東京の経済規模を考えれば日本の推進力になるわけですから。

高橋: 東京は交付金もらってないし、まったく独立国みたいな感じです。そうすると、外に出ていってパワーのある人が都民には一番いいですね。

岩瀬: さらに言うと、日本はどういう社会を目指すべきなのでしょうか。高齢化して格差が広がったという人もいますが。

池田: 格差は広がってると思いますよ。世代間格差はめちゃくちゃ広がってる。

岩瀬: 世代間もありますし、最小不幸社会という人もいれば、ある程度競争させて、再分配でセーフティネットを設けるという考えもありますが、どういう社会をこれからの日本は目指すべきなのでしょうか。

高橋: そういう問題は人それぞれでね。好みでしょう。多くの人をまとめるのは不可能だから、こういうときに分権の制度がある。こういっちゃなんだけど、老人国とか格差州とかつくればいいんですよ。それぞれの州が政策で差別化する。生き方や価値観はみんな違うから、似たような人をまとめた方がいいですよ。

岩瀬: アメリカの州でいえば、保守的な州もリベラルな州もある。

高橋: 税金が高くて安全な市とかね。

池田: ひとりあたりGDPのランキングをみると、1位がルクセンブルクで2番がノルウェーとかフィンランド、シンガポールアメリカをのぞけば、みんな人口数百万の国が並ぶんですよね。つまり、最近の傾向だと思うんだけど、小国の方が小回りがきいて、経済成長をやりやすいんじゃないか。そこから考えると、日本も1億3000万人は過大規模なんじゃないか。

長谷川: ひとつ注意しなければいけないのはルクセンブルクは出稼ぎ労働者がいて、シンガポールも似たような状況があるから、みかけ上、それ以外の国民ひとりあたりのGDPは高くなるんですよ。普通の大国だとアメリカが一人当たり4万ドルくらいです。だから小国をモデルが必ずしもいいということではない。

高橋: 小国モデルだと、どこかの域内に入ってるとか、ちょっとフリーライトがあるんですよね。それを日本でやろうとしたら実は道州制なんです。私と長谷川さんは道州制で本を書きましたけど、だいたい1000万人くらいの規模のほうが、いろんな制度がやりやすい。基礎的な自治体は50万人くらいかな。50万人くらいだといろいろなことがやりやすい。だからいろんな社会保障をくっつけた州は1000万人で競ってやったらいいんじゃないの。

選択の余地はない!

長谷川: さっきの岩瀬さんの、日本をどういう国にしたらいいかということに話を戻すけど、僕は恐らく、選択の余地はもうないと思う。

 もし日本を成長させたいなら、どうすべきか、企業経営をしている人はすぐわかります。彼らは日本というバウンダリでものごとを考えてないですよ。楽天ソフトバンク日産だってそうです。全部グローバルに考えている。否応なく国際社会で競争していくのだから、良い人材、良いリソースをどうやって集めて成長するか、このモデルしかないんです。

 日本は手厚いスウエーデンモデルを目指せみたいなことを言う人がいるけれど、そういう選択はほとんどない。グローバルな水準で考えて良い人材と生産性を上げる手法に収斂しつつあるんです。

岩瀬: どんどん競争させて、ある程度優勝劣敗して、稼いだお金を再分配せざるをえないということですよね。

 

池田: 今年の秋に『エコノミスト』誌が日本特集やったでしょ。大きな日の丸を子供が背負っているという印象的な表紙でした。

 これからの日本は労働人口がどんどん減っていく。これは選択の余地がないんですよね。放っておいたらゼロ成長がマイナス成長にならざるをえないんです。なんとか底上げしていかない。

 今あるリソースをいかに有効に使うかってことを相当シビアに考えていかないとどんどんおかしくなるなかりですよ。

長谷川: ずばりいえば生産性をどう上げるかということです。

池田: いいか悪いかじゃなくて、それやらないと大変なんです。財政赤字が900兆円も積み上がってるんだから。成長しなくてもいいとおっしゃる方もいるし、成長率と幸福は関係ないという話もあるけれど、じゃあ成長しなかったら900兆円の赤字はどうなるのか。選択の余地はないでしょう。

