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民主党の派閥
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松木謙公【衆議院議員3期、北海道第12区、51歳】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9C%A8%E8%AC%99%E5%85%AC
鈴木克昌【衆議院議員3期、愛知県第14区、66歳】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E5%85%8B%E6%98%8C
奥村展三【衆議院議員3期、滋賀4区、65歳】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%A5%E6%9D%91%E5%B1%95%E4%B8%89
電撃的な首相辞任劇。その衝撃も冷めやらぬ中、民主党議員は「次の首相」を見据え、動き始めた。
2日午後7時すぎ、東京・虎ノ門の中華料理店。民主党幹事長、小沢一郎に近いグループ「一新会」のメンバーが続々と集結した。
「誰が首相になるかわからないが、誰がなっても一致結束してがんばろう!」
一新会会長の鈴木克昌がこう語り、乾杯の音頭を取ると出席者は顔を高揚させた。その後も続々と議員が駆けつけ、40人にふくれあがった。
首相、鳩山由紀夫の退陣表明に伴い、小沢もその力の源泉だった幹事長職を退くことになった。一新会には窮地といえる状況だが、その動きは示し合わせたかのようだった。
退陣表明からわずか4時間後の午後2時、国会近くの事務所に約40人の側近議員が集まり、党代表選への対応を協議。その後、「小沢ガールズ」と呼ばれる若手女性議員ら80人以上が国会内に集まり、「新しい政治、歴史の瞬間を自分たちが作りだしていこう!」と気勢を上げた。
自民党政権下で長く主流派の地位を誇った旧田中派をほうふつさせる光景。小沢が師と仰ぐ元首相、故田中角栄の言葉「政治は数。数は力」を実践するかのように小沢系議員たちは「鉄の結束」を誇示した。
「党代表選を戦った後はノーサイドになって党が一本化するのが一番きれいな姿じゃないですかね…」
小沢の懐刀である筆頭国対副委員長の松木謙公(けんこう)は記者団に力説した。「次の首相もおれたちが決める。決めた後は従ってもらう」という意思がうかがえる。
こうした「無言の圧力」に押されるように、鳩山系グループはいったんセットした会合を中止した。旧民社党系グループは「事態の推移を見守る」と一切の動きを止めた。
そんな中、「先手必勝」とばかりに代表選に名乗りを上げたのは、副総理・財務相の菅直人だった。
都内のホテルで側近と会談した菅は、その足で鳩山を訪ね、「政治とカネの問題にけじめをつけ、しっかりと引き継いでいきたい」と伝えた。だが、20年来の朋友である鳩山はそっけなかった。「頑張ってください。私から誰かを指名する意図はありません」
対抗馬の動きは鈍い。反小沢の急先鋒(せんぽう)である国土交通相、前原誠司は後見役の国家戦略担当相、仙谷由人らと都内で会談したが、記者団には出馬について「現段階では全く白紙」と語っただけ。ダークホースとされる総務相、原口一博は沈黙を守った。
一新会の会合では出席者が「菅」や「原口」の名をささやきあったが、小沢側近の党総務委員長、奥村展三が厳しく戒めた。
「名前を出すな! 出したらあかん。今は動いたらあかんのや!」
「数の力」を知らしめながらも手の内を絶対に明かさない。すると首相候補はおのずと自陣になびいてくる。これが小沢の自民党時代からの常套(じようとう)手段だった。
鳩山は5月31日の小沢と参院議員会長、輿石東との会談で「身を引きたい」と切り出したと説明するが、実際に退陣を決意するまでは激しい攻防があった。
1日の小沢、輿石との2回目の会談を終えた鳩山は続投に向け意欲満々だった。会談後は笑みを浮かべ、左手の親指を立てグッドサインを作ったほど。「これで退陣圧力を跳ね返した」と思ったのだろう。
会談で鳩山は「殺し文句」を用意していた。輿石は、1カ月後の参院選におののく参院民主党の窮状を訴え、激しく退陣を迫ったが、鳩山はこう言った。
「私も身を引きますが、小沢さんも幹事長職を引いていただきたい」
小沢抜きでは参院選を戦えない。鳩山は「これで参院の反乱は鎮圧できる」と踏んだようだ。それまで押し黙っていた小沢は「分かった」と応じたが、輿石は「大変なことになるぞ!」と捨てぜりふを吐いた。