岩瀬: 一方、社会が高齢化するなかで、お年寄りの方がたくさん選挙に行っていて、そうした改革を望まない方が政治的影響力を発揮しているのが現実です。そうじゃない声も代弁する仕組みにしないと。

 さらにいえばWebでグルメランキングをみんなの投票だけでやると、数だけでみれば一位はマクドナルドと餃子の王将になってしまう、ともいわれます。今の選挙制度でいえば、選挙区による一票の格差もあるし、年代別の投票率も考えると若い人は仕事が忙しく選挙に行かないなど不公平な面も多い。とするならば政治家が自分たちを当選させてくれた有権者より先を見て動かなければ政策が実現しないのかと思います。

 しかし、今の制度のままでは、毎年選挙があって、それに勝たなきゃいけないから、「市場主義だと格差が拡大して酷い」と小泉・竹中路線が批判されたようになってしまう。やはり、選挙制度を含めた仕組みが問題なのかと思います。

正社員を解雇しやすくする改革が必要!

山崎: 日本の仕組みが問題であるということがわかっているなら、岩瀬さんみたいな若い人はどんどん外に出るべきです。日本にこだわるべきではない。日本を良くしようなどと考えない、そのほうが個人としては合理的だという選択肢もあります。

 ただ日本を良くするための手立てはいくつかあります。まずは正社員を解雇しやすくすること。とにかく正社員が解雇できないことによって若い人が就職できないわけですよ。企業も必要な労働力を雇うことができない。将来もずっと雇用すると思うから、慎重になる。ここは出口を緩和しないと。

 株で言うと、セカンダリー・マーケットのない株を買うような形で人を採用しなければいけないわけですよ。だから、セカンダリー・マーケットをきちんとつくらなければいけない。

 でも民主党の政権は正社員の労働組合に雇われてるような政権なわけだから、当面、そういうことは起こらない。

 それに税制も法人税を5%下げるなんて話じゃなくて、法人税をゼロにしたらいい。あとは個人課税と消費税で課税すればいい。財務省にいた高橋さん、どうですか?

高橋: 私も法人税と個人課税は二重課税だあと思いますよ。個人所得への課税だけで、法人税ゼロでもいい。法人税なんてあるから複雑になる。

山崎: 複雑になって、税務署が権限を持って、税務署のOBが飯を食えることが大事なんでしょ。

高橋: 今回の減税でも控除が多いでしょ。控除が多いと税務署の権限がすごく多くなるんですよ。ああいうのだったら、控除なんかなくして全体に配った方が楽なんだよね。でもそういうことは役人はしない。

 でも最近は若い人がわかってきたんじゃないの。私の回りにも若くて政治に出たいという人が増えてきた。腹が立ってきたんでしょ。松田公太さんだって、お金は十分得たので、政治に来たわけでしょ。岩瀬さんも出ちゃえばいんだよ(笑)。そういうエネルギーがないと難しい。

山崎: 若い人が出てこないですよね。

高橋: でもね、ちょっとずつ変化がある感じがある。昔だったら官僚やってから政治家に行ってという話だけど、スキップする奴が多くなってる。現実的には選挙にはなかなか通らないんだけどね。

労働の質が落ちるのが心配!

池田: 労働問題については民主党政権がダメだっていうのは間違いないけど、自民党も同じなんですよ。

 僕は先週、石破茂さんにインタビューしたんです。その時も、今の労働市場の問題を、自民党は公約にちょっと書いてるんですよね。公約に解雇規制について緩和の方向って。それで民主党はやらないけど、どうするんですか、自民党がやるというなら争点になるんですけどねと聞いたら、何も答えない。

高橋: やりたくないんだ。私は小泉政権の後に労働法制をやらなきゃいけないと思った。でも自民、民主、両方から猛烈にやられちゃった。

池田: 両方かあ。

高橋: 自民もダメ、民主もダメだって。

池田: 自民党も同じなんですよ。結局、中高年の正社員ってみんなおびえてるわけだから。

高橋: 政権党だったら既得権を重視することになっちゃう。既得権が強烈で、労働なんて一番きついのが大学。大学の新卒者の所にしわ寄せが行っちゃうんだ。

岩瀬: 改善する見込みがないですね。

山崎: 中高年の正社員というのは15年か20年くらいずれると少数派になるのかな。次の人が既得権層になるのか。

池田: それより怖いのは、この10年くらいでものすごく正社員が減って、非正規が増えてますから、要するに高齢ワーキングプアていうのが、もう40歳くらいに来てるんですね。いわゆる氷河期世代が、非正規のまま、賃金フラットなまま40歳くらいまで来ている。そういう人が労働人口の3分の1くらいになると、日本の労働の質は相当、落ちるんじゃないか。

グリーやモバゲーがメディアを変えるのか!

高橋: 私は景気対策派だけど、受給ギャップがずっと大きいまま放置しているのが現状でしょ。恒常的に需給ギャップがある状況できているから。真面目に計算すると、失業率は10%近くになっちゃう。

山崎: 受給ギャップを埋めるためには、とりあえず財政赤字を作らなきゃいけない。金融政策がワークするためには財政的な手段が必要ですね。

高橋: 財政も金融もね、しょせん政府の中の話でしょ。昔なんか中央銀行がなかったんだから、はっきりいって無政府ですよ。

山崎: 連結会社ですからね。

高橋: 連結どころじゃない、完全な子会社ですよ。だからそのレベルの話だから、財政か金融かなんて、学者は好きだけどね、どっちでもいい。区別なんてないんだから、政府がここまでは財政政策でここから金融政策なんてない。どっちでもいいけど、需給ギャップがあって非常にきつい、これをなんとかしなきゃ。きついという状況が10年以上続いているんだから。

山崎: 需給ギャップは何で埋めますか。例えば減税で埋めますか。それとも。

高橋: アメリカ的に金融政策でまずやる。金融政策をやって、ダメだったら財政も必要ですよ。

岩瀬: 最近テレビを付けてみると、一番宣伝をうってるのはGREEなんですよ。広告ランキングを見ると、自動車メーカーと入れ替わって、GREEとかモバゲーとったところです。経営者はみんな僕らの世代ですよ。昔だったら、そういう人たちがスポンサーとして影響力を行使してたわけじゃないですか。彼ら若い起業家たちがメディアへの影響力を持つことで、世の中変わるかもしれません。

山崎: パチンコ屋みたいなもんでしょう(笑)。

岩瀬: 若い世代の人がテレビに影響力を持つかもしれないことは大きいのではないですか。マスコミが変わることによって、伝わるメッセージとかトーンとか世論が変わってくる。

長谷川: マスコミっていう世界は新聞、テレビ、雑誌とあって、エスタブリッシュメントになってるわけね。そこに現代ビジネスもそうだし、ニコニコ動画みたいなものができて、さらに自分で何でもできるYoutubeみたいなのもできた。だからマスコミが変わるというより、メディアそのものが変わってきている。そのことは大きいですね。

以降 vol.4 へ。(近日公開予定)

ドラッカーで読み解く農業イノベーション(8)

2011.01.07(Fri)JBプレス 有坪民雄

イノベーションの第6の機会──「認識の変化をとらえる」

 「コップに『半分入っている』と『半分空である』とは、量的に同じである。だが、意味は全く違う。取るべき行動も違う。世の中の認識が『半分入っている』から、『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」

(『イノベーションと企業家精神』ピーター・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社)

食塩より安全な農薬はいっぱいある!

農薬は、一般の消費者にとってネガティブな印象を持たれる農業資材です。初期の、まだ原始的な時代の農薬には危険性の高いものがあったのと、いわゆる反農薬運動によってこのイメージは作られたと言っていいでしょう。

 しかし、有機化学の産物である農薬は、有機化学の発展に応じて進歩を繰り返してきました。現在、売られている農薬の安全性はかなりのものです。急性毒性(摂取したらすぐ死ぬタイプの毒性)を挙げてみましょう。急性毒性の強さを表す指標に「LD50」(Lethal Dose 50:半数致死量)というものがあります。

 例えば「急性毒性、経口摂取(口から摂取)のLD50が3000ミリグラム/キログラム」とは、体重1キロにつき3グラム。すなわち、体重50キロの人が150グラムを一度に口から摂取すると2人に1人が死亡するという意味となります。数値が大きいほど安全性は高くなります。

 現在、日本で売られている農薬のLD50を調べると3000ミリグラム/キログラムなどまだ危険な方で、5000とか12000ミリグラム/キログラムなんて農薬もよく見つかります。

 読者の皆さんにとって一番なじみがあって、LD50=3000ミリグラム/キログラムの毒性を持つ物質とは何でしょうか。それは食塩です。農薬の安全性は、それほどに向上しているのです。

なぜ遺伝子組み換え作物は嫌われたのか!