官邸に戻ってからも鳩山は意気揚々としていた。公邸への帰り際には報道陣に「おやすみなさーい」と笑顔で声をかけた。
ところが、鳩山の「グッドサイン」は倒閣勢力の怒りの火に油を注いだ。テレビ放映でこれを知った参院幹部はこう言い放った。
「続投したいんなら神妙な顔をせなあかん! これ(親指)は首相がやることじゃない。『私はこれで首相を辞めました』か?」(敬称略)
幹事長“道連れ”の意趣返し
もはや「鳩山降ろし」の動きは止まらない。そう考えた小沢は首相公邸に帰宅直後の鳩山にひそかに電話をかけたようだ。この直後から鳩山の態度は一変する。腹心の首相補佐官、中山義活を公邸に呼び出すと、こう告げた。
「ありがとう。私は雨天の友を大切にする。これからも一緒にがんばろう」
中山は鳩山の神妙な態度に「辞任するつもりなのか」と思ったが、「これからも腹を据えてがんばってほしい」と励ました。
ダメ押しの一手
鳩山と小沢の電話の内容は定かではないが、小沢は「鳩山の気持ちはまだ揺れている」と感じたようだ。ここから小沢はダメ押しの一手に動く。
党幹事長室職員に2日午前7時半までの出勤を厳命し、自らも8時前に党本部に現れた。小沢は輿石らに電話で本会議の延期を求めると、一枚のファクスを所属議員全員に送付させた。
「本日、緊急両院議員総会を開会することとなりました。鳩山総理・代表より大事なお話があります。万障お繰り合わせのうえ必ず出席くださいますようお願いいたします。 幹事長 小沢一郎」
総会に出席できない議員には委任状を求めた。党規約では「緊急を要する事項については両院議員総会の議決をもって党大会の議決に代えることができる」(第7条2項)とある。総会で退陣表明しなければ、解任動議を出し、代表から引きずり降ろす。ファクスにはそういうメッセージが込められていた。
「今日の両院議員総会で私の思いを申し上げたい。私の思いをそこでしっかりと申し上げますから、ぜひ聞いてください」
万策が尽きた鳩山は2日午前8時42分、出邸前に記者団にこう語り、執務室で外相、岡田克也らに電話で辞意を伝えた。
鳩山が総会会場となった衆院別館5階講堂に到着したのは9時55分。小沢は2分遅れて到着したが、2人は目を合わせなかった。壇上に上がった鳩山は政権交代の意義を朗々と語った上でこう切り出した。
「私もこの職を引かせていただくが、小沢幹事長にも政治資金規正法の議論があったことは周知のことでございます。恐縮ですが、幹事長も職を引いていただきたい。そのことによってよりクリーンな民主党を作り上げることができる」
鳩山は一番の退陣理由を米軍普天間飛行場移設問題ではなく、「政治とカネ」の問題だと訴えた。自らが退陣するならば、小沢も道連れにしなければ気が済まない。鳩山の精いっぱいの「意趣返し」だった。
演説を終えた鳩山は感極まった表情で小沢に歩み寄り、左腕をつかんだ。小沢はぐっと表情を引き締め、先に会場を後にした。
総会後、小沢は国会内の幹事長室に閉じこもった。出てきたのは午後0時20分すぎ。「ヨシッ!」と気合を入れ、記者団の待ち受ける衆院第16控室に現れ、仏頂面でこう語った。
「まあ、任期半ばでこのような事態になったことは大変残念に思います」
話すうちに次第に表情は和らぎ、最後は「もう皆さんと会うのも最後でございます」と笑顔を見せた。
午後3時すぎ、国家公安委員長、中井洽(ひろし)が官邸を訪ねると、鳩山は早くも執務室の私物をかたづけていた。
「奥さんはホッとされているでしょ」。中井が鳩山の妻、幸の様子を尋ねると、鳩山はさばさばした表情でこう言った。
「うーん、理解してもらうのが大変だったね…」
「皆さんに迷惑」
2日午後7時すぎ、鳩山が東京・赤坂の中華料理店へ幸や秘書官を連れ立って夕食に訪れると、行政刷新担当相、枝野幸男ら仕分け作業に携わった若手・中堅約10人と偶然出くわした。鳩山は同席し、思いのたけをぶつけた。
「20年ほど前、政治を浄化しようとの思いで新党さきがけを作ったのに今回は皆さんに迷惑をかけた。母親からもらったという月1,500万円のことは本当に知らないんだ。これからクリーンな民主党を作ろう」
この夕食会の直前、ツイッターにこうつぶやいた。
「本日、総理の職を辞する意思を表明しました。国民の皆さんの声がまっすぐ届く、クリーンな民主党に戻したいためです。これからは総理の立場を離れ、人間としてつぶやきたいと思っています」
華々しい政権交代から8カ月あまり。首相の最後のつぶやきはあまりに寂しかった。(敬称略)
2010年6月3日付 産経新聞東京朝刊
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