 農薬と同じく、ネガティブなイメージを持たれているものに遺伝子組み換え作物(GM)があります。

 日本、そして欧州で遺伝子組み換え作物が大々的に喧伝されたのは2001年。紹介されたのは、除草剤耐性を持つ大豆や、害虫耐性を持つトウモロコシでした。開発したのは、米国のバイオ化学メーカー、モンサントです。これが日本と欧州の社会で猛烈な反発を受けました。

あまり知られていませんが、今のところ遺伝子組み換え作物は、通常の品種改良では考えられないほど厳しい安全基準を満たさないと市場に出せません。この厳しさに比べたら、日本で売られている健康食品の安全基準など、杜撰(ずさん)と言い切ってもいいくらいの厳しさです。

 除草在耐性を持つ大豆は、除草剤を植物体内で分解し、無害化します。害虫耐性を持つトウモロコシの害虫を殺す毒素は、鱗翅目の昆虫(蝶や蛾)以外には事実上無害で、産出する毒素はそのあたりの土壌に普通に含まれている天然物質と同じ物質です。

 それにもかかわらず、日本と欧州では大規模な遺伝子組み換え作物の導入反対運動がおき、世論の反発を恐れ、今なお遺伝子組み換え作物の本格的導入はなされていません。

 これに対し、米国ではそうした反対運動は盛り上がりに欠けました。なぜでしょうか?

 識者が指摘するのは、最初に紹介された遺伝子組み換え作物が、消費者ニーズに沿うものであったということです。

マーケティングによってイメージは変わる!

 米国で最初に喧伝された遺伝子組み換え作物は、完熟トマトでした。米国におけるトマトの大産地は南端のフロリダ。大市場であるシカゴやニューヨークは北端にあります。

 フロリダから米国の北端までは、地図上の直線距離で1000キロほど。トマトをトラックに積んで持って行くのは1日では無理です。その上トマトが完熟していると、長時間の運搬に耐えられず形が崩れてしいます。

 そのため、フロリダでトマトは熟する前に収穫され、シカゴやニューヨークに運ばれました。当然、完熟したトマトと比べて食味が落ちます。

 そこに完熟してから収穫しても形が崩れないことを売りにした遺伝子組み換えトマトが開発されたので、消費者は大歓迎したのです。

 要は消費者にとって未知の作物である遺伝子組み換え作物が市場に登場した時に、「おいしい作物」として紹介されたのか、それとも「農薬入り」であるかのような紹介をされたのか。スタート時に植え付けられた遺伝子組み換え作物のイメージが、米国と日欧の評価の差を作ってしまったということです。

 消費者のメリットを明確にすることでネガティブイメージから逃れられる典型例は、医薬品にも見られます。

糖尿病の治療薬であるヒトインスリン(インシュリン)製剤は、以前は動物のすい臓から抽出されていましたが、現在は遺伝子組み換え技術によって作られたものに変わってきています。この製剤に関して遺伝子組み換え食品反対論者が批判している例を、筆者は寡聞にして知りません。

 発展途上国向けに作られている遺伝子組み換え作物も同様に、非難されることはないようです。途上国向けの遺伝子組み換え作物はビタミンAの欠乏を補ったり、灌漑によって塩分過多になって作物栽培が困難になったところでも栽培できる塩分耐性や、干ばつに強い乾燥耐性を持つなど、地域の事情に応じた作物開発が行われています。

 これまでの作物改良ではできなかった農業のボトルネックを解消するわけですから、遺伝子組み換え作物の導入は歓迎されます。

「美容と健康」「アンチエイジング」をキーワードに!

 日本で遺伝子組み換え作物が受け入れられるとすれば、「美容と健康」あるいは「アンチエイジング」をキーワードとする作物になると思われます。

 日本では、健康食品に高い値段が付けられ、かつ売れています。その中にはコラーゲン、コエンザイムQ10、ヒアルロン酸など、効果があるのか疑問が多く(あくまでも経口摂取の場合です)、LD50も明らかにされていない成分を含むものも少なくありません。

 効果に疑問のある健康食品に対する批判は、ちょっとネットを検索すればいくらでも出てきます。ところが、健康食品を購入する人には伝わらないようです。

 そうした状況を鑑(かんが)みれば、経口摂取で美と健康、アンチエイジングに効果のある物質を生成する遺伝子組み換え作物を作ることは、マーケティング以上の社会的意義があるでしょう。

 社会の認識の変化を仕掛けるマーケティングは、農業のみならず、消費者保護の視点からも実施されなければならないのではないでしょうか?

 そんなマーケティングが成功し、日本での遺伝子組み換え作物の認識が変わった時、イノベーションが起こる可能性は無限大です。農家は、食料や花を作るだけでなく、薬品や化粧品の素材を作ったり、石油代替エネルギーを生産したり、これまでの農業の枠を超えた活動ができることになるでしょう。

ドラッカーで読み解く農業イノベーション(最終回)

2011.02.04(Fri)JBプレス 有坪民雄

「イノベーションを行う人たちは小説の主人公のようではない。リスクを求めて飛び出すよりも時間をかけてキャッシュフローを調べる」
(『イノベーションと企業家精神』ピーター・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社)

農業を論ずる人たちの周囲に農家はいるのか!

近年、日本農業を取り上げるメディアの報道や、日本農業を論ずる人たち、特にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関する議論を見ていて気になることがあります。TPPに賛成、反対を問わず、農家と議論した経験がないのではないかと思える主張が目立つように思えるのです。

 30年以上前は、そうではありませんでした。大規模化して大量生産すれば農業問題は解決するかのような単純な論調もありましたが、そうした主張を肯定しつつも、農業に携わる人たちに対する同情的な視線を感じる論も少なくありませんでした。

 例えば、大規模化したいが、周囲の兼業農家は兼業といえども熱心なので、土地を貸してくれない。だから規模拡大は難しい・・・、そんな現実を踏まえた主張も多かったのです。

 そうした論調がいつから減ってきたのか。個人的には、大前研一氏が20年ほど前に「練馬で大根を作る必要があるのか?」と言った頃からではないかと推定していますが、自信はありません。

 ただ、大前氏の論理が通用するようになった背景は想像がつきます。論者の周囲に農家がいなくなったのです。

 30年以上前なら、メディア業界にも多くの農村出身者がいました。実家が農家だったり、農家出身者の友人が何人もいたはずです。なぜか? 高度経済成長を支える人材は、主に農村から集められていたからです。メディア業界だけでなく、日本の産業会全体が農業を知る者であふれていたと言ってもいいでしょう。

 一方、現在、産業界の人材供給は、主にサラリーマン家庭が担っています。メディア業界でも、農家出身者はごく少数なのではないでしょうか。

 また、農家は基本的に理系の職業なので、文系の経済学や経営学といった分野をベースとした議論が苦手です。そのため、論壇に上がってくることがほとんどありません。

 メディア業界や論壇で、農家出身者や農家を友人に持つ人が大幅に減ってしまった。そのため、農家の実情にそぐわず、農家の主張を無視した論が幅を利かせるようになったのではないか? 私は、そんな仮説を立ててしまいます。

理屈は正しいけれども使えない戦略!

 最近、しきりに言われる「農業の6次産業化」などはその典型に思えます。

6次産業化とは、東京大学名誉教授の今村奈良臣氏が提唱した、農業が「1次産業+2次産業+3次産業=6次産業」になるべきだとするキャッチフレーズです。

 農家が農産物生産だけをやるのではなく、農産物を使った加工食品を生産し、自前で流通させることで、食品メーカーや流通業が得ていた利益を奪取してしまおうという提言がなされています。

 この主張は、戦略としては非の打ち所がありません。しかし、農家から見るとそれほど説得力があるわけではありません。「理屈は分かった。でも、やる時間はあるのか。成果は上げられるのか」といった疑問に対する答えがないからです。

 また、農家の中には、6次産業化という言葉を知る、知らないにかかわらず、彼らなりに努力をしているところが少なくありません。農協にコメを出すだけでなく、インターネット通販に挑戦したり、ご近所の主婦が集まって漬物やパンなど加工食品を作っている例など、探せばいくらでも出てきます。

 ただ、地域の話題としてメディアに取り上げられても、間違いなく成功したと言えるものはそれほど多くありません。

 その理由は簡単です。2次産業や3次産業に本格的に出ていくには、経営資源が不足しているのです。

 中でも欠けているのは、人材と時間です。日中に農作業をして、夜に食品加工をすることはできるかもしれません。しかし、商品を売りに営業に行けるでしょうか? 配送まで手が回るでしょうか?

週末起業でも大変なのに本業を増やせるのか?

 一世を風靡した「週末起業」を考えてみてください。

 2003年、経営コンサルタントの藤井孝一氏のベストセラーによって「週末起業」が話題になりました。賃下げやリストラの不安に脅えるサラリーマンに向けて、会社を辞めずに副業を始めることを提案する、ユニークな主張でした。

 しかし、週末起業は、実際にやるとなると大変です。藤井氏自身は「簡単でもありませんが、不可能でもありません」と言っています。逆に言うと、相当な覚悟がないと続けられないのです。副業とはいえ、労働時間が年間数百時間増えるわけですから、少なくとも休日はなくなるか、平日の睡眠時間を削らなければならなくなるのは確実です。

藤井氏が勧めるのは、「好きなこと」「できること」「得意なこと」「チャレンジしたいこと」「事情があって仕事にできなかったこと」をビジネスにすることです。確かにそんなビジネスでないと、会社勤めをやりながら副業を継続していくのは難しいでしょう。

多角化は余裕があってできること!

 83年、経済誌の「日経ビジネス」は「企業の寿命30年説」を唱え、社会に衝撃を与えました。翌年、日経ビジネスはこの主張をもとにした書籍『会社の寿命─盛者必衰の理』を発行し、ベストセラーとなります。

 「企業の寿命は30年。このサイクルから逃れるためには多角化しかない。本業が儲かっているうちに、未来の本業となる新しい収益源を作るべきである」とする日経ビジネスの主張は、当時のビジネスマンたちをぞっとさせる、強烈な説得力を持っていました。

 第2次オイルショックを潜り抜け、自信をつけてきた日本の経営者は、この主張通りに多角化に邁進します。

 ただし、それができたのは、バブル経済真っ盛りで、経営余力が十分にあったからでした。それに対して、今は余力がありません。それゆえ「選択と集中」と呼ばれる戦略がもてはやされているのです。

 話を戻します。週末起業ですら、実際にやるのは大変です。しかも、こんな時代に、農家に「本業として」多角化を提案することが正しいのかどうかは、議論の余地があるところです。

それでも農家は死なない!

 ドラッカーは、イノベーションを成功させる条件として以下の3つを挙げます。

(1)イノベーションは集中でなければならない。
(2)イノベーションは強みを基盤としなければならない。しかも相性も重要である。
(3)イノベーションは経済や社会を変えるものでなければならない。

多くの農家にとって、集中できるだけの時間や人材がないのが現状です。しかも、食品加工や小売りなどに強みがあるわけではない。むしろ、弱みを目立たなくするために行われていることの方が多いのです。農業が6次産業化して経済や社会を変える可能性は、ないとは言いませんが、現実的なこととは思えません。

 今、日本農業は離農者が増加する一方の変革過程にあります。TPPが導入されようが導入されまいが、この流れは止まらないでしょう。

 しかし、それでも日本農業は生き残ると私は考えています。信じていただけないかもしれませんが、意外と農家は柔軟なのです。

 高度成長期、「第2種兼業農家」(農業所得が「従」である農家のこと)が急増したのはなぜでしょうか? 農業だけやっていては食えないという経済状況があったからです。ところが、彼らは離農することなく、農業機械の出現を機会と見て、勤めに出ながら農業を続けるというビジネスモデルを作り出しました。

 そうした農家の適応戦略が現在のコメ問題を作りだした元凶ではあるのですが、何百万とある農家が数年で事業を再構築したのは紛れもない事実です。

 これからは、農家の適応戦略は兼業農家化よりもはるかに多様性に富んだものとなるでしょう。6次産業化した農家はすでに存在していますし、これからもそれなりに出てくるでしょう。その意味で、少々批判的な書き方はしましたが、6次産業化の論理も私は否定しませんし、6次産業化を目指したい方から助言を求められれば、期待に沿えるよう努力します。

 ただ、選択肢は必ずしも6次産業化だけではない。他にもあるのです。そして、機会はいつ来るのか分かりません。

 そんなことを考えなから、私はキャッシュフローに脅えながら農業を続けています。

 最後に、最近私が耽読している中世イタリアの思想家、マキァヴェリの言葉を引用して、「ドラッカーで読み解く農業イノベーション」を終わりたいと思います。

 <人間は運命のまにまに身をまかせていくことはできても、これにはさからえない。また運命の糸を織りなしていくことはできても、これを引きちぎることはできないのだ。

 けれども、なにも諦めることはない。なぜなら運命が何をたくらんでいるのかわからないし、どこをどう通りぬけてきて、どこに顔を出すのか見当もつきかねる以上、いつどんな幸福がどんなところから飛び込んでくるのかという希望をもちつづけて、どんな運命にみまわれても、またどんな苦境に追い込まれても投げやりになってはならないのである。>

(永井三明訳『マキァヴェッリ全集第2巻 ディスコルシ』筑摩書房)

⇒ 「ドラッカーで読み解く農業イノベーション」のバックナンバー
(1)農業は遅れていない、レベルが高すぎるのだ
(2)「ヤミ米」で農政を突き動かした男
(3)なぜ長野のレタス農家は圧倒的に強いのか
(4)「兼業農家」と戦って勝てるわけがない
(5)専業農家を救う「コメよりもっと儲かる」作物とは
(6)「ブランド米」産地、次の日本一はどこ?
(7)「『非常識』なアウトソーシングで生産性を上げよう」
(8)「農薬は食塩よりも安全である?」
(9)「農業の『資金調達』の壁が破られる日」

政権幹部の金正日への忠誠心はなおも変わらず!

2011.02.04(Fri)JBプレス 古森義久

 今、全世界でも最も閉鎖的な国といえば、北朝鮮の名をまず挙げる向きが多いだろう。

 確かに北朝鮮の内部での出来事は、外部にはまず分からない。カルト風の独裁支配体制が国家の機能に秘密のベールを厚くかぶせているのだ。

 だが、日本にとって、その秘密の国、北朝鮮の動向は極めて重要である。日本は、北朝鮮に関する情報をあらゆる方面から収集するよう努めなければならない。

 その意味で、米国の首都ワシントンに拠点を置く有力研究機関「ピーターソン国際経済研究所」が1月31日に公表した北朝鮮内部の政治・経済情勢についての調査報告の内容は、注視すべきだろう。

 その報告の結論を総括すれば、北朝鮮は従来の中央集権の計画経済では民間末端から自然発生するブラックマーケット(闇市)的な市場の広がりを抑えられず、その拡大によって政権存続の根幹を揺さぶられている、というのである。

90年代半ばから北朝鮮に違法の市場が誕生!

 米民主党系の民間有力研究機関「ピーターソン国際経済研究所」は1月31日、北朝鮮内部の政治経済情勢についての調査報告を発表した。

 報告の作成にあたったのは、同研究所の副所長でアジア経済専門家のマーカス・ノーランド氏と、北朝鮮経済に詳しいステファン・ハガード研究員である。2人が共同でまとめた「変化の証人=北朝鮮の難民の考察」と題する報告を研究書の形で発表した。

 2005年と2009年に韓国と中国で行った、北朝鮮難民それぞれ数百人を対象とした聞き取り調査を主体とした内容である。

 同報告は、北朝鮮指導部が経済改革を抑える方針を強めながらも市民末端での市場経済志向が激しく、その動きが政権のイデオロギー面を極めて不安定にしていると指摘した。

 北朝鮮では建国以来、ソ連型共産主義をさらに過激にした思想に基づき、資本主義経済は否定され、中央が統制する計画経済が実行されてきた。

だが、計画経済は効率が悪く、一般国民の食料や日常品までが不足した結果、1990年代半ば頃から、違法の市場(マーケット)が生まれるようになった。

 この市場は、地元住民の共同社会、あるいは住民たちの職場から、党組織、軍組織の一部までを主体として登場した。最初は原始的な物々交換から始まり、少しずつ貨幣を使っての普通のマーケットへと発展していった。

 「自主」の共産主義を掲げる政権側からすれば、この市場は違法である。とはいえ、公式の計画経済では住民が飢えてしまうとなれば、違法でもこの種の市場を黙認せざるを得なかったわけだ。

 だが、この種の自由市場経済的なマーケットがあまり広がると、「労働党の一党独裁」の教理がいろいろな面で侵されることとなる。このため2005年頃から、労働党政権はこの闇市経済を厳しく取り締まり、抑圧するようになった。「逆改革」と呼ばれる政策である。

市場の拡大が政権の内部崩壊を招く?

 こうした流れを踏まえて、ピーターソン国際経済研究所の報告は、現状について以下の趣旨を述べていた。

北朝鮮政府が2005年頃から市場を弾圧するようになったのは、主として、人民軍幹部が市場経済に反対していることに加え、非効率な国営企業の経営が市場経済の発展によってさらに悪化するという懸念があったためである。

・だが、市場を弾圧しても北朝鮮経済全体は好転せず、かえって食料や日常必需品の供給が悪化して、闇市はまた広がりをみせるようになった

・2009年11月に、北朝鮮政府は市場経済の広がりを抑えるために、旧通貨を新通貨と100対1の比率で交換する通貨大改革(デノミネーション)を断行したが、意図した効果は得られず、かえって国民の間の混乱や不満を強めた。

・政府は市場を「違法」と断じ、「市場経済の犯罪化の拡大」と見なしているが、その一方で、許容することを続けている。そのため、行政、司法、軍部などのあらゆるレベルで腐敗を招き、一般住民の当局に対する反発と嫌悪は激しくなる一方である。

・市場の拡大は、政権の共産主義的中央集権のイデオロギーの空洞化や矛盾を明白にし、一般国民の政権不信を強めることになる。その結果、国家体制の内部破裂の危険性が増す。

金正日総書記の健康悪化と後継問題が、北朝鮮の政治を不安定にした。首脳部はその経験から、2008年以降は現状維持志向を強くし、経済改革への意欲も大幅に失った。

・市場が広がると、経済活動を通じて住民のつながりが多様かつ多極になる。それは、労働党の独裁体制自体を侵食することにつながる。

 以上、要するに北朝鮮の違法の市場の広がりは、政権の求心力に逆行する動きであり、その動きがまだまだ活発であることが政権の基盤を侵食し、不安定にしている、というのである。

 さらに、政権にとって最悪な場合、この市場の動きが「内部破裂(インプロージョン)」までを起こしかねない可能性を指摘していた。「内部崩壊」と呼んでもよいシナリオである。

失われていない金正日への忠誠心!

 では、北朝鮮ではまもなく、この種の政権崩壊が起きるのだろうか。

 報告はこの点について重要な注釈を付けていた。以下の趣旨の記述である。

・しかし、金正日政権を直接支える労働党員、治安機関要員、人民軍幹部らの政権に対する忠誠心は、長年にわたって政権から優遇されてきたことなどによって、なお、かなり強いと見られる。

 これこそが北朝鮮情勢の読み方の難しさだと言える。

 計画経済の悪化と市場経済の広がりによって、北朝鮮の国家はいつ崩壊してもおかしくない状況である。まさに崖っぷちのぎりぎりまで来ているのだ。

 それでもなお、実際に崩壊の引きがねを引く主役や准主役になると見られる勢力は、最高指導者の金正日への忠誠心を強く保持しているというのである。

 だから、北朝鮮の内部の崩壊も爆発も「起きやすくて、起きにくい」というわけなのだ。

